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編集部が体当たり取材!「令和に“ポチ”という名前の犬は実在するのか?」

2017年に発売したBRUTUSのムック「やっぱり犬だって。」に掲載の「“ポチ”という名前の犬は実在するのか?」を調査する名(迷?)企画が満を持してカムバック。前回は叶わなかった悲願のポチ発見を成し遂げ、雪辱を果たせるのだろうか?

photo: Kaori Oouchi / text: Ayuka Sugawara

流行は繰り返す。例えば服飾に関する「トレンド20年周期説」は広く知られるところである。確かに近年Y2Kファッションとして2000年頃流行したローライズデニムや厚底ブーツを身に着けた若者を目にする機会も少なくない。ならば犬の名前にだって同じ事象は起こり得るのでは?

トレンドが巡りに巡った結果、令和のナウなヤングの間で飼い犬に「ポチ」と命名するのが最もヒップでクールと見なされているかもしれない。6年前には出会えなかったポチに、今だからこそ出会えるのではないか。

そんな希望を胸に、取材班はポチ探しリベンジに挑んだ(ただし「犬の名前ランキング 2023」ベスト10にポチの「ポ」の字もないことには見て見ぬふりをして)。

ポチとの出会いを求め、最初に向かったのは都内のとある公園。閑静な住宅街に位置しながら都心からのアクセスも良い人気スポットだ。折しもポチ探しを敢行したのは最高気温20℃のうららかな春の土曜日。人出ならぬ「犬出」にも期待が募る。

日差しに目を細めつつあたりを見回せば、そこかしこに犬連れの人々の姿が。犬種も大小、和洋、短毛長毛と多様なら、飼い主勢もカップル、親子連れ、犬好き仲間の集い、ビール片手に愛犬とのデートを楽しむお父さん……と幅広い。早速「あの〜、ポチって名前の犬を探してるんですけど」とやや頓狂な聞き込みをスタート。皆さん快く応じてくれるものの、なかなかポチには出会えない。「ここにはよく来るけど、ポチって名前の子は知らないな」と口を揃える飼い主さんたち。

一抹の不安を覚えながらも2頭、3頭……と取材を続けるうち、保護犬率の高さに驚かされる。犬を家族にする際の「保護犬を迎える」という選択肢が、6年前と比べ広く根づいているのを実感した。保護犬に限らず、出会う犬たちに「素敵な家族と会えてよかったね」と語りかける。

どの犬も幸せそうな顔に見えた。「ところで、ポチって名前のお友達はいない?」と続けてみる。悲しいかな、これにはどの犬も知らん顔である。そんな我々を哀れみ「よし、今日からこいつの名前をポチにしよう!」と高らかに宣言してくれる飼い主さんまで。

「ポチ、もしかしたら外国の方が飼ってる犬なら、いるかも?」。ふとカメラさんがつぶやく。なるほど犬の名前の流行が国によって異なる可能性もある。そこで数頭の犬を連れて英語で談笑中のグループを直撃。なんと「この公園でポチって名前の犬に会ったことあるよ」とのこと。朗報!

令和にもポチは確かに実在するようだ。ちなみに噂のポチの飼い主さんはイギリスの方らしい。しかし残念ながらポチが出没するのは平日限定なのだそう。「犬出」を見込み土曜日にやってきたのが仇となったか、と肩を落とす取材班。

ポチとのお目通りが叶わないなら、せめて誌面に画変わりが欲しい……。そんな半ば諦めの境地で、「どうオチをつけようか」と相談しながら我々は今度は川沿いの街へ。ファミリーで賑わう商業施設から併設の公園へと向かう道中、トイ・プードル連れのご夫妻に「ポチを探してるんですけど……」と声をかける。まさかこのゆるふわ系の愛くるしいルックスで「ポチ」はないだろう。内心そう思っていると、運命の瞬間はふいに訪れる。「この子、ポチですよ」とご夫妻。なんてこった。

「令和のポチ」は幻でも都市伝説でもなかった!トレンドリバイバル説の真偽はさておき、6年越しでポチに出会えた興奮のあまり、今ならツチノコ捕獲もネッシー激写も叶う気がする、と盛り上がる取材班であった。

阿部憲一、ポチ
ポチ♂9歳/阿部憲一さんのティーカップ・プードル。体重は4kgで、犬種の平均より大きめ。命名は息子さんで、理由は「……なんでだっけ?」とのことだが、きっと天の導きだろう。性格は寂しがりやで、梨が大好物。

犬の名前ランキング 2023

1位:むぎ(1)
2位:ココ(2)
3位:モカ(4)
4位:レオ(7)
5位:ラテ(圏外)
6位:マロン(3)
7位:きなこ(10)
8位:こむぎ(5)
9位:ベル(圏外)
10位:ノア(圏外)

()内は昨年順位。
出典:ペット&ファミリー損保「2023年 犬の名前ランキング」

今回の取材時にも「むぎ」や「こむぎ」には複数遭遇!ちなみに2016年のランキングベスト3は上から「ココ」「チョコ」「モカ」で、食べ物飲み物系ネームの根強い人気が窺える。ところで2023年の猫の名前ランキングの1位もなんと「むぎ」。目に入れても痛くない愛犬や愛猫は、口にも入れちゃいたいほど愛しい、といったところだろうか。