霜降りよりクリーピーより、ゆとたわ!芸人より聴かれている20代OLのたわごと。
普通の2人による普通じゃない番組。
「スタバで隣から聞こえるOLの会話を盗み聴き」。そんなコンセプトの番組が不思議な熱量で盛り上がっている。リスナー累計20万人。ポッドキャスト総合の上位にランクイン。学びも教訓もない、いわば「究極の雑談」なのに!
しかし聴けばかりんさんとほのかさんの掛け合いに噴き出したり、予想外の展開に突っ込んだり。即座に虜になる。「有名になりたいなんて思わない」ゆとりっ娘たちの、肩肘張らなさが心地いい。
リスナー層は幅広く、「毎日何通もお便りが届きます」。ふと聴き始めて第1回まで遡る人も多い中毒性ありの「ゆとたわ」ワールド。足を踏み入れたら出られないかも?
料理は耳で楽しむ時代!平野紗季子さんの声で味わう副音声。
音声ガイドのように食べながら聴く臨場感。
フードエッセイストの平野紗季子さんがパーソナリティを務める『味な副音声』(SPINEAR)は、「お弁当」「あんこ」「春巻き」など毎回異なる“食”をテーマに味の背景を掘り下げるプログラムだ。まるで美術館の音声ガイドのように、平野さんの偏愛溢れる語り口を堪能できる。
「例えば、京都の〈広東料理 鳳泉〉のカラシソバを初めて食べたら、“どうしてレタスと餡とカラシを組み合わせようと思ったんだろう?”って頭の中にハテナが浮かぶと思うんです。そんな時、料理の背景や歴史を聴きながら食事ができたらいいのに、とずっと思っていて」
初回では牛タン料理のチェーン店〈ねぎし〉を訪れ、しろたん定食を食レポ。「牛タン屋さんのスープって、牛テールスープなんですよ。味噌汁とかじゃない。つまり出自が一緒なんですよね。だから阿吽の呼吸みたいなのがあって、それで肉の旨味を底上げしてくれるっていう効果があるんですよ」(2020年8月31日配信「定食」より)。
静かな熱を帯びた平野節が料理をぐんと立体的に。「特別なグルメより、ピザとかロイヤルホストみたいな身近な料理について語りたい」と平野さん。おいしい副音声を聴きながら、新たな食体験を。
ポッドキャストの弱点、著作権問題を合法的にハック!
秘密基地で聞き出す本音の音楽話。
ライブの打ち上げにいるようにアーティストの話が聞けてかつ、番組内で合法的に曲を流すことに成功した音楽番組が『radioDTM』だ。
2019年、Spotifyのプレイリストにトークと曲を一緒に入れられることに気づき、番組内で楽曲を扱う時に生じる著作権の問題を合法的にハック。上から順に再生すれば、擬似的に音楽ラジオ番組を体験できるというわけだ。
「楽屋感のあるトークをハード面から作り出そう」と収録場所に選んだのはディレクター、カネコさんの住む木造一軒家。「悪友の秘密基地に招待されたような雰囲気だから本音が出る。好きなアーティストと直接話せることが喜び」と語る彼らだが、残念ながら現在はリモートで収録中。この苦境をバネにさらなるハックが生まれる日も近い。
これまで出演したアーティスト:
折坂悠太(のろしレコードとして)/おとぎ話/MOROHA/Dos Monos/ヒグチアイ/SuiseiNoboAz/webnokusoyaro
本業が別にあるから面白い
兼業ポッドキャスターたちの流儀。
2つの人気番組にきっかけと録り方を聴く。
〈CASE1〉奇奇怪怪明解事典
1993年生まれで、ミュージシャンで、週刊少年ジャンプを買ったことがない。3つの共通点を持つDos MonosのタイタンさんとMONO NO AWAREの玉置周啓さんは出会ってすぐに意気投合し、緊急事態宣言下に、『奇奇怪怪明解事典』の配信を始めた。
開始当初の番組テーマは、「言葉になっていない現象に名前をつけていくポッドキャスト」。しかし、これがうまくいかなかった。「経験も知識も浅い僕らには荷が重く、早々に馬脚を現した」とタイタンさん。
番組内容を変更し、最近読んだ書籍とそこから考えたことについて語るスタイルにしてから「編纂員」(番組内におけるリスナーの呼称)が増えていった。
週に1度、前後編2本録りの収録は長らくZoomで行っていたが、最近対面での収録を開始。呼吸が合わせやすくなったと嬉しそうだ。編集は、生粋のラジオっ子であるタイタンさんが毎回5時間をかけて丁寧に行っている。
〈CASE2〉オフトピック
ベンチャーキャピタルで同僚だった宮武徹郎さんと草野美木さんが、「いつも社内で話していることをポッドキャストにしたら面白いのでは」と好奇心を抱き、会議室に入って、スマホ一台で録音してから2年。
アメリカのスタートアップの情報をいち早く伝える『オフトピック』は、話題のサービス〈Dispo〉創業者の日本初となる独占インタビューを公開するなど、日本のスタートアップ界にとってなくてはならない番組となっている。ちなみに、扱う話題はInstagramやSnapchatの動向など一般向けサービスであることが多く、特別な知識がなくても楽しい。
毎週の収録はZoomと、Appleが提供する無料アプリGarageBandを組み合わせて実施。月曜日の11時からと時間を決めており、1時間弱の収録後、翌週に向けたネタ出しの会議を行う。
「宮武さんが英文の記事等を読み込んで分析した結果を。私が、創業ヒストリーなどを調べてわかった面白い情報を。それぞれ持ち寄ります」。事もなげに語る草野さんだが、国内外から独自に集める情報は稀少性が高く、玄人にもファンが多い。実は今年法人化するという『オフトピック』。より充実したコンテンツが届く日も近そうだ。