舞台上で同時にいろんなことが起こるので、二幕ある約2時間のステージが本当にあっという間で。満足度が高いのに、見終わった直後に、すぐにもう一回観たいと思いました!今回、席は真ん中の前から5列目くらい。ステージから近いところで見られたのもあるんですが、何か自分がステージの中にいる感覚というか。それはダンサーが舞台の奥行きを最大限活かして近づいてきたりして、観客との距離感が近く感じるような舞台構成になってるからかもしれません。
一方で、ステージの構成、舞台装置の美しさ、ストーリーについて考えていると、ダンサーの動きに集中できないし、その逆もまた然り。すごく頭の中が忙しかったんです。だから1回観ただけじゃ足りないと思ったのもあります。
あとは、ダンサーの身体表現と感情表現がすごいですね。怒っている人は本気で怒っているように見える。時に笑いたくなるようなコミカルさもあるんだけど、動きの質はめちゃくちゃ繊細で、その2つの要素が同居しているのがすごい。そのせいか、幕が開いた時に、現実とはかけ離れた世界観に引き込まれるんです。こういう感覚は日本ではあまりないのかな。だからこそ、子どもが親と見ても一緒に童心に返って楽しめるんじゃないかって思いました。
![](https://media.brutus.jp/wp-content/uploads/2025/02/OB_250105_TABASTE_OPERA_PLAY_PHOTO_AMI-YUASA_2007_WEB.jpg)
ダンスに音が必要な理由
以前、舞台経験のあるBボーイのダンサーの子に、「なんで踊りに音が必要だと思う?」と問われたことがあって。私は「音楽で踊りたいから」って曖昧にしか返せなかった。でも、その人が教えてくれたんです。「歩き始めの子どもは、自分の中でうまくリズムが作れないから歩けないけど、大人になると無意識にリズムで歩くようになるでしょ。すべての動きには、聞こえていなくてもリズムがあるんだ」と。
![](https://media.brutus.jp/wp-content/uploads/2025/02/241203-11-BF-web_PLAY_A-Ekman-c-Benoite-Fanton-OnP.jpg)
普段、私たちが踊る場合、音ありきで踊るんですよ。 でも、この舞台の幕が開く前からメインダンサーが無音の中で踊るところから始まる。幕が開くと、ダンスに合わせて音が始まる。そこで初めて、かつて言われたことの意味が、ハッキリと見えた気がしたんです。
言葉を発しない自己表現
![](https://media.brutus.jp/wp-content/uploads/2025/02/241205-016-BF_PLAY_A-Ekman_I-Viikinkoski-L-Marcault-Derouard-c-Benoite-Fanton-OnP.jpg)
その音が見えるパフォーマンスで、さらに印象的だったのは、第一幕。ボックスの上で踊るバレリーナに合わせて、もう一人のメインダンサーがマイクで音を立てる場面。さっき言ったことの逆だけど、踊りから生まれる音もあるんだって。音の見えるパフォーマンスが随所にあるんです。
第二幕で、大人の世界に切り替わった時、時間をずっとループして踊っているシーンが印象的でしたね。最初は気付かないんだけど、あれ?と思う瞬間がある。それが「日常」「退屈さ」「時間の経過」を表現していることに気付くんです。笑いだって、楽しいのか馬鹿にしているのか、その人の持っている感情を動きにのせて伝える。まさに言語がなくても伝わるのがダンスの良いところだと再確認しましたね。
生のステージを観るから分かることもある
![](https://media.brutus.jp/wp-content/uploads/2025/02/241205-075-BF_PLAY_A-Ekman-c-Benoite-Fanton-OnP.jpg)
例えば、スーツを着て踊っているシーンで、しんどそうな体制で静止する場面があったんです。フリーズしながら、ダンサーの筋肉が小刻みに震えているのが見てわかったんですよね。ブレイキンでもフリーズする時とかに同じ状況になるんですが、彼らは表情に全く出さない。難しい動きを表情変えずにやっている凄みみたいなものが伝わってきました。
1回目はまっさらな状態で見るじゃないですか。事前に知識を入れて観たら、もしかしたら違う景色が見えたかもしれないけど、自分なりの正解を探すのも楽しいんですよ。一緒に観に行った母は、途中でついてこられない部分もあったりしたみたいなんですが、私なりの解釈を伝えているうちに、「この場面の意味はこういうことなんじゃないか」「もう一度観てみたくなった!」とか会話も盛り上がり始めて、同じテンションで大喜び。観劇後にあれこれ話す楽しさを含めて「PLAY」の魅力なんだと思います。
オリンピックのときは練習から入って、開会式から閉館式までずっとオリンピックにフォーカスしていたので、改めてパリを楽しめたのも良い思い出になりました。