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パリ・オペラ座発コンテンポラリーダンス『PLAY』に夢中③ ~俳優・柄本時生×渡辺大知対談~

プライベートでも仲良しという俳優の柄本時生と渡辺大知。ともに舞台を活躍の場とするだけに、一緒にパリで観劇した「PLAY」に終始興奮しっぱなし。対談も徐々にヒートアップして、独自解釈含めて楽しい話題が次々と。

Photo: Alexandre Tabaste / text: BRUTUS

柄本時生(以下、柄本)

初めてのパリだったこともあって、すべてがアトラクションでしたね。オペラ座に入って、あの中央階段を見せつけられちゃったら、もう心踊る以外ないだろうっていうね。

渡辺大知(以下、渡辺)

僕も期待が膨らみすぎて、パリに到着しても観劇当日までわざとオペラ座の周りは避けていました(笑)。行ったことのある好きなバーにフラッと入ったり、時生くんとなぜか二人でプリクラ撮ったり、そんなことしてワクワクを抑えていました(笑)。

柄本

着ていく服も考えますよね。うちの爺ちゃん婆ちゃんが熱狂的な歌舞伎好きなんですよ。だから歌舞伎座行くとき時は和服を着飾るんですよね。パリの人にとってのオペラ座は、江戸っ子にとっての歌舞伎座じゃないですけど、感覚的には近いんじゃないですかね。そういう「場」があることが素晴らしいと思うんです。

初めてのパリで、建物、街を行く人が、美しすぎて感動したという柄本時生さん。

渡辺

それほんとにそう。今から舞台を体験しに行くぞっていう空気にさせてくれる。だから自分なりの一張羅で行くのは大事だと思うんです。

柄本

オペラ座に入ったところのあの中央階段ね。あれはアガる。これから観るぞ!っていう気になるよね。

渡辺

劇場の席についてからも、シャガールの描いた天井画とか、ずっと無言でキョロキョロしていた気がします。もう360度、楽しい。舞台が始まる前にメインダンサーが踊っているのもすごかった。僕たちと地続きにあるようにも見えて、自然に舞台に引き込まれるみたいな。

エッフェル塔などパリの名所の他、14人の音楽家によるオペラ作品をモチーフに描かれている。

柄本

僕も冒頭が一番持っていかれましたかね、まだステージの幕が閉まっているうちに、幕前にトランペットやサックスなど4つぐらい管楽器が並んでいて、演奏が始まる。そのうち幕に1本線のライティングがあたって、そこでダンサーが踊り始めるんです。常連なのか、拍手が沸き起こって。やがてスタッフロールが投影され、流れ始めるんですけど、心奪われましたね。そこからは、やっぱりアレクサンダー・エクマンのセンスに圧倒されたというか、なるほどそう来たか、みたいな場面が矢継ぎ早に現れて、驚きを超えて笑っちゃうんですよ。

渡辺

僕も観る前に勝手に想像してたイメージが、もう一瞬で吹き飛ばされてしまって、身を任せようと思った。絶対素晴らしいものが観られるっていう確信を得た時に、その興奮を時生くんと共有できたのが嬉しかったですね。二人でずっと笑っちゃってましたから。

柄本

日本にも素晴らしい演出家がいて、いい舞台がたくさんありますけど、日本にちょうどないものが全部詰まってる気がしました。

渡辺

時生くんと年末にお酒飲みに行った時に、なんで自分がなんでコンテンポラリーダンスに興味持ったかについて話したんです。色々な作品を観ていくうちに思ったのが、ダンサーが、言葉を使わないし音も出さないけど、楽器みたいに思えたということで す。僕が好きなのは、言語や感情を身体に置き換えて、動きで何かを語ろうとするとこ ろだったんだって。

渡辺大知さん(左)と柄本時生さん(右)。舞台を目の当たりにした興奮冷めやらず、分かち合った感動を丁寧に言葉に変換しながら語ってくれた。

柄本

僕は、コンテンポラリーダンスが正直分からなかったんですよね。年末に大知くんが言ってくれた言葉は、ようやく「PLAY」を観ることで答え合わせできた感じです。

渡辺

「PLAY」はいろんな解釈の仕方がある舞台ですが、その描き方が面白いですよね。舞台の面白み の1つは、ステージそのものは動かないことかと。その中でどう多角的に場面を作っていくか、そこに舞台表現の可能性があると思うんです。例えば、舞台上の方々で、いろんなことが同時多発的に起こる楽しさがあります。それは映画にはない舞台ならではの表現だし、舞台が持つ「体験」的な時間芸術だと思 うんです。「夢」と「現実」や、「原始」と「今」が同時に感じられたり、そういった 表現のレイヤーの多さが素晴らしかったです。

柄本

でも、格式ばってないから、やっぱり楽しいですよ。最後にゴスペルシンガーの歌唱があって、あそこで盛り上がるから、さすがにもう笑顔になって帰ることになりますよね。だって、アゲられっぱなしな感じですよ。

渡辺

品性を感じるんだけど、舞台を超高尚なものとしてなしてない。「PLAY」は表現のレイヤーが多くて観るものを一瞬たりとも飽きさせない上に、メタ的な視点もしっかりと保っていて、 そこが本当に素晴らしいなと思いました。

柄本

ボールが飛んでくるシーンでも、風船に触りたいのか、何人かの子どもが椅子の上に立ってたんですよ。あれが許される風情。これは、マナーとかの問題じゃないんだよね。舞台芸術に対する許容があるんですよ。日本だと怒られかねない。

象徴的に扱われる大きな白い風船は、やがて観客席を巻き込んでゆくことに。

渡辺

むしろあそこで、老若男女がボール遊びを思い切り楽しんでいる中で、観客として参加しない方が失礼ですよね(笑)

柄本

僕も初めて、スタンディングオベーションで立ち上がったもん。正直、日本だと自分の職業観を考えてちょっと躊躇しちゃったりするけど。これも想像の範囲で語りますけど、エクマンのすごい演出手法だと思ったんです。多分、第一幕の最後の方で、風船を出してきたことで、第二幕でもお客さんが動きやすくなっていると思うんですよ。

渡辺

確かに!二部構成のうち、第一幕はどちらかというと、身体表現がメインで。二幕ではすごく「言葉」を意識していたと思うんです。ナレーションが入ったり、歌が入ったりして、それが舞台中央で表現されている。1幕と2幕で全く違う表現方法が取られていて、違う感情が揺さぶられるんだけど、時生く んの言うような細かい「仕掛け」などで大きな塊になっている気がする。結果、全部ひ っくるめて人間は面白い生き物だなって納得させられますよね。

パリは大好きな街だという渡辺さん。友達も住んでいて、たまに遊びにくるそうだ。

柄本

なるほど。響き渡る壮大な音楽も良かったよね。それと同時に、実は足音が大事な役割を果たしていたよね。途中から何かの音楽のように聞こえてきて、観客に聞き耳を立てさせる。その動きを作ったっていうのにはちょっと驚きました、

渡辺

とにかく演出が繊細ですよね。音楽とダンサーたちの交わりも、距離感も繊細で。なの に大胆に感じる。

柄本

今になって思うんですが、緑の衣装を着たMCのルーさんは、エクマンそのものなんじゃないかな?「君は僕だよ」って、ダンサーの人に任せたんじゃないかと思うんです。幼少期に始まって、今まさに彼が考えていることまで表現しているような。

渡辺

それ面白いですね。よく考えると「PLAY」は約2時間の演目ですからね!だいたい、食 事したり、ゲームしたり、テレビを見ていてもあっという間に2時間経つじゃないです か。そう考えると同じ2時間でも、自分の体も頭も、五感の全部を使って楽しめる、素 敵な過ごし方だなって言いたいです。

柄本

令和の若い子たちに是非見てもらいたい、スマホを使った遊び方とはまた違う「遊び方」が見つかるんじゃないかなって思います。騙されたと思って是非観てください。

観終わった後は、この笑顔!

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