音をレコードに刻む部屋
レコードカルチャーの普及を掲げて毎年開催される、アナログレコードの祭典「レコードの日」。今年は11月3日に、過去最大数となる161作がアナログ化され、新アンバサダーに就任したリーダーズの『マ人間』『一時帰国 DELUXE』『AG! Calling』のレコードがリリースされた。そんな「レコードの日」開催を記念して、リーダーズの4人が1959年創業のレコードプレスメーカー〈東洋化成〉の自社工場へとやってきた。
レコードに興味津々の彼女たちが最初に見学したのは、レコードのカッティングルーム。ここでは、アーティストが制作した音源をレコードのフォーマットへと落とし込む作業が行われる。
新しい学校のリーダーズ MIZYU
すごく静かな部屋。そして、見たことのない機材が並んでいる!
〈東洋化成〉西谷俊介
ここはアーティストから届いた音源をレコードに刻む部屋です。まず受け取った音源をレコードに適した音に調整して、その後レコードの原盤となる“ラッカー盤”に針で音を刻みます。
新しい学校のリーダーズ KANON
レコードをこんなに間近で見るのは初めてかも。まずはここから始まるんですね。
新しい学校のリーダーズ SUZUKA
でも、どうやって針で音を刻むんですか?
西谷
ダイヤモンドやサファイアで作られた硬い針先に音源となる信号を流して、針が信号にシンクロして振動するようにし、その反動で溝を刻むんです。構造としては糸電話に近いかもしれません。コップを使って話すと、音が振動になり糸を伝って相手に届きますが、その糸の波動が盤に刻まれるイメージです。
SUZUKA
ちなみに、一日でどれくらいカッティングできるものなんですか?
西谷
だいたい一日でカッティングできるのはアルバム3、4枚ですね。デジタルのように倍速にすると音が正しく刻めないので、すべて等倍でカッティングしています。
MIZYU
1曲ずつ丁寧に再生しながら溝を刻むんですね、すごい!私たちの曲もこうやってレコードに刻まれるんだ。本当に嬉しいです。
RIN
(ラッカー盤を覗き込み)溝を見てみると、波形がさまざまですね。
西谷
高音だとすごく細かい振幅で、ノコギリのようにギザギザした溝になります。一方で、ベースのような低音だと、緩やかなカーブが描かれます。
KANON
音の高低によって、溝の形が変わるんですね!不思議だなあ。
プレスしてレコードになるまで
続いてはレコードをプレスするエリアへ。静かなカッティングルームとは対照的に、ゴウンゴウンと豪快な機械音が鳴り響く。リーダーズは、先ほどの部屋で制作されたラッカー盤をもとにレコードがプレスされる様子を間近で観察。担当の舩場一平さん解説のもと、プレスから盤が完成するまでの工程を見学した。
〈東洋化成〉舩場一平
プレスされるレコードは、塩化ビニールという素材からできています。この塩化ビニールを丸めた団子状の固まりを機械にセットして、蒸気で熱しながら100トン以上の力で平たくプレス。その後、ラッカー盤と同じ溝を刻むのが一連の流れです。
RIN
へえ!丸いお団子みたいな物質、これがレコードの素材となる塩化ビニールなんですね。平たく伸ばされる様子を見ていると、ドーナツ作りを思い出します。7インチ盤が“ドーナツ盤”と言われるのも、なんだかしっくりくるなあ。
舩場
ちなみにプレスした直後は、塩化ビニールがギュッと潰れていびつな円盤になりますが、その後マシン内蔵のカッターで余分な部分をカットして、綺麗な丸いレコードができあがります。
KANON
なるほど!マシンの周りに落ちている黒い破片はレコードのかけらなんですね。
SUZUKA
そういえば、マシンの近くでカラフルなお団子を見かけたのですが、あれはなんですか?
舩場
カラー盤になる塩化ビニールです。レコードといえば黒い盤を思い浮かべるかもしれませんが、ピンクやオレンジなどいろんな色の塩化ビニールもあるんです。
MIZYU
カラフルなレコードがたくさんあるんですね。私たちが「レコードの日」にリリースするアルバム『マ人間』も紫のカラー盤。実物を手にするのが楽しみです!
いつかは4人でDJイベントを
レコードとの心の距離が少し縮まったリーダーズは、最後にDJに挑戦。ステージでのDJ経験があるRINを中心に、お気に入りの一枚を探してアナログならではの音を楽しんだ。
SUZUKA
改めてレコード工場見学、すごく楽しかったね。音が形になって耳に届くまで、この目で確かめられて大感動でした。私たちの音も、一枚一枚こうしてレコードになるんだと思うと感慨深いです。それに、工場で働いている方の姿を見ていて、レコードにはいろんな人の音楽愛とリスペクトが詰まっているんだと実感。レコードに愛着が湧きました。
KANON
そうだね。私はこれまであまりレコードに触れたことがなかったけど、もっといろいろ聴いてみたいなと思いました。それに、カッティングの工程を見せてもらって、SUZUKAの歌声が溝として刻まれて再生されるっていう魔法みたいな工程に驚いた。それがずっと前から受け継がれている技術だというところにも、ワクワクしましたね。
MIZYU
私もそう。針が震えて、レコードに音が刻まれて、それがプレスされて、一枚のレコードになる。人生で初めて見た光景でした。これからレコードを聴くたびに、きっと思い出すでしょうね。
RIN
私はレコードの音が好きで自分でも集めているんですけど、今日改めて思ったのは、大切な音楽をモノとして残せるって素敵だなって。大きなサイズでジャケットを眺めて、温かみのある音に耳を傾ける。デジタル配信とはまた違う形で、音楽の世界観を味わえる手段だと思いました。
SUZUKA
私たちもいつかDJイベントをやりたいね。みんなで好きな曲をレコードでかけたり、踊ったり。
MIZYU
いっそ“裏AG!”と称して、深夜にクラブイベントをするとか。
KANON
いいかも。4人とも好きな音楽のジャンルもバラバラだから、すごいことになりそうだけど(笑)。
SUZUKA
私は山口百恵、RINはNujabes。MIZYUには最近ハマっているらしい〈たま〉をかけてもらって、KANONは……環境音楽とか?
KANON
うん、川のせせらぎ音とか好き。
RIN
すごいバラバラ(笑)。でもそれぞれかけたい音楽を繋げるのもいいし、いずれは2人ずつ分かれてかけるとかね。私たちだったら、2人がB2Bをしている間、残りのメンバーは後ろで踊ってみてもいいかも。
MIZYU
楽しい想像が膨らむばかりです。いつかできるといいな。