生活と地続きの壮大な冒険。心を癒やしてくれる不思議
幼少期から『スター・ウォーズ』シリーズを繰り返し観ていて、近未来的な雰囲気をSFだと捉えていました。その認識を大きく変えたのが『インターステラー』。時空を超えた旅の果てに、懐かしい原風景に辿り着くところにグッときて。これこそがSFなんだと思い知らされたんです。
『ドラえもん』の映画も同じで、壮大なスケールの冒険が小さな部屋に帰結していく。現実を色濃く描いた作品って、疲れている時は遠ざけてしまうこともあるけど、SFは突飛な設定ながら、最後に日々の生活や心の内面の話に戻ってくるのが心地よい。私にとって“癒やし”になっています。『北の国から』のUFOが登場する回も好きです。
音楽をしていると、超能力を感じる瞬間があります。内に眠る微細な感覚を無意識のうちに呼び起こすことで、音が明確に良くなる瞬間がある。科学的根拠はない話かもしれませんが、そういう自分では説明のつかないことが確かにあって。不思議な能力を使って聴く人々の気持ちや日常に豊かさをもたらすという点で、音楽とSFには通じる部分があるんじゃないかと思います。
折坂悠太が選ぶSF3作品
『インターステラー』
監督:クリストファー・ノーラン/2014年公開/人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため宇宙へと旅立つ男の姿を描く。「家で映画を観終えた直後、窓ガラスに人影が映って消えたんです。あれは未来の自分だったと思っています」
『キャシアン・アンドー』
監督:トニー・ギルロイ/2022年配信/『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ。帝国軍に対抗する反乱軍誕生の物語。「多様な姿のキャラクターが登場しつつ、日常の営みを描いているところが魅力。そうした原点への回帰を感じました」
『Q10』(キュート)
脚本:木皿泉/2010年放送/人生を諦めかけた青年が恋に落ちたのは、学校の理科実験室で眠るロボット・Q10だった。「大人気アイドルだった前田敦子さんを主演に据えながら、非常に異質な物語が展開される。存在自体がSFのような輝きを放つ作品」