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〈ペンドルトン〉のブランケットを再び手掛ける花井祐介と、ウーレンミルズを訪問

ウールブランケットで知られる〈ペンドルトン〉社とのコラボレーションも、今回で2度目となるアーティストの花井祐介さん。その構想スケッチを胸に、改めて今でもアメリカ北西部に残る2つの工場に足を運んだ。ネイティブアメリカンとの関わりの歴史を勉強したり、実際にブランケットの生産現場を目の当たりにした旅の記録。

photo: Yoko Takahashi / text: Aya Muto

ペンドルトンの毛織紡績工場
ポートランドから車で3時間半の距離にあるペンドルトンの街に毛織紡績工場を設立したのは1909年。全てのウールブランケットは今もこの工場で織られている。

オレゴン黎明期の羊毛産業と
〈ペンドルトン〉

〈ペンドルトン〉の始まりはイギリス出身の織物職人、トーマス・ケイが1863年にオレゴンに移住し、羊の生育地でもあった一帯で産業化し始めた毛織物工場に従事したことがきっかけ。その娘ファニーと3人の孫息子、ビショップ兄弟が1909年にペンドルトンの街にあった毛織物工場を購入し、現在の3階建ての施設を建設。1912年に手に入れた隣接のワシントン州に位置するワシューガル工場と合わせて、〈ペンドルトン〉は今日もアメリカに残る数少ない毛織物工場を稼働させている。

初期からのお客さんであったネイティブアメリカンの人々との深い交流が今も続く〈ペンドルトン〉。そこには時に一緒に暮らしながら彼らの歴史と伝統を丁寧にデザイン化した、織物職人ジョー・ラウンズリーの存在があったという。地元の部族に尊敬されていた首長の名のパターンや人々のランドマークとなっていた岩にちなんだデザインなど、背景の物語も大切に語り継がれている。

自ら作る手織りのラグは既に彼らの日用品だったが、大きな織り機でしか作れないブランケットはネイティブの人々の暮らしに重宝したとか。冠婚葬祭の贈り物として好まれたローブサイズのブランケットは今でも作られ、毎年9月に主催者として参加しているペンドルトン・ラウンドアップ(ロデオと屋外西部劇、ネイティブアメリカンの人々の踊りなどからなる祭典)でも、賞品として寄贈され続けている。

羊毛からテキスタイルへ。
念願のファクトリー見学

1度目のコラボレーション時にもポートランド近郊のワシューガル工場を訪れていたという花井さん。今回はたっての願いであったペンドルトン工場の見学も実現した。車で東へ3時間半移動したところにあるペンドルトンの街にある工場では複雑なデザインを織り上げるジャカード織り機が稼働し、100年以上作り続けられている数多のパターンをはじめ、アーティストとのコラボレーション・ブランケットなどが作られるとのこと。

「ユウスケのブランケットも、ここで織り上げられるんですよ」と工場の人が説明してくれる。入り口近くのスペースには鮮やかな色味の羊毛ロッドが帆布のカートに積み上げられ、織り機の順番を待っていた。「〈ペンドルトン〉というとビビッドな色を想像しがちだけど、普段作品に使うような僕の好みのトーンでブランケットが作れたら」と花井さんはすでに想像を膨らませているようだった。

ワシューガル工場では羊毛の初期プロセスから染色、そして仕上げの縫製が手掛けられるほか、単色ソリッドをはじめ縞模様やチェック柄などのシンプルなパターンの織り機が稼働している。羊毛は現在地元オレゴンだけではなく、ワイオミング、カリフォルニア、ニューメキシコといったアメリカの産地と、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカなどから集まってくるとのこと。

それぞれ適した羊毛種が厳選されているが、中にはペンドルトン工場からほど遠くない生産者から買い付ける羊毛で織る「ウマティラ・ファブリック」という名のつくミッドウェイトのウール生地もあり、素材からプロダクトまでの一筋の流れを追える醍醐味となっている。

USメイドのウールブランケット

現在では洋服からホームグッズまでさまざまなプロダクトを作っている〈ペンドルトン〉だが、ウールブランケットに関しては今回訪ねた2つの工場で最初から最後まで手掛けられているという。本社のあるポートランドからコロンビア川沿いに走るフリーウェイを東に移動するとペンドルトンの街に行き着くわけだが、車窓からの風景はどんどん地形が開けていき、抜けの良い景色が目の前に広がっていく。

そこには白人開拓者が根を下ろすずっと前から暮らしていたネイティブアメリカンの人々のコミュニティが今も根強く残り、隣人として毛織物工場の根を下ろした〈ペンドルトン〉社もそこに115年の時を刻んだ。〈ペンドルトン〉のウールシャツが好きで、何枚も着続けているという花井さんが今回描き出すデザインの奥にはきっと、この旅の風景が広がっているに違いない。