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「さぁ、行っといで。」福島県南相馬市が人生の岐路に立つ18歳へ届けた、地域の思い

「さぁ、行っといで。」という印象的なコピーを掲げたポスターが福島県南相馬市に登場して話題になったのは、2023年2月のこと。18歳の若者たちへ向けた、地域の思いを形にしたものだった。

text: Takuro Watanabe

「進学、就職と、新しい生活へ旅立つ新18歳のみなさんに対して、お祝い金という経済的な支援だけでなく、“応援してるよ”という気持ちを形にしたい。そんな思いから、企画が動きだしました」

そう話すのは、南相馬市役所こども家庭課こども企画係の佐藤仁美さん。プロジェクトは、南相馬市と地元のデザイン事務所〈marutt〉が共同で進めてきた。軸となるのは、南相馬市を巣立つ18歳と、彼らに応援メッセージを送る地元の人々が被写体となるポスター制作。

企画を形にしていくにあたり、作り手たちは何よりも「18歳の胸に響くこと」を大切にしたという。そのため、ポスターに入れる応援メッセージは18歳の心情に寄り添いたいと考え、地元の人々の思いがどうしたら伝わるか、検討を重ねた。

福島県、南相馬の18歳を応援する広告プロジェクト「さぁ、行っといで」

「心を込めて、地元の人々の“さぁ、行っといで。”を届けたい。その思いで、撮影時の取材を丁寧に行いました」と、振り返る。

「特に印象的だったのは、地元の自転車屋さんとして地域から慕われていた〈星澄輪業〉店主、星淳さんのエピソードです。子供たちが成長し巣立っていく様子を何十年も見てきた星さんは、“自分の人生なんだ。好きなようにやりな。”という思いをコピーに重ねて撮影に参加。温かな人柄が滲(にじ)み出る笑顔を見せてくださいました。

その後しばらくして星さんはご逝去されたのですが、ご家族の方が“我が家にとって特別な一枚になりました”と言葉をくださり、私たちにとっても心に残るポスターとなりました」

プロジェクトの核となったのは、地元民が被写体になったポスター
18歳の心に響くポスターを制作するため、18歳にゆかりのある人や南相馬市で活躍する人、年の近い先輩たちに、被写体となることを依頼。撮影ロケ地も、高校生が日常生活の中で見慣れた風景などを中心に選定した。

画(え)を作りながら受け取った、被写体の人たちの思い。それらをより多くの人に伝えるため、南相馬市役所はPRを積極的に行った。ポスター制作の背景や撮影時のエピソードをSNSで発信。また、県立高校の卒業式に合わせて『卒業おめでとう撮影会』を実施し、生徒たちが友人や家族との思い出を残せるようにした。

その結果、「自分が応援されている気持ちになった」と、地元の人々だけでなく、SNSを見た人からも想像以上の反響が寄せられた。なぜこの企画は、こうも素直に多くの人へと伝わったのだろう。

「市内約180ヵ所のポスター掲出とSNSでの発信、プレスリリース配信等のPR活動の効果だと思います。取り組みを快く受け入れてくださった地元の人々の温かさがあるからこそです」

玄関先で優しく背中を押し、温かく人を送り出すような、「さぁ、行っといで。」というメッセージ。南相馬市に暮らす18歳の心と、多くの人々の心を揺さぶり、包み込んだ。

高校生3人が映っているこのカットは、南相馬市では馴染みのある祭礼『相馬野馬追(そうまのまおい)』の会場でもある、雲雀ヶ原(ひばりがはら)祭場地で撮影された。なお、すべてのポスタービジュアルの撮影は福島県いわき市出身の写真家・白井亮が担当。

「南相馬市初の試みとなったポスター企画でしたが、少しでも若者の支えになれていたら嬉しい。先の人生においても何かの折に“さぁ、行っといで。”のメッセージを思い出してもらえたら。これからも街の魅力や温かさを届け続け、地域と若者の心をつないでいきたいです」

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