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つぶらな瞳とふわっふわの毛並み。なんだこの可愛さは!ミックス犬、“ポメシー”のモコゾウ

見たことがない犬種だけど、とてつもなく可愛い。思わず「この子、何犬ですか?」と聞きたくなることがありませんか?この写真のモコゾウはポメラニアンとシーズーのミックス。ほかのどの犬とも似てない、いい味出してる、オンリーワンなワンコは眼福保証。

初出:BRUTUS No.913『犬がいてよかった。』(2020年4月1日発売)

photo: Shota Matsumoto / text: Izumi Karashima

カルチャー界のスター犬は母性をくすぐる横長顔

どうですか、このつぶらな瞳とミルクキャラメル色のふわっふわの毛並み。とろけるような可愛さではないですか。ポメラニアンとシーズーのミックス犬“ポメシー”のモコゾウ君である。膝の上に置いて日がな一日なでまわしていたくなる存在なのに、どこか人間然としていて、酸いも甘いも噛み分けたおっさんのようにも見えてくるという摩訶不思議。

飼い主は、『レコスケくん』でお馴染みのイラストレーター&漫画家・本秀康さんと、みうらじゅん事務所に勤める臼井良子さん夫妻だ。

佐野美里作の木彫りモコゾウ、片岡メリヤス作のぬいぐるみモコゾウ
クリエイターに大人気。左は佐野美里さん作の木彫りモコゾウ。右は片岡メリヤスさん作のぬいぐるみモコゾウ。

モコゾウを飼い始めたのを機に、臼井さんはモコゾウ専用のインスタを開始。「うちの子自慢」の写真をアップするうちに、アパレルブランドからコラボの話が来たり、雑誌のモデルの依頼が来たり、人気作家による『モコゾウ×アート展』が開催されたりするように。この可愛すぎるミックス犬は何者?飼い主は一体誰?と噂が噂を呼び、いまやSNS界のアイドルワンコに。

「でも、言うほどフォロワー数が多いわけではないんですよ」(本さん)

「本さんが自分の漫画によく登場させているから、というのもあると思う。散歩してたら、小学生の女の子に“あ、モコゾウ君だ!”って言われたんです。ビックリして“なんで知ってるの?”って聞いたら、“漫画に出てた!”って。『レコスケくん』は音楽マニア向けの『レコード・コレクターズ』の連載なので、小学生が知ってるわけないと思ったら、“お父さんがビートルズが好きでね”なんて言ってきて(笑)。すごい観察力だなって」(臼井さん)

ちなみに、モコゾウのお世話は臼井さんが中心だ。朝夕のお散歩にご飯の用意、夜寝るときも一緒だという。結構な“ママっ子”である。

「僕はいつも家で仕事をしているんですが、日中は、モコゾウと離れて自室に籠(こ)もっていて。夕方になるとリビングに移動してモコゾウと一緒にくつろぎますが、もうそろそろ彼女が帰ってくる時間だなってなると、モコゾウはいそいそとドアの前に行って待ってるんです」(本さん)

「そんなことを聞くと泣けてきちゃう!私にいちばん懐くように育てたんですけどね(笑)」(臼井さん)

世界中にこの子だけ。ミックスは「レア感」が魅力

モコゾウと出会ったのは2017年。引っ越して環境が整い、長年の夢だった犬と一緒の暮らしをしたいと、何の気なしに犬の画像をネット検索。ふと目に留まったのが、あるペットショップのウェブに掲載されていたポメシーの仔犬。「モコモコさんです」というコピーとともに紹介されていた。

「直感で、あ、うちの子だ!って思ったんです」と臼井さん。「本さんの描くキャラクターに似た、目鼻口が中心に寄った横長の顔だったからか、この子を見た途端、母性がどわーっとあふれ出てきたんです。この子のお世話をしたい、モコモコの毛を毎日ブラッシングしてあげたいなって」

とはいえ、モコモコさんがいるのは東京からは遠く離れた三重県の店。すぐに会いに行ける距離ではなかった。「仕事のない週末に会いに行こうと思ったんですが、その間に誰かに買われてしまったらどうしようと思うとノイローゼみたいになっちゃって(笑)」。そんな臼井さんを見かねた本さんが三重県へ急行。会った途端、本さんもメロメロに。即「うちの子」に決定した。

「やっぱり、ミックスならではのレア感、天の配分ですよね。この子しかいないと思った彼女の気持ちがよくわかったんです」(本さん)。名前は、『レコスケくん』に登場するキャラクター「レコゾウ」にちなんだ。

メラニアンとシーズーのミックス犬〝ポメシー〞のモコゾウ
ふわふわキープのため毎日ブラッシング。抜け毛はアクロンで洗い天日干しして全部取ってあるそう。

モコゾウと同化したい。本当の親子になりたいんです

モコゾウが家にやってきてからというもの、2人の生活はモコゾウを中心に回るように。早起きが日課となり朝型の生活になったのはいいが、旅行やライブへ行くなど、夫婦揃って一緒に出かけることがほぼなくなったという。モコゾウを独りぼっちにしないためだ。

でもその代わりに、家に誰かが訪れるようになったのはうれしい変化。「それまで、誰も遊びに来ない孤独な家だったんですが、モコゾウ会いたさに友達が来るようになったんです」と臼井さん。

本さんと仲の良いミュージシャンのユザーンさんなどがフラリとやってくることもあるそうで、本さんも「外で友達と会っていても、いつもだったら“じゃあまた”ってなるところを、“ちょっと家に寄ってく?”って」。モコゾウがきっかけで犬を飼うようになり、犬連れで遊びに来る友達もいるという。

そして、夫婦の会話もモコゾウのことが中心に。仕事で地方に泊まるときはLINEのビデオ通話で「お母さんだよ〜」と話しかけながらトークするのだとか。

モコゾウのトレードマークである“オカッパ髪”は、耳が別パーツにならないよう、髪の毛と一体化するようにカットすることで保たれているが、臼井さんは自身の髪形もモコゾウに寄せていっている。

「美容師さんにモコゾウの写真を見せて、こんなふうにしてくださいって。髪形だけじゃなく色も同じにしたくてメッシュも入れて。美容師さんも“こんな依頼は初めてだ”って驚いてました(笑)。本当は早くオール白髪になりたいんです」。そう臼井さんの切なる願いは「モコゾウと同化する」こと。「本当の親子に、本当のお母さんになりたいんです(笑)」

メラニアンとシーズーのミックス犬〝ポメシー〞のモコゾウ、臼井良子