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フィリップ・ワイズベッカーの自作家具も並ぶ。「HANDMADE」展が開催中

家具や器などを淡くあたたかな線で描いたドローイングで人気のフィリップ・ワイズベッカー。実は自身で木をカットし、色を塗って、椅子やデスクアイテムも作っていた!そんな彼の生活美学に触れることができる展覧会が開催中です。

text: Masae Wako

「ベーシックで気取らない家具は、すぐに気に入った。友人や家族から座り心地が悪いと批判されても、それでも自分らしく思えて、今でも飽きずに使っている。なにしろ見ていて美しいのだ」

そんな言葉とともにシンプルな椅子や家具が並んでいるのは、現在開催中の「Life in Art フィリップ・ワイズベッカー“HANDMADE ハンドメイド”展」(~6月26日)。作ったのはパリを拠点に活動する人気アーティスト、フィリップ・ワイズベッカーだ。平面的なのに不思議な立体感のあるドローイングで知られているが、実は自宅やアトリエにある家具のほとんどを、自ら設計し制作しているという。

手本にしているのは、100年ほど前にニューイングランドへたどり着いた移民たちが使っていたであろう椅子や家具。「スタイルや職人技にはこだわらず、最小限の材料で、素早く作れて、頑丈。そんなところが好き。自分でも似たようなものが作れる気がした」とワイズベッカーは言う。

木材とネジと接着剤、クランプと穴あけドリルとやすりとペンキ。ごく初歩的な道具だけで作り始めたそれらの色は、ほとんどがグレー。「流行がなく、重みがあり、落ち着かせてくれる。黒でも白でもないところが、迷いの絶えない自分にはよく似合っている。幸いなことに塗りの欠点も目立ちにくい」。

家具にも生活道具にも、淡い線で描かれたドローイングと同様、ごくシンプルだけれど親しげであたたかな表情がある。会場ではワイズベッカーのアトリエで収録した映像も楽しめるほか、著書『ホモ・ファーベル』(2,500部限定)を販売する。ホモ・ファーベル、すなわち、自身の内面にある発想を自由に表現し、生活環境を構築していくという、ワイズベッカーの生活美学に触れることができる。実はこの本の発売時期に合わせて企画された本展。両方を楽しんでもらいたい。

フィリップ・ワイズベッカー著『ホモ・ファーベル』。図書印刷株式会社 BON BOOK刊
フィリップ・ワイズベッカー著『ホモ・ファーベル』。図書印刷株式会社 BON BOOK刊。限定2,500部、3,300円。全国のMUJI BOOKSで販売中。