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世界中から注目される、メンズ雑誌『l'étiquette』。古着好き編集長3人のパリ7DAYS

世界中から注目されるパリのメンズファッション誌『l'étiquette』の編集長3人は、自他共に認める古着好き。古いものと新しいものをシックなバランスでミックスし、自分だけのスタイルを生み出している。60年代のデニムジャケットに、磨き上げたドレスシューズを合わせたり、彼らの選び抜かれたヴィンテージの着こなしを知りたくて、パリのとある7日間を追いかけた。

photo: Mari Shimmura / coordination: Masae Takanaka / text & edit: Chizuru Ohba

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『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター・バジル・カディリ、『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター・ゴーティエ・ボルサレロ、『l'étiquette』編集長、ジャーナリスト・マーク・ボウジェ
(左)バジル・カディリ/jacket:Teba Jacket shirt:BEIGE Habilleur pants:Deadstock 70s Levi’s® 501 single stitch bag:Brady with Vintage Patches sneakers:Moonstar sunglasses:Jacques Marie Mage イギリスの老舗〈ブレディ〉のトートバッグなど、新品のアイテムは自身が運営する〈BEIGE Habi lleur〉で購入。そのバッグを彩るヴィンテージワッペンは、〈Le Vif〉で見つけてカスタム。

(中)ゴーティエ・ボルサレロ/jacket:Deadstock 30s Black Moleskine t-shirt:Camber pants:Used 30s indigo French work shoes:Alden sunglasses:Jacques Marie Mage watch:Rolex Oyster Perpetual
涼しげなリネン素材をインディゴ染めした1930年代のパンツは、フランスの田舎で愛用されてきた夏のワークウェア。ブラックモレスキン素材のワークジャケットは、30年代のデッドストックだ。

(右)マーク・ボウジェ/coat:Used Burberry Tielocken sweater:Deadstock Ballantyne pants:Used Levi’s® 501 shoes:John Lobb belt:Harpo watch:Rolex Datejust
「〈バーバリー〉のタイロッケンコートは、クリニャンクールで見つけ即決」。フロントボタンの代わりにベルトを金具で留める仕様で、トレンチコートの原型といわれる。たっぷりしたシルエット。

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マーク・ボウジェ(『l'étiquette』編集長、ジャーナリスト)

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マーク・ボウジェ(『l'étiquette』編集長、ジャーナリスト)

『l'étiquette』編集長、ジャーナリスト・マーク・ボウジェ
jacket:Used 80s Anatomica t-shirt:Used “Miles Davis” pants:Used 80s Levi’s® 501 shoes:90s Alden by Anatomica
マイルス・デイヴィスのTシャツ
「時代により、自分の中で流行るものがある!昔は全く着なかった黒が今、気に入っています」。オールブラック・コーディネートに、赤の差し色で。マイルス・デイヴィスのTシャツはポートベロー蚤の市にて購入。

古着をミックスすることで、最良のスタイルが生まれる

コーディネートには、古着を必ず取り入れています(オーダーメイドか、新品で着たいスーツを除けば何でも!)。古着をうまく着こなすには、バランスが大切です。例えば、経年変化の味わいが魅力的なデニムはスタイリングを面白くするのに役立ちますが、コスプレにはならないように。フィット感にも妥協は禁物です。ヴィンテージは美しく、稀少で、我々を夢中にさせますが、もしサイズフィットがうまくいかなければ……、忘れましょう。

自分のスタイルに欠かせない定番の古着は、〈リーバイス®〉のデニムジャケットに、パンツは501、505、517。〈ラッセル〉のラグランスエット、〈ショット〉のレザージャケットなど。とはいえ、私のルールは「特定の服を探さない」こと。決まった何かを探していると、ほかの多くのものを見過ごしてしまうことになる。美しいものにはいつも心を開いていたいのです!

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ゴーティエ・ボルサレロ(『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター)

『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター・ゴーティエ・ボルサレロ
jacket:Vintage 30s French Painter t-shirt:FURSAC pants:Vintage 40s French Army shoes:Alden by Anatomica watch:OMEGA 70s straight writing belt:Harpo sunglasses:Matsuda
1930年代フランスの白いペインタージャケット
腕時計も欠かせない必需品として、コレクションしている。1930年代フランスの白いペインタージャケットは、ヘリンボーンツイルの織り目が美しい。シルエットが抜群の、フレンチミリタリーのワイドパンツと。

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ゴーティエ・ボルサレロ(『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター)

世界のコレクターから集めるフレンチワークスタイル

僕は毎日、80%はヴィンテージの服を着ています。それ以外の20%は、Tシャツ、下着のボクサーパンツ、ソックス、靴、そして特殊な機能性を重視するときのアウターウェアだけ!あとは全部、古くてレアなものばかりです。

古い新しいにかかわらず、着るものを選ぶ際に基準にしているのは“品質”です。もしも、今持っている僕のヴィンテージコレクションと同じか、それ以上によくできた新しいものが見つかればもちろん買います。でもそれはなかなか稀なことで、ほとんどの場合古いものに軍配が上がります。古い服の魅力は、生地の品質、裁断や加工技術の高さ、ディテールの正確さから生まれると思います。

定番の古着アイテムは、フレンチチョアジャケット、フレンチワークワイドパンツ、フレンチミリタリーワイドパンツなど。これらはスタイルに個性をもたらし、ワインのように熟成した深みをもたらしてくれるのです。

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バジル・カディリ(『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター)

『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター・バジル・カディリ
chore jacket:Universal with Vintage Patches t-shirt:Camber pants:Used Levi’s® 505 sneakers:Moonstar sunglasses:Jacques Marie Mage watch:Rolex Daytona
ワッペンを付けたチョアジャケット
カバーオールとも呼ばれる、チョアジャケット(英語のchoreは雑用の意味)に、〈Le Vif〉で1年かけて集めたヴィンテージワッペンを自身でカスタム。自分だけのストーリーを表現する特別な一着になった。

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バジル・カディリ(『l'étiquette』編集長、ファッションディレクター)

古くても新しくても、それが良い服であればいい

私にとって古着の魅力は、第1にとても個性的であるということ。2つ目に、何十年も昔の素晴らしい服には、たくさんの美しい記憶や思い出が宿っていると感じられることです。3つ目は、その古着が特定の地域や、サブカルチャーについて語っている場合も私にとってはとても魅力的です。

例えば、父がモロッコ出身なので、それにちなんでアラブにまつわる古いワッペンを1年ぐらいかけてたくさん集めました。そしてそれを新しいジャケットやバッグにカスタムしたら、世界で一つのアイテムとなりました。私の持っているデニムは、〈リゾルト〉のような日本のブランドのものを除いて、ほとんどすべてがヴィンテージです(ゴーティエ・ボルサレロに感謝!)。

デニムパンツは生地の雰囲気が昔と今では全然違うように、同じ生地やデザインを探そうとしても、新品ではなかなか見つからない。時を超えた特別感が、古着を選ぶ理由です。

3人の御用達、パリ16区にあるヴィンテージショップ