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あなたよりスタイルのある人は?栗野宏文、杉山恒太郎らの「センスのいい友」

“あなたよりスタイルのある人は?”。〈ユナイテッドアローズ〉の栗野宏文さんから“センスのいい人の輪”、つなげます。欠かせないアイテムとともにマイメソッドも教えてもらいました。

初出:BRUTUS No.820『21人と考えたファッションメソッド。』(2016年3月15日発売)

photo: Takanori Okuwaki, Hiroyuki Seo, Tomoyo Yamazaki / coordination: Yumi Hasegawa / edit: Keiichiro Miyata

栗野宏文(〈ユナイテッドアローズ〉クリエイティブディレクション担当 上級顧問)

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

服を着るポリシーが芽生えたのが中学生の頃。当時、ビートルズが初来日しました。はじめは同じ服を着た彼らが、音楽的な成長につれてそれぞれ個性を出した格好をしだして…。歌うことと同じく服を着ることも自己表現なんだ、と学びました。後にデヴィッド・ボウイ、セックス・ピストルズが出てきて、時代を作っていきましたが、皆、今も語り継がれていますよね。

後にクラシックとして残るアバンギャルドこそ本物だと思うんです。伝統を重んじつつ、革新を受け入れることの繰り返し。常に前衛的なものを自分の中に取り込む余白を持つことが僕のメソッドかな。最近はエチオピアジャズとか、辺境音楽にハマっていて、結果、トラッドな装いにアフリカンバティック柄を取り入れたり。おそらく時間が経てば、これも自分のスタンダードに変わると思います。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

河毛(俊作)さん。伝統を重んじる自身のスタイルがあります。

河毛俊作(フジテレビ 編成製作局 エグゼクティブディレクター)

Q

栗野宏文さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

栗野さんのように洗練されたファッションの伝道師のような方から推薦されるなんて、光栄の至り。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

私たちアイビー世代って、ある程度決まった服とその着方をまず覚えますから、それをどう変化させていくかにスタイルが出ます。私の場合は、フランス映画に影響を受けて、銀幕のスターの着こなしをどこかトレースしていた気がします。イヴ・モンタン、フランソワ・ペリエとかね。ブルージーンズを穿いてもトップスはエルメスを合わせて、それで土臭さを消してしまったり…。

フレンチアイビーは着方が自由でいい化学変化が起きるんですよね。ただアラン・ドロンだけは美形すぎて参考にならないけど(笑)。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

何度もお会いしたことはないんですが、印象的だったのが杉山(恒太郎)さん。日本のマッドメンのような人でね。彼の詩集にある「未来は懐かしくて、過去はいつだって新しい」という詩からも、そのスタイルが表れているようで惹かれます。

杉山恒太郎(〈ライトパブリシティ〉代表取締役社長)

Q

河毛俊作さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

光栄の極みです。どうしていいかわからなくなっちゃうな(笑)。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

(松尾)芭蕉が晩年に唱えた俳句の境地を“軽(かろ)み”って言うんだけれど、そうありたいと思うんです。ことファッションにおいては身に着けているものが、高価なものよりは、ボロとか、多少ドレスダウンしている方が好み。

あとは着こなす人自身の魅力ですよね。所作や立ち居振る舞い、語るコトバや選ぶコトバ。その人の醸し出す雰囲気がすべてスタイルとして映ると思います。例えば、食べ方がキレイとか、そういう方が大切かと。映画監督・詩人、ジャン・コクトーの有名な言葉“軽さのエレガンス”を持った方が一番です。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

小野塚(秋良)くんしか思いつかない。ファッションデザイナーだけど、ボロいジーンズとTシャツでいられる人ってなかなかいないよね。そのさりげなさがスタイルになっているし、そこに“軽さのエレガンス”を感じます。

小野塚秋良(デザイナー)

Q

杉山恒太郎さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

いやいや、僕の軽さは出来の悪さですよ(笑)。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

三宅一生さんのアシスタントでパリコレクションに行った時から感じていたんだけど、ラグジュアリーな服や場所は僕には合わないんだよ。まったく謙遜とかではなくね。だから名だたるブランドの綺麗なウィンドウディスプレイよりも、それを磨いている労働者の方がものすごく気になるし、美しく見えたわけ。汚れとかボロとかを気にしないで服を着る方が、リアリティがあるから。

頭で考えて服を着るということはないので、はっきりと「これが私のスタイルメソッド」とは言えないけど、無理なく見えるものを身に着けたいと思っています。スタイルが好みというわけではないけど、ヘミングウェイなんかはそのお手本になる人物ですね。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

色々な国に行ったけどイギリス人はかっこいい。生き方が型にはまらなくて粋な男って感じがするね。特に友人のピーター(・スミス)はそんなザ・イングリッシュマンで、本当に素敵なんだよ。

ピーター・スミス(へアスタイリスト)

Q

小野塚秋良さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

とにかく驚いたよ。でも光栄に思っている、ありがたいね。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

年を重ねて、スーツをよく着るようにはなったね。冒険したくないわけではないけど、似合う服の幅は狭くなっているから、今はスーツがいちばんしっくりくる。ちなみに撮影で着たのは息子がアシスタントを務める〈ランバン〉のスーツ。彼がプレゼントしてくれたんだ。自分では普段選ばない、という意味ではこれも挑戦だね(笑)。

ただこれを読んだ若い世代には、年を重ねる前に色々な格好に挑戦してほしい。それこそ70〜80年代の東京は、ロンドンともほかの都市とも、まったく違ったスタイルを持っていて、とても刺激的だったから!あの時のように、今でも周りにいる人たちに刺激をもらってそれを受け入れたいとも思っている。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

すべての観点において独特かつ誠実な視点で物事を見ている小林(節正)さん。純粋でスピリチュアルともいえる彼の生き方、そしてあの素晴らしい微笑みに惹かれて推薦します。

小林節正(〈.....リサーチ〉代表)

Q

ピーター・スミスさんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

ありがとうございます。知的で、自分が憧れるトラッドを愛するピーターさんに言われるのは、本当に嬉しい。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

60年代生まれの僕にとっては青春期に突然アイビーというスタイルが目の前に現れました。キラキラとした僕のファッションの原風景です。着こなしにおいても、服作りにおいても、僕の場合は、そのアイビーという軸に、ほかのものをミックスさせて良いバランスを探っていく作業です。

今日と、明日でちょっとした変化を加えても、類型学的な微々たる差で、言わなきゃ気がつかないほどの違い。そのミクスチャーは、洋服に対してフラットな目線を持った日本人だからできる強みのようにも感じています。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

カスタムバイクのビルダーのような感覚でもの作りする、大淵(毅)さんが面白い。パターンを引くところから型紙の裁断まで、すべて自分でこなし人に触らせない。その1cm単位を突き詰める作業は古着の個体差までよく知る彼ならでは。本当に尊敬します。

大淵毅(〈ポスト オーバーオールズ〉代表)

Q

小林節正さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

小林さんにはカスタムバイクのビルダーとよく言われますが、自分ではよくわからないんですよね。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

ワークウェアばかりを着てきて、昔はよく野暮ったいとか言われたんですが、それが最近は今っぽいと言われて…。変わったのは時代なんでしょうね。だから周りのことは気にせず、自分の好みを突き通しています。ワードローブはストレートの5ポケットパンツ、カバーオールやベスト、Tシャツばかり。

気分や気候で、素材と色が変わる程度です。あとワークウェアって自由にその人の色を付けやすいアイテムだと思うんです。例えば大きめで着ても突拍子なく見えないですし、アイテムの組み合わせでモダンに見せられます。東洋人でも“冗談”に見えないのがいいんです。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

(小田木)邦匡は何を着ていたのか印象に残らない人なんです。ダサかったり、気取っていたら、気づくはず。きっと自分に合った服を着ているから。もしメソッドがあればぜひ聞いてみたい。

小田木邦匡(〈WP lavori〉デザイナー)

Q

大淵毅さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

会うたび、刺激を受ける大先輩に推薦していただけて嬉しいです。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

着ている洋服のブランドがわかってしまうと、そのイメージから勝手にスタイルを描かれてしまう、と思うんです。だから古着や老舗ブランドの特定されにくい洋服を選ぶことが増えました。ベーシックを追求するあまり、度が過ぎて、タグやシグネチャーを取ったり、切ったりしてしまうこともあります。

例えば〈ニューバランス〉のスニーカーの“N”や、〈リーバイス®〉のデニムのバックポケットのアーチステッチ…。そんな無意識でやっていたことが結果として大淵さんが感じた“印象に残らない”という自分のスタイルになっていたんだと、これを機に気がつきました。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

短い期間ですが、7、8年前に〈ネペンテス ニューヨーク〉で働いていて、その頃から鈴木大器さんに憧れています。服のディテールや生地について深い知識があって、さらに新しいものにもアンテナを張っている。それが服装にもよく表れている方です。