容疑者の義理の妹が
法廷で怒りの陳述をするとき
まず驚くのは、どうしてこんなところまで撮れているのだろう、ということ。裁判の様子はもちろん、弁護士との打ち合わせ、家族の間で交わされる会話、刑務所での面会、些細な電話に至るまで、ありとあらゆるシーンが映像に収められていることが不思議でならないんですよね。
焦点が当たるのは、2001年に作家のマイケル・ピーターソンの自宅の階段で妻が命を落とした出来事について、それが事故死なのか、マイケルによる殺人なのかという一点。一見善良な夫であり父親であった彼を追いかけていくと、ある男性との秘められた関係や過去の事件が明かされていき、話が二転三転していくんです。

フィクションでも出来すぎなほど、どんでん返し続きなのですが、何より強烈なのが、明らかになった事実によって彼の犯行を確信した義理の妹のキャンデスが、長年の闘争を経て法廷でマイケルを罵倒するこのシーン。
彼女からしか放たれ得ない迫力ある言葉の数々に圧倒されるとともに、「映画はピーターソンのプロパガンダです」の言葉は、私たちが観ているこの映像の正当性すら揺るがしてしまうんです。どんな家族にも秘密や確執はありますが、その極北にある地獄を見ましたね。
