長崎ちゃんぽんロードトリップ。巡る、すする、沁み渡る

長崎の食といえばカステラやカラスミだけでなく、やはりちゃんぽんも魅力。同じちゃんぽんでも地域によって特徴があるのが面白い。長崎各地を巡って、比較しながら地元の味に舌鼓を打つ。そんな旅はいかがかな。

photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Michiko Watanabe / special thanks: CHANPON-BANCHO

各地に名物ちゃんぽんが潜む。訪ねて食べる喜びを

あり余る観光資源がある長崎県。世界遺産の端島(はしま)(軍艦島)をはじめ、大小合わせた1,479の島々。長崎市内には大浦天主堂にグラバー園、眼鏡橋、出島につながる出島表門橋。長崎市よりも早く南蛮貿易をしていた平戸。手つかずの自然が残る九十九島(くじゅうくしま)を擁する佐世保、天草四郎の足跡が残る島原、橘湾に沈む夕日とともに温泉が楽しめる海上露天風呂がある小浜温泉。心安らぐ素朴な教会群が残る五島列島など……。日本37位の面積ながら、13の市と8つの町はそれぞれ個性にあふれ、観光スポットは枚挙にいとまがない。

食文化もバラエティ豊か。代表的な長崎名物のちゃんぽんを考案したのは中国・福建省からやってきた陳平順。1899年、旅館と食堂を兼ねた〈四海樓〉を長崎市内に開き、中国人留学生のためにおいしくてボリュームのある麺料理を地元の食材で作ったのが始まりとか。

具材は主に、モヤシ、ニンジン、タマネギといった野菜と豚肉、ピンクや緑のかまぼこに揚げかまぼこ、それにエビなどの魚介が入ることも。麺は長崎県でのみ製造される「唐灰汁(とうあく)」を加えて作る。

今や、長崎県人の胃袋の故郷、ソウルフードとなっているちゃんぽん、実は地域によって個性は様々。食いしん坊なら、地域ごとの特徴を頭に入れて食べ歩くのも楽しい。今回、紹介するのは、長崎、平戸、雲仙。そして佐世保ではとびきり特別なちゃんぽんを。概要が頭に入ったところで、いざ、ちゃんぽんトリップへ。

今回訪れたのは4つのエリア

朝8時30分から常連で賑わう“愛され”ちゃんぽん

あじ盛(長崎市)

朝8時30分。開店するや、次々客がやってくる。席に着くなり、「生ビールとアジの刺し身ね」と注文する常連もいれば、「特製ちゃんぽん」にご執心のキャリーケースを持った観光客も。眼鏡橋から程近い、浜町アーケードの角にあるこの店、朝から晩まで大忙しの大衆食堂だ。

1952年創業。店を守るのは3代目の松本伸正&安希子夫妻。先代夫妻も厨房でサポートする。オムライスにカレー、焼めしに天丼、手作りハムカツ、地アジのフライなど、何でも揃う多彩なメニューの中で、ちゃんぽんはほぼ全員が注文。ラードで豚肉を炒め、強火で煮出した豚骨と鶏ガラのスープを加え、麺と野菜を入れて仕上げる。朝からするする入る、あっさり味。特製はエビやイカがデカイのが特徴だ。

「平戸ならではの味」を家族で大切に守る

めしどころ一楽(平戸市)

厨房の大きな寸胴には、たっぷりの豚骨と鶏ガラのスープがグツグツ。1964年頃から継ぎ足してきた奇跡のスープだ。創業は1929年。うどん屋だった2代目が、長崎で習い覚えた味を3代目が進化させ、「平戸ちゃんぽん」と銘打った。

「観光客向きではない昔ながらの味」と3代目の鴨川裕之&貴子夫妻が胸を張る。エビやイカが入らない、庶民的な味わいだ。たっぷりの具材でなかなか麺に到達しないほど。現在は4代目である娘の木村佳世子さんが厨房の主。小学生の5代目候補ちゃんたちも跡を継ぐ気満々。オランダちゃんぽん、もつちゃんぽん、平戸牛ちゃんぽんなど、ちゃんぽんだけで10種も。これは、3代目の発明王・貴子さんのアイデアから。家族一丸のいい店である。

ご当地ちゃんぽんを盛り上げる、小浜ちゃんぽん

心(雲仙市)

〈小浜ちゃんぽん愛好会〉会長の森田哲生さんが営む人気店。雲仙市の山側に位置する雲仙温泉には1973年まで元祖〈四海樓〉の支店があったとされるが、同じ市内でも小浜は海沿い。対岸から船でやってくる湯治客から伝わったちゃんぽんは、「小浜ちゃんぽん」として独自の進化を遂げた。

ちゃんぽん番長こと林田真明さんの協力もあり近年その特徴は明確に。麺が極太で長く、鶏ガラと豚骨のスープ(これは他地域にも多いが、その中でもかなりあっさり)、スープの中で具材と麺を馴染ませたら、麺だけ箸ですくって器に。それから具材とスープを注ぎ、生卵をトッピング。途中で崩すと味変にもなる。「小浜ちゃんぽんを盛り上げたい」という熱い気持ちが、その一杯に凝縮されている。

佐世保のジャズ喫茶でおしゃれな味に邂逅

葉港町珈琲サセボノオト(佐世保市)

異色中の異色。佐世保の街にふさわしいしゃれたジャズ喫茶に、驚きのちゃんぽんがある。メニューを開くと、パンケーキにプリン、カレーやパスタなんて“いかにも”な中に、ドーンとスープカレーちゃんぽんが写真入りで入っている。こ、これは?

そもそも、こちらカレーとコーヒーの店だったが、20年来のバンド仲間が、営んでいた店を畳んだため、名物だったカレーちゃんぽんを引き継いだというわけ。「ジャズ文化と食文化の融合」と店主・田中博一さん。さらに、田中流の知恵と工夫が込められている。豚骨と魚介ベースのスープに自家製カレーペーストを加え、バジルペーストとトマトを加えて。添えられた雑穀米+チーズ+黒コショウの「ダンクライス」が秀逸。

(一社)長崎県観光連盟

TEL:095-826-9407

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