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140年超の歴史が広報の土台に。心を揺さぶる〈セイコーウオッチ〉のPR術

多くの共感を集めた企業の担当者に聞く、思いを伝える秘訣とは?これまでPRとどのように向き合ってきたのか、〈セイコーウオッチ〉広報・PR室の余合夏実さんに尋ねた。

photo: Wataru Kitao / text: Ryota Mukai

広報の土台は、140年以上にわたり培ってきたもの作りの歴史です

「広報の仕事をするうえで、新商品に関する知識はもちろん、各ブランドの特徴や会社の歴史を頭に入れておくことは欠かせません。とはいえ、〈セイコー〉のルーツは140年ほど前にあるのでアーカイブは膨大ですが……」と切り出した、広報・PR室の余合夏実さん。

その歴史はミュージアムのみならず、社員に口伝で伝わるものも少なくないという。最近のPR事例にも、過去から続く足跡が滲(にじ)んでいた。

「2024年、ドレスウォッチブランド〈クレドール〉の50周年を記念して、代表的なモデルの一つ『ロコモティブ』が限定で復活しました。デザイナーの故ジェラルド・ジェンタ氏が手がけ、1979年に発売されたものです。印象的なケースやブレスレットのデザインを持つこのモデルを機に、〈クレドール〉のスタイルが確立されたと言っても過言ではありません。

それほど〈セイコー〉にとって重要なこのモデルへの想いを伝えたいと、ジェラルド氏の夫人でビジネスパートナーでもあったイヴリン・ジェンタ氏を日本に招待し、インタビューを行いました。海外広報チームとも連携することで世界に広がるPRになりましたね」

「ロコモティブ」限定モデルを手にする女性
〈クレドール〉50周年記念。「ロコモティブ」が限定復活
2024年、ブランド誕生50周年を記念して、「ロコモティブ」限定モデルを発売。オリジナルのデザインを手がけた故ジェラルド・ジェンタを軸に紹介し、即完売となった。

来日決定からインタビューまで約半年かかり、言語の壁をも超えた大仕事だ。広報の対象は商品だけではない。

「ブランドの認知度を高めるためのPRも大切な仕事です。2023年には3世代にわたるデザイナーのインタビューなどを収録したムック本『グランドセイコー完全BOOK』の制作をしたり、24年には約50年ぶりに復活したブランド〈キングセイコー〉を紹介する企画展のPRも行いました」

『駆動せよ!超戦士キングセイコー』と題した展示は、ブランドの魅力をヒーロー漫画仕立てで紹介するというポップな作り。会場はセイコーの企画展スペースとなる東京・原宿〈Seiko Seed〉だ。ここではデザイン部考案の『専用すぎる腕時計展』など、現行商品にとどまらない、会社自体の広報活動も行っている。

『power design project 2025 専用すぎる腕時計展2』会場の様子
デザインの粋が詰まった、専用すぎる腕時計の展示
12分で針が1周する、ゆで卵好き専用の腕時計など、尖った試作品が揃う『power design project 2025 専用すぎる腕時計展2』。2月16日まで〈Seiko Seed〉で開催中。

PRと一口に言っても、本作りに展示会と、その仕事のフィールドはかくも広い。メディア対応もメインの仕事の一つ。付き合いがあるのは雑誌だけでも約120誌。年2回開催される新商品提案会や撮影会の場では、それぞれの媒体に合った新商品を対面で提案している。自社商品のプレスリリースは商戦期に多く発信する。

「ボーナス前の6月や11月に発信することが多いですね。タイトルの言葉選びには特に気を使っています。例えば、昨年は心地よい巻き上げの感触や音があり、手巻き機構の部品の動きが見える作りの〈グランドセイコー〉の新モデルを、“腕時計との対話”と題してリリースにまとめました。

企画、設計、デザイン、組立など、企画・開発と製造に関わる多くの人間がもの作りに込めた想いが、パッと読んで“わかる!”と直感的に伝わる表現になっていたら嬉しいですね」

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