シャツを仕立てることはスーツを作るより難しいといわれているのをご存じだろうか。さらにパジャマを仕立てることができるのはシャツ職人にとって最高のステータスとされている。昨今ではそんなシャツ職人が手がけたパジャマを求め、国内外の老舗シャツ専門店を訪れる人が増え始めている。
銀座に店を構える、143年シャツ一筋の〈大和屋シャツ店〉代表・石川成実さんは「育ちの良さは寝る服でわかる」と話す。創業からシャツ作りと並行して、大きくシルエットも変えずにパジャマを作り続けているのは、顧客への敬意の表れだろう。考えると、今の時代はTシャツやジャージなどを部屋着として活用している人が多いが、外出時の服にはこだわるのに、寝る時の服にこだわらないのは少しナンセンスなように思う。
「シャツ屋のパジャマは型崩れしない。これは縫製の賜物です。さらに良い生地を使っているから干す時にパーンとはらうと、アイロンをかけなくても着られる。世の中では100番手でも十分上質とされていますが、当店では120~180番手の生地を使用しています。シルクのようなものを好む人には高い番手。コシを求める人にはあえて低い番手のものをおすすめします」。
どこにでもある生地では満足できないと話すゆえに、店には約1000種類に及ぶ生地が常備ストックされている。その中には1本の糸が3本のさらに細い糸でできている超稀少生地の330番手のものもある。既製品を購入するのはもちろん、時間こそかかるが好きな生地でオーダーができるのもシャツ専門店ならでは。お直しも対応している。
「パジャマは毎日着るものだから、しっかり仕立てられた長く着られるものでなければならない。ここに来てくださるお客様はそのことに気づいている人だと思います。何より目覚めが良くなったと、皆さんおっしゃってくれますよ」