花や葉、蕾、枝など、植物のようでいて、はっきりしない形や線。そして、落ち着いたトーンのなかに時折アクセントのように差し込まれる、黄やピンク、あるいは黒や紅のような強い色――。この一枚は、三宅瑠人さんが「VIOLETTE 30」の香りにインスピレーションを得て表現したもの。
名前に冠されたヴァイオレットは白スミレを核に、白茶、シダーウッドやガイアックウッドなど30の香料が調和。「クラシック コレクション」に加わった最新作のフレグランスだ。

「白いスミレは、以前、家の前の花壇に植わっていたこともあり、自分にとって親しみのある花でした。でも初めて『VIOLETTE 30』を香ってみたとき、ファーストノートからいい意味で裏切られたんです。
華やかだけど、具体的にスミレの花が連想されるわけではなく、もっと深くて複雑。そのため絵に表す上では、具体的な形ではなく、色だったり、それぞれの色がどんな面積で塗られるかだったり。より抽象的なアプローチで表現できないかと考えました」
画材に選んだのは、オイルパステル。かねてアクリル絵の具やデジタルツールで描く繊細な細密画を得意としてきた三宅さんだが、近年になって積極的に取り入れるようになったものだ。特に、香りという感覚的なモチーフを表現するには、最適な手法だったのだそう。
「細密画を描くときは、筆で薄い色をどんどん重ねて少しずつモチーフをくっきりさせていくんですが、オイルパステルは、ひとたび紙をなぞった瞬間に色も形も決まる。直感的に描けるので、感じたことをそのまま落とし込みやすいんですよね。
華やかなニュアンスを感じたら花のような形を描いてみたり、ピリッとしたニュアンスを感じたら細い線を描いてみたり。構図を決め込むのではなく、香りに対して運動的に反応しながら描き進めていきました」

その分、時間をかけたのは色を選ぶ作業。
「僕の場合、オイルパステルは、絵の具のように何種類かを混ぜて色を作るのではなく、クレヨンのように既存の色から選んでいく方法で取り入れています。そのため香ってみては、これだと思う色を手に取る、という作業を繰り返していきました。
緑ひとつを選ぶにしても、『新緑のような健康的で鮮やかな色ではなさそうだな』『照りのある葉ではなく、もっとしっとりしたイメージかな』……などあれこれ考えていきましたね」

ビジュアルに落とし込んだのは、香りを探究し続ける感覚
フレグランスは、作業のときに身につけることが多いという三宅さん。一日の始まりに、自宅の一角に構えた仕事場のデスクに向かう前に、オフからオンへとスイッチを切り替えるため、手首にひと吹きかけて、身につけるのだそう。

「仕事柄、筆を動かしたり、資料をめくったりと手を使うことが多く、動かすたびにほんのり香るのが心地よいんですよね。出かけるときに身につけて、その人らしさを演出するのもいいですが、僕自身はパーソナルなものとして香りを楽しんでいます。
中でも〈LE LABO〉のフレグランスは、今回の『VIOLETTE 30』もそうですが、一貫して、名前から想起するイメージとは絶妙に異なる香りが奥に漂っている印象を受けるんですよね。しかもどこか侘び寂びの“寂び”のような湿度を帯びている。その違和感が何よりの魅力だと感じています」

今回三宅さんが手がけたビジュアルは、観る人によって解釈に余白が生まれる、アブストラクトなものに仕上がった。「完成させないこと」もまた、仕上げの段階で意識した点だという。
「香るたび、『ここからもう少しはっきりとしたものが浮かび上がってくるんじゃないか』と探究心を刺激されるのもまた、制作中に感じたこと。ところどころに描きかけのようなエッセンスを残したり、余白をとったりして、表現しすぎず、最終形の一歩手前で留める感覚は絶えず持ち続けていました。
香りは人によって感じ方が異なり、そのときの体調や気分、環境によって変化するものだと思います。特に、複雑なニュアンスを持つ〈LE LABO〉であればなおさらです。『VIOLETTE 30』の香りを探りながら、それぞれの視点で絵を眺めてもらえたら嬉しいです」

