82歳の精神科医・山本昌知が
患者に¥3,000を貸すとき
本先生が大切にしてきたのは、「患者」という立場の人と、人と人の関係性を築き、交じり合いながら共に生きることです。それを象徴するのが、82歳を迎え引退を決めた先生に、ある患者が診察室で手紙を渡す一幕。
受け取った手紙をその場で先生が読み進めると、別れを惜しむ気持ちが綴られている1枚目、2枚目から一転、3枚目には、生活費が足りないから¥4,000貸してほしいと書かれています。
言いにくいことを打ち明けてもらえる関係性も素晴らしいのですが、驚くのは、先生が手紙を読み終えてすぐにポケットから財布を取り出すこと。
自分なら、貸したくても、医師としてはすべきではないかな、などと迷うと思うんですよね。でも山本先生には迷いが一切ありません(笑)。
一方で、押し付けがましく善意を見せるわけでもなく、財布にはまだお札を残したまま「¥1,000足らんで。ええか?」と¥3,000を手渡すんです。
この極めて自然体な行動は、医学的なアプローチではなく、困っている人を、今自分の中でできる範囲で助けようという、ただそれだけのこと。一見シンプルですが、普通は続けられることではないんですよね。同じ精神保健の仕事に携わる身として頭が下がります。