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パリ・オペラ座発コンテンポラリーダンス『PLAY』に夢中② ~俳優・石橋静河の場合~

幼少の頃からクラシックバレエやコンテンポラリーダンスに親しみ、海外留学まで経験をした俳優の石橋静河さんは、過去にアレクサンダー・エクマンの舞台も観たことがあるというだけあって、「PLAY」には並々ならぬ期待と喜びがあったという。

Photo: Alexandre Tabaste / text: BRUTUS

石橋静河
舞台上の一段高いところにオーケストラピットが設けられている。

子供の頃に戻って遊びたい、楽しく踊りたいという原初的な体験ができる作品です。世界的にトップクラスのパリ・オペラ座のプロフェッショナルなダンサーが、オーケストラピットをつぶした舞台を走りまわっている姿だけでも素晴らしい。過去の公演のDVD映像ももちろん美しいのですが、やはり「PLAY」を堪能するには、自分の身体を劇場に持っていくのがいちばん。ダンサーたちの熱気や息遣い、シネマのような音楽に包まれる感覚、プラットフォームで演奏する演奏家たちの姿などは、体験しないとわからないと思いました。

舞台上で同時多発的に複数の登場人物が動いていて、まるでひとつの街の日常、フランス映画を観ている感覚になりました。10人で一緒に行ったら、それぞれが違う箇所を観ている気がします。焦点を誘導させないので、「スコトーマの法則」(人が無意識のうちに見たいもの以外を遮断する)が生まれるのがいい。きっと振付家のアレキサンダー・エクマンさんがスペクタクルを作ろうよ!じゃなくて、ミクロなことをきちんと拡大して、ハプニングを巧く使っている。稽古からクリエイションの過程も絶対におもしろかったはずです。

石橋静河
パリ・ガルニエ宮は、マルク・シャガールによる天井画「夢の花束」が有名。1946年に描かれた。

今回、パリでアレキサンダー・エクマンさんと対面できて、会う前はどんな人だろうと思って緊張していましたが柔らかでリラックスした雰囲気の中で話せました。シンプルな質問に対してもさまざまな角度に視点を変えられる。「作品のテーマに意味はないよ」と、軽やかに。その感性を伝統的なオペラ座という場所に落とし込めるのはすごいです。そして気さくだからこそ、余計にミステリアスで……。スウェーデン人と日本人は、お酒が入ったら別人になって本当の自分をさらけ出すんだよともおっしゃっていて、楽しいひとときでした。

日本では先に演目の情報を知っておきたいという国民性があると思いますが、「PLAY」は良い意味でそれをさせてくれない。特に“こうあるべき”や常識に捉われてしまっている人たちを裏切る。創り手を含めた若い人たちが、自由でいいんだと感じてほしいです。この夏、そんな作品が東京で開催されるのが待ち遠しいです。

石橋静河
歴史あるオペラ座の稽古場など、いくつかの場所を訪れた。

石橋静河×Alexander Ekman特別対談

石橋静河とAlexander Ekman
英語でコミュニケーションを取った石橋さん。すぐに打ち解けて、話は盛り上がった。

1.あなたにとって「PLAY」という言葉は何を意味しますか?

アレキサンダー・エクマン(以下エクマン)

幸せ

石橋静河(以下静河)

素晴らしい!もう少し詳しく話していただけますか?

エクマン

実は、先日そう思い立ったばかりです。どこかで「人生の唯一の目標は幸せになること」みたいな一文を見かけたんです。それで、幸せになる方法を色々探して、不幸の素をなくしていくのが大事だと考えました。例えば素直に遊ぶことができれば、それは幸せのひとつつのカタチだと思います。

2.毎日忙しい中で楽しい気持ちや創作意欲をどのように維持していますか?

エクマン

常に遊んでもいいんだ、と意識するようにしています。そこに座ってなんでも真面目に捉えすぎないで、もう少し楽しくやれるんじゃないかって思っています。あと、友人にイタズラをするのが好きですね。驚かせたり、イタズラを仕込む準備をしたりするのも大事です。

Alexander Ekmanのスケッチ
エクマン自身の創作ノート。迫力のある演出がどのように考えられているのか。舞台構成のポイントがよくわかる。

3.遊び心が強い方ですか?

エクマン

もっと遊ばないとだめですね。着飾って、色んなキャラになりたいと思ったりすることがあります。俳優さんも演じる時って、色々な人物になりすますでしょう?

静河

そうですね、頭の中であれこれ考えて思い詰めても仕方がない時は、これは演技なんだ、と割り切ることにしています。でないと、こうしなくちゃとか、もっとこうとか、あの人みたいに演らなくちゃとか、考えすぎると頭の中でがんじがらめになってしまいます。体を意識して、頭で考えずに、ただボールを投げて、走り出すのが大事な気がします。

エクマン

そうそう、全部放り出して演らないと。

舞台『PLAY』
緑のボールを弾き飛ばしながら集団移動するシーン。躍動感に溢れている。

4.なぜオーケストラピットから演奏者たちを舞台上に持ってきたのですか?

エクマン

驚かせるため。それと、オーケストラピットのスペースをダンサーたちと使いたかったから。観客との距離感をできるだけ縮めた方がいいと思って。

静河

想定外のことをするのが好きなんですね!

エクマン

そう、サプライズ!

静河

サプライズがお好きなんですね?

エクマン

はい、小さなイタズラが好きです。

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