サッカー選手 → サッカー解説者など
大学院で得た広い視野を携え、一歩踏み込んだ解説と啓蒙活動を
サッカー日本代表として、日韓大会とドイツ大会の2回のW杯に出場。チームの中核として活躍し、プロ選手として14年間研鑽を積んだ福西崇史さん。現在はNHKでのサッカー解説を中心にサッカーを伝える活動に携わっている。そんな彼が早稲田大学の大学院 スポーツ科学研究科へ進んだのは2022年。コロナ禍でキャリアを見つめ直したのがきっかけだ。
「解説者としても新しい人材が出てくる中で、絶えずスキルアップしていかねばと。さらに今後は世の中のサッカーリテラシーを高めることにも貢献したい、自分の視野を広げたいと漠然と考えていました。ちょうど同じ頃に、たまたま早稲田の大学院のことを知って。仕事を続けながらでも通えると聞いて、思い切って挑戦してみました」
実績を買われ、晴れて進んだ修士課程コースは1年制。経営や教育などスポーツを軸にした多様な講義を受けながら、論文制作に取り組んだ。高校卒業後、プロの道へ進んだ福西さんにとって、大学生活は新鮮だった。
「経営者がいたり、ドクターがいたり、ほかの競技の指導者がいたりと様々な経歴を持つ方々と学べたことは刺激的でした」
カリキュラムの要は論文制作。“サッカーリテラシーを高める”を見据え、解説者の立場でいかにサッカーの面白さを伝えるかの深掘りに取り組んだ。
「具体的にテーマとしたのは、得点の起点となるプレーの解説について。中継やニュースではゴール場面にばかり注目が集まりますが、そこに至るまでには、ほかのプレーヤーたちの功績がある。背景をしっかり伝えることで、サッカーの本質的な面白さを啓蒙するための解説とはどうあるべきかを掘り下げました」
過去の試合の得点シーンの映像を見直し、どんな解説がなされていたかを徹底的に洗い出し、考察していった福西さん。過程で教授らの指導を仰ぎつつ論文をまとめ上げた。その経験は、解説の仕事そのものへの向き合い方にも変化をもたらした。
「リプレイの際の映像の出し方やピックアップする箇所について、制作スタッフや実況者と密にやりとりするようになりました。解説の仕事もサッカー同様チームプレー。それを改めて意識しながら向き合っています」
大学院を修了した彼は今、解説の仕事のみならず、新たなプロジェクトにも力を注いでいる。
「様々な出会いに恵まれたことと、そして大学院での学びにより視野が広がったことも原動力になり、2022年から『種子島BIG VISION』を立ち上げました。年に1度、元日本代表選手たちと種子島を訪れ、小中学生に向けたサッカー教室やチャリティ試合などを行う企画です。島の子供たちに未来につながるきっかけを与えられたらいいなと。僕も地方出身なこともあり、地方では都会と比べて子供の頃にプロの試合を見たり、選手と交流したりする機会があまりないことに問題意識を持っていました。こうした取り組みは今後も続けていきたいです」
積極的に学び、挑戦する福西さんの前には今、様々なキャリアの可能性が広がっている。
「監督を目指すのも一つだし、チームのマネジメントにも興味がある。もちろん引き続き解説や啓蒙活動に携わるのもいい。サッカー界を盛り上げられるよう今後も学び続けたいです」