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目的は常に明確に。心を揺さぶる〈大林組〉のPR術

多くの共感を集めた企業の担当者に聞く、思いを伝える秘訣とは?これまでPRとどのように向き合ってきたのか、〈大林組〉コーポレート・コミュニケーション室広報課長の筒井庸介さんに尋ねた。

photo: Wataru Kitao / text: Ryota Mukai

わかりやすい成果が見えにくいからこそ、目的は常に明確に

USJや東京スカイツリー、遡れば太陽の塔や現在の東京駅である東京中央停車場から施工を手がけてきた〈大林組〉。その仕事の数々を見れば、文字通り日本を作ってきた企業の一つ、と言っても過言ではない。

「当社の事業は単品受注生産が主で、取引先は法人や官庁が中心です。そのため広報活動を通して売り上げが伸びるといったわかりやすい成果は見えにくいんです。一方で3Dプリンターやドローン技術など、一般消費者にも関心が持たれるテーマを伝えると、メディアからの反応は速い。とはいえ、建設に関心を持ち、携わってみたいと思う人が増えるといいなと、中長期的な目線を持って取り組んでいますね」と、広報チームをまとめる筒井庸介さん。急ぎ足で結果を求めることはないが、PRの目的は明確だ。

「基本は、企業理念とブランドビジョンにあります。持続可能な社会の実現に貢献するために、空間に新たな価値を創造し、社会の課題解決に取り組むこと、事業に関わるすべての人々を大切にすること。こうした目指す姿につながるかを意識しています」

同社のプレスリリースは大きく2つに分かれる。一つは、各事業での取り組み。近年はカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの紹介が増え、昨年には特設サイトを立ち上げた。省エネ、木造・木質化など、気候変動対策へのプロジェクトを紹介している。そして、もう一つは建設を中心とした新技術や実証事業だ。

「2024年、慶應義塾大学などと共同開発した技術で、トンネル掘削時の発破に関わる作業の遠隔操作に成功しました。専門的に言えば“自動火薬装塡システムによる発破成功”となるのですが、これでは難しいですよね。

プレスリリースをまとめる際に大切にしていることは、背景・概要・展望を織り込むこと。今回なら、発破は山岳トンネル工事における重大災害の要因の一つであること、遠隔で作業員の力触覚を再現する技術を応用したこと、その結果、作業の無人化に一歩近づいたことを紹介しました。

共同開発だったこともあり、今回応用した“リアルハプティクス®”という技術とともにメディアにも取り上げていただきました」

トンネル掘削の新技術。業界全体の安全性向上へ
2024年に長野県内のトンネル工事現場で、自動火薬装塡システムを利用した遠隔操作での発破実験が成功。危険が伴う作業の完全機械化に向けて一歩前進したことをPRした。

専門的な用語や表現を咀嚼(そしゃく)し、紹介の道筋をつけてPRに至るまでには、取材と勉強が欠かせない。

26年春の開業に向けて進行中のプロジェクトに、京都・祇園の国登録有形文化財〈弥栄会館〉をホテルとして蘇らせる「弥栄会館計画(仮称)」がある。この現場スタッフを昨年、取材。建物の骨組みを一部保存しつつ外壁2面を保存し、さらに増改築も行うという工事の難しさと、そのために通常の2倍ほどの時間と労力をかけて作業を進める様子を伝えた。

「技術者には技術者の、現場には現場の、それぞれの強い思いがあります。それをきちんと受け取り、広報することで会社の理念を伝えていく。それが私たちの“いい仕事”なのだと思います」

耐火被覆吹き付けロボットが、これからの現場で活躍
写真の2つの黒い物体がそのロボット。鉄骨の火災損傷を防ぐために行う負担の大きい作業を、人間に代わって担う。改良された2号機が2023年から現場に臨んでいる。

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