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不動産の決め手は環境音。レコーディングして聴かせます

住んでしまったらもう遅い。駅近?間取り?家賃?だけでなく“音”も意外と大きな条件なのでは。そこに目をつけた不動産屋さんをご紹介。

Text: Yusuke Nakamura

現在、兵庫県加西市で進行している音の不動産。音にフォーカスし、物件紹介を行うプロジェクトだ。空き家の周辺を録音し物件の環境の魅力を伝える、というちょっと風変わりな提案である。

仕掛けているのは、加西市で住宅のリフォームや設計を行う木立株式会社の伊藤大悟さん。現在、加西市周辺には約1000を超える空き物件があるそうだが、移住者に向け、これまでにない新しい切り口で町と物件のアピールができないか、と考えたことが発端となった。

ローカル鉄道の音と暮らす
物件は兵庫県加西市を走るローカル線、北条鉄道北条線のそば。とはいえ騒音にならない、生活に馴染む音風景に和む。

「物件を決める際に、家賃や駅からの距離、陽当たり、収納スペースなどの条件に加えて、音というのも実は重要ですよね。加西市は音が売りになるのでは?と考えて。というのも、これまで気付いていなかったんですが、違う土地から遊びに来た人に、音が静かで気持ち良い、と言われることが多くて。まぁ、田舎なので森もあるし川もあるわけで」

精度の高いレコーディングをして
住環境を疑似体験してもらいたい

川のせせらぎや鳥や狐の鳴き声など、周辺の自然音を精密なバイノーラルマイクでフィールドレコーディング。実際に、音の不動産のウェブサイトで聴くことができる予定だ。いわく「耳を澄ましてもらえたら。これから自分が住む環境のことを捉え直す機会になるかもしれません」。

音を聴きながら、もしここに住んでみたら……を想像するのも悪くない。むしろ間取りを凝視するよりもリアリティを感じるかもしれない。

音の不動産
ベランダから静かな電車音×ウグイスの鳴き声。耳を澄ませば、ここにしかない音風景がある、そんな提案を行っていく。

今後はサウンド・アーティストが物件の録音に参加するそう。そして一枚の音楽アルバムを制作する計画もある。というのも、伊藤さんは加西市にあるギャラリー〈Void〉も運営し、音楽イベントなどを日々展開。音の不動産事業はギャラリー活動の延長だという。

ギャラリー〈Void〉
ギャラリー〈Void〉ではベトナムの金属楽器ゴング(銅鑼)の演奏ワークショップなども開催。

いうなれば、住環境の音風景をアンビエントミュージックのように捉えることができるのでは?という試み。物件紹介を兼ねた、実験的なアートプロジェクトでもあるのだ。

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