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ドキュメンタリー好き・西森路代(ライター)、忘れられないあのシーン。『東京クルド』

ドキュメンタリー好き、フリーライター・西森路代さんが「忘れられない、あのシーン」について語ります。

Illstration: Ryo Ishibashi / Text: Emi Fukushima

日本で暮らすクルド人青年が
生きづらさを吐露するとき

優れたドキュメンタリーとは、個人の生き方を追いながら、その背後にある社会の今をしっかり映しているものだと思います。この作品が焦点を当てるのは、祖国を逃れてきたクルド人青年2人の暮らしと彼らの友情です。

出入国在留管理局の監視の下、難民認定を受ける望みが薄い状況の中、19歳のラマザンは通訳になるための勉強に励み、18歳のオザンは解体現場で働き人生を諦めかけています。

『東京クルド』
©2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.

対照的な2人はある日、近所の川辺で互いの状況を語り合うのですが、できる限り前向きに頑張ってみようよと熱く励ますラマザンの言葉に、塞ぎ込んでいたオザンは救われたように涙ぐみ「チューしたい」とはにかむ。
そこにカメラが入っているという事実はありますが、2人が困難な中で育む確かな友情に胸を打たれました。

でも、やるせない現実を如実に表すのはその後の展開です。この川辺のひとときを経てオザンは新しい挑戦を試みますが、「非正規滞在者」であるということがその道を阻み、最後まで現状を打破することはありません。
オザンが夜の街を車で走るシーンで映像は幕を閉じますが、疾走することしかできない彼の姿から、日本国内の難民問題の根深さを再認識するのでした。

『東京クルド』イメージイラスト