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くるり・岸田繁と〈拾得〉オーナーが語る「京都」

くるり・岸田繁さんと〈拾得〉オーナー・寺田国敏さんが語る「京都」。

photo: Junya Oba / text: Ado Ishino

“やらないこと”を先に決める。
京都ってそうだし、音楽もそう(笑)。

岸田繁

初めて〈拾得(じっとく)〉に来たんが高校生の時で、衝撃やったんです。

100年モノの酒蔵で音楽が鳴ってるわけじゃないですか。ぶっ飛ばされましたね。そんとき演ってた〈騒音寺〉と〈THEふくろく〉ってバンドがライブの原体験。

当時の〈拾得〉は、マディ・ウォーターズとかジョニー・ウィンター的なハードなエレキが入ってるブルースバンドが多かったですね。

寺田国敏

音楽はだいたい3年に1回で流行りが変わっていく感じでした。ブルースブームもあったしプログレもニューウェーブもパンクもウェストコーストもフリージャズもあった。

90年代に入って急にグランジになってあんまり変わらなくなっちゃったんだけど。それまでは各ジャンルに京都を代表するような人たちが必ずいて、それぞれがぜんぜん繋がってないんです(笑)。

岸田

やっぱりみんな誰とも会わずに引きこもってるんですかね?

寺田

あるいは極めてしまったのかもしれないですね。おのおのがそれぞれのジャンルの山を作っちゃったのかも。山というか丘というか(笑)。

岸田

同年代で〈10-FEET〉って京都のバンドがいて、今は仲良いですけど、存在すらほとんど知らなかったですからね。テリーさん(寺田さんの愛称)の言う、それぞれの丘があったのかも。

寺田

あと京都は「〇〇をやる」より「〇〇をやらない」みたいなアンチ気質な人が居心地よくいられる場所。
だいたいは、みんながやらんことをやると白い目で見られますよね。でも京都ではそう見られない(笑)。

岸田

それで僕らもだいぶ助かったもんなあ。

寺田

むしろ白い目で見られることも自慢になる風潮がある気がします。

岸田

だからいろいろ勘ぐってしまったりして結局どこにも属せない感じもありましたね。それはそれで鬱陶しいんですけどね(笑)。

寺田

独自性を尊重し合ってるってことなんじゃないですかね。

岸田

多様性とか独自性の視点で言うたら、京都には1200年の間ずっと、ハイソサエティな音楽があったんやと思うんですよね。雅楽とかいわゆる邦楽ですよね。

村祭りの音楽しかなかった地域と違って、京都は宮廷音楽とかやんごとなき人の音楽、公家がやってるちょっと高尚な音楽の歴史も積み重ねてきた。
例えば祇園祭って、鉾にエキゾティックなペルシャ絨毯がついてるような、不思議な要素のあるお祭りやと思うんです。お囃子もちょっとほかでは聴いたことないもんが混じってきたり。

京都にはそういう「文化」の成分が下地としてあった。でも東京に都が移ってから京都は没落した。
その後もう一度発展できたのは京都が電子機械工業の町になったから。オムロン、島津製作所とか村田製作所、任天堂とか京都発の企業が築いてくれた「文明」のおかげで今がある。

僕らがアンチとか言ってても大丈夫な余裕を京都の「文明」が脈々と支えてくれた。だから「文化」が自由にできたんじゃないかと思うんです。

寺田

それは面白い考察だなあ。僕は銀閣寺のあたりに住んでるんですけど、家を出て交差点に立つと、世界のヘソにいるような感覚になるんです。ただの田舎町なのに。
それはたぶん文明が京都の低音として響いている感じがあるからでしょうね。

ミュージシャン・岸田繁、〈拾得〉オーナー・寺田国敏

岸田

東京とはぜんぜん違う、都市を維持する基準みたいなのがいまだに京都にはあって、文化的なもんがそれに守られてるというか、自由にさせてもらえてるというかね。

クラシックの受け皿にしても京都市立芸大みたいなハイレベルな場所がちゃんとある。片やすごくアンダーグラウンドから何かが出てきても、それを楽しめる場所がいまだに新しくできてたりとか。

そうして多様性が守られてるんやと思うんです。僕らも最初〈拾得〉に出させてもらった時とか、ゴミ以外の何物でもなかったけど自由にさせてもらいましたから。

寺田

ローリング・ストーンズだって最初はゴミです(笑)。

岸田

しかもテリーさんはいっぱい音楽知ってるのにあれ聴けこれ聴けみたいなんやなくて、テリーさんなりにバンドの音楽の軸を分析して、面白い対バンの組み合わせとかやってくれるんですよ。そういう京都の音楽マイスターの先駆者というかね。

寺田

ヘビメタばっかり集まるようなコンサートとか嫌いなんですよ。そこに弾き語りとかジャズが入ってきて、テーマパークみたいになるのが好きなんです。

岸田

ううむ、わかりみ(笑)。

寺田

そこに心情的なものとして“今の社会に対してどう対峙しているか”の共通項の串を通すというか。

岸田

僕も今でもそういうことを真ん中に置いてやっていますわ。テリーさんの影響やな(笑)。

寺田

で、いろいろな音楽が集まっていれば、リスク回避できる狙いもあるというか(笑)。

岸田

失敗しても言い逃れできると。「そもそもこれヘビメタのイベントちゃうしな、知らんけど」と。

寺田

ぼちぼち京都から何か生まれてもいい気がするんですよね、コロナ時代の新しい音楽。飛沫の飛ばない発声とか倍音の出し方とか(笑)。
そういえば「知らんけど」って言葉、京都人たちは無意識で使ってたことに最近気づいたみたいですよ。

岸田

ああ、それはずっと気づいてなかったです(笑)。

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