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水ダウ「名探偵津田」も手がけた放送作家・矢野了平が出題!ひらめきクイズ全5問

特別な知識は必要なく、知恵と発想勝負のひらめきクイズ。だからこそ、老若男女に愛されてきた。一線で活躍する名作家が、厳選する5問とともにその手のうちを明かしてくれました!

photo: Jun Nakagawa / text: Ryota Mukai

細かい知識がなくてもその場のひらめきで解けるタイプのクイズは、そのために、いつの時代もゴールデンタイムのテレビ番組を彩ってきた。『全国高等学校クイズ選手権』『脳内エステ IQサプリ』『くりぃむクイズミラクル9』......。これらをはじめ数多くの伝説的な番組でクイズを作り続けてきた、言わばひらめきクイズのプロフェッショナルが、放送作家の矢野了平さんだ。

矢野さん。

「小学生も楽しめるよう、シンプルでわかりやすい問題を作ることを大切にしています。その上で、クイズを通して発見や遊びを感じてもらえたらいいですね」

そう語る矢野さんが、今回はこれまで作ってきた様々なタイプのクイズから厳選した5問を出題。その解説とともに、クイズの作り方を教えてくれた。それでは、第1問!

第1問 漢字パズル①

Q. 次のイラストが示す、漢字2文字の熟語は?


ヒント:イラストは肉を削ぎ落としているケバブ屋の主人。「肉」という漢字を思い浮かべると......

正解は......

A .「大人」

「まず、肉という漢字を書きます。ケバブ屋の主人は肉を削ぐように切り落としていきますよね。だから『肉』という漢字の左右の縦棒を削ぎ落としましょう。すると......

『大人』という2文字が残るんです。

これは下北沢にあるケバブ屋さんの前を通りかかったときに“見つけた”クイズでした。看板に似たようなイラストが描いてあったんです。それを見たときに『あっ!』と。『肉』という漢字に『大人』が隠れていることに気づくのと、このイラストひとつでクイズになることに気づくのは、ほぼ同時だったんです。

実は、これとよく似た問題はあります。『肉の内側にいるのはなんでしょう?』といったクイズですね。でも、このイラストさえあれば、もっとシンプルに成り立つんです。

普段クイズを考えるときは、『肉』の両側がなくなったら『大人』になるなという発見があって、それをどうクイズにするかと料理していきます。でもこれは、その発見と料理を同時にできたという点で印象深かった一問ですね」

第2問 漢字パズル②

続いて、第2問。

Q. □に入る漢字は?

正解は......

A .「水」

「並んでいる漢字には、2つのルールがあります。1つは、すべての漢字に曜日を示す漢字が順番に含まれていること。

『白』→『日』
『青』→『月』
『灰』→『火』
『□』→『?』
『桃』→『木』
『銀』→『金』
『赤』→『土』

よって、□には『水』が含まれる漢字が入ります。

もう一つのルールが、すべての漢字が色を表していること。

よって、答えは『水』に決まります。

作問のヒントになったのは、フランス国旗の赤・白・青。この3つを書いてみた時点で『土』『日』『月』があることがわかったので、これはクイズになると思い、あとは他の曜日を探しました。

以前、『脳内エステIQサプリ』の『合体漢字』というコーナーで、パーツごとにバラバラにされた漢字を合体させて熟語を作るクイズをずっと作っていたんです。4年くらいやったので、そのときに小学生がわかる漢字は大抵バラバラにしたと思います(笑)。

それ以来、漢字を見るとついバラしてしまうことが多いですね(笑)。例えば『消火栓』という漢字を見ても、『栓』に点々があったらいいのになあと思う。

どういうことかというと、『消』の左はさんずい、つまり『水』。右下には『月』がある。『火』はそのまま。『栓』は『木』へんで、右に点々があれば『金』ですよね。つまり月から金まで平日が全部揃うのに......と(笑)。まあ、そんな調子です」

第3問 文字パズル

Q. 次の記号が示すものは?

ヒント:漢字1文字

正解は......

A.「茶」

「『さへほ』をそれぞれカタカナにしてみます。すると......

『茶』という漢字になりますね。

これは実は僕が作ったものではありません。友人のタカマツくんが出題してくれたものです。それも幼稚園児のときに。

タカマツくんはかなりクレバーな幼稚園児で、こういった問題をたくさん出してくれました。例えば『じぶんでころがるくるまをさがせ』。『自』分で『転』がる『車』なので、答えは『自転車』です。こうやって宝探しゲームをしていたことが、今思えばクイズが好きになったきっかけになっていますね」

クイズ本などにもよく載っている、典型問題だそうです。

第4問 早押しクイズ

ここからは、少し趣向を変えた問題。

Q. 冬に飲まれる「くずゆ」という2文字の間に、植物の「根」という字を入れると、同じく冬に重宝する風邪薬の名前になります。何でしょう?

正解は......

A.「葛根湯(かっこんとう)」

「これは『アタック25next』の早押し問題として作りました。知識が必要な雑学クイズなのですが、早押しだからこその醍醐味があります。同じ冬によく飲む『葛湯』と『葛根湯』は漢字はほぼ同じなのに、カナにすると全然違う。そこを面白がりたいと思ったんです。

雑学はひらめきとは違って、事実から作るものですね。だからとにかくネタを見つけることが大事。僕の場合、意識的にやっているのは『朝日小学生新聞』を読むこと。当たり前のことを、すごく詳しく解説してくれるんです。

例えば、『富士山特集』には......せっかくなのでクイズにしましょう。『富士山が信仰の山になった理由はなんでしょう?』。答えは『高山病』です。富士山に登ると意識が朦朧とする現象を、かつては神によるものと考えていたそうです(編集部註・諸説あり)。それが今では高山病だったと明らかになっていると。小学生新聞、とても勉強になります」

第5問 ◯×問題

最後はクイズ番組恒例の◯×問題。矢野さんが考えるとこうなる。

Q. 次の問題に、マルかバツで答えてください。

「道路」という日本語は、明治時代に英語の「ロード(Road)」をもじって作られた。マルかバツか。

「ぐっすり」という日本語は、英語の「Good Sleep」が語源である。マルかバツか。

十三代目 市川團十郎 白猿、かつての十一代目 市川海老蔵の血液型はAB型である。マルかバツか。

白い花を生けた水に日本酒を垂らすと、花はほんのり赤くなる。マルかバツか。

正解は......

A.①→「×」②→「×」③→「◯」④×

「①③は僕が作ったもの、②は定番の豆知識、④はかつて『アメリカ横断ウルトラクイズ』で出題された問題です。まるっきり嘘をつくことができるのが、作問者にとって○×問題の面白いところ。特に④は普通に考えたらあり得ないけれど、極度の緊張感のなかで2択を迫られるとつい疑ってしまいますよね。一方でこうも荒唐無稽な嘘をよく思い付いたなあという、すごい問題です。

僕が作った問題は、いわゆる言葉遊びですね。『道路』と『ロード』は似てるな、とか『海老蔵』が『AB型』だったら面白いなと思って調べてみると、上記のようになりました。

こういう似た言葉を探すことも職業病のようなものですね。『菅田将暉』と『岡田将生』は似てるな、とか。なぞかけのねづっちさんもすごいなあと思います。昔聞いて特にすごいなあと思ったのが、こんななぞかけ。『漫才コンビのナイツとかけて、ガーデニングと解く。その心は......』なんだと思いますか?『演芸(園芸)に、土屋(土や)塙(花は)欠かせません』。できすぎで怖い!」

どんなことでもクイズにしてしまう矢野さん。文字や言葉を面白く捉えて、再構成する達人なのだ。構成作家としてデビューするに至ったエピソードにも、若き矢野さんの才気ほとばしる様が現れていた。

「一番はじめに構成作家として携わったのは『トリビアの泉』だったんですが、もとは作家ではなくリサーチャーとして、トリビアを集めたり、事実関係を調べたりしていたんです。

あるとき、番組内のテロップが決まらず、スタッフの会議が滞っていたことがありました。『トリビア』では、CMに入る前に気の利いたテロップを入れる習慣があったんです。

そのときは『高木ブーはクレー射撃の名手である』というトリビアで、実際に射撃をするVTRの直前にCMが入るので、そこにつなげるテロップを考えていた。たった一言のために、1時間くらい会議が進まないんです(笑)。

そこで、自分が考えていたコピーを、思い切って言ってみた。

『「このあと、ブーがババンババンバンバン」というのはどうでしょう』

それで『お、いいね』となって会議が進んだんです(笑)。そんな経験が数回続いた後で、次からはリサーチャーではなく構成作家として会議に参加してくれ、と言われまして。それ以来、という感じですね」