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斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第1回 ART-SCHOOL『LOVE/HATE』

30代サブカル声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。毎月20日更新。

photo: Natsumi Kakuto(banner),Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito

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ART-SCHOOL『LOVE/HATE』を持つ斉藤壮馬

初めて彼らの音楽を耳にしたのは中学生のとき。メジャーデビューシングル『DIVA』をYouTubeで聴いて、シンプルな構成に乗る美メロとサビの突き抜け感に衝撃を覚えたものだ。それからあらゆる音源を買い漁り、毎日部屋にこもってはひたすら聴き込んだ。

思い出深い曲は数あれど、アルバム単位だと2ndフルアルバム『LOVE/HATE』が群を抜いている。実家から自転車で30分ほどのレコードショップで見つけ、脇目も振らずに購入し、猛然と帰ったのをよく覚えている。

M1「水の中のナイフ」の性急なリフから始まるアルバムは、ART-SCHOOL作品の中でも群を抜いてダークで乾き、愛に焦がれている。M3「モザイク」の投げやりなシニシズム、M4「BUTTERFLY KISS」の壊れそうなピュアネス、M6「アパシーズ・ラスト・ナイト」の射精後の空虚さ……

書いているだけで、ひとりきりの薄暗い部屋で、ヘッドフォンもせず爆音で聴いていたあの日々が蘇ってくる。

アルバムの中でもっともコピーしたエヴァーグリーンな名曲、M10「SKIRT」から、感情が爆発するM11「UNDER MY SKIN」、メロウにたゆたうM12「プールサイド」、すべてが許されるようなM13「しとやかな獣」の流れは圧巻で、何度救われたかわからない。

世界への愛憎が入り交じり、不安定で苦しんでいた心に、「ひとりじゃないよ」ではなく「ひとりでもいいよ」と言ってもらえた気がしたのだ。このアルバムはきっとこれからも繰り返し聴いていくだろうし、そのたびに当時の気持ちを思い出すだろう。

ぼくも曲を書くけれど、先行作品からの引用・オマージュ、歌詞における暗喩の多用、Bメロを作らずヴァースとフックで構成される楽曲など、ソングライティングにおいて、今でも大きな影響を受けている。

彼らの山梨でのライブを観たのは、高校生のときだった。POLYSICS、the courtとのスリーマンで、どのバンドも素晴らしかった。

初めて見たVo.木下理樹さんとGt.戸高賢史さんの脚がめちゃくちゃ細くて、なぜか「自分ももっと痩せたい」と強烈に思った記憶がある。夏の夜で、感動もそこそこに家に帰り、髪を振り乱しながらギターをかき鳴らしたものだ。

思えば、大学に入って出会った親友と仲良くなったきっかけも、現在のレーベルプロデューサーと盛り上がったのも、ART-SCHOOLの話題だった。

人生の節目で大切な音を鳴らしてくれる——ぼくにとって彼らは、そんなバンドである。

次に実家に帰ったら、『LOVE/HATE』を引っ張り出して、久しぶりに爆音で聴こう。それはたぶん、そう遠くない未来のはずだ。

衣装協力(トップ画像)
CLUNNI、LION HEART (共にSian PR TEL:03-6662-5525

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