沖縄の言葉でやきものを表す“やちむん”を中心に、伝統的な染め物の紅型(びんがた)や貴重な金細工、ガラス工芸に琉球玩具など、沖縄の手仕事を紹介する人気イベントが新宿BEAMS JAPAN5階の〈fennica〉で開催される。
特に陶器は、やちむん人気をリードする〈北窯〉から、開窯して1~2年のフレッシュな作り手まで9組の作品が揃うとあって、うつわ好きからも注目されている。
イベントを主催するのは「デザインとクラフトの橋渡し」をテーマに、世界中の生活雑貨や洋服を扱う〈fennica(フェニカ)〉。2003年にBEAMSが立ち上げ、今ではすっかりおなじみになった民藝の魅力や北欧モダンデザインの良さを、いちはやく紹介してきたレーベルだ。
fennicaの特徴は、ものの美しさや使い勝手のみならず、その背景にある歴史や作者の想いも伝えていること。今回も作り手自身が在店する日を設けるなど、ものの紹介だけに終わらない仕掛けが考えられている。
やちむん人気のカリスマ、読谷村〈北窯〉の作品も
うつわ好きの間でカリスマ的人気を誇る〈北窯〉からは、松田米司、松田共司のやちむんが到着。やちむんのルーツは、かつて海外との交易で栄えた琉球王国にある。その色彩豊かな焼きものは、昭和初期に沖縄を訪れた民藝運動の立役者、濱田庄司や柳宗悦らの目にとまり、おおらかで丈夫な日用のうつわとして広く紹介された。
そんな沖縄の読谷村で1992年に開窯したのが〈北窯〉。松田らを含む創設メンバー4人の工房は、長く受け継がれてきた技法や形や地域色を守りつつ、共同の登り窯でうつわを焼いている。彼らの皿やマカイが愛されるのは、個々の人柄や腕のよさ、あるいは古の陶器や芸術への興味とがじんわり滲んでいるからだ。
個性豊かな作り手たちと話すチャンスも
期間中はやちむんの陶工や金細工の職人が在店する日もある。作り手と直接ことばを交わし、ものづくりの背景や使い方を聞けるのは、とても楽しく豊かな体験だろう。
たとえば名護市にアトリエを構える〈室生窯〉。陶工の谷口室生はやちむんのレジェンド山田真萬に師事した実力派だ。大胆で鮮やかな伝統の絵付けを、今の食卓に合うモダンな雰囲気に仕上げている。
料理が映えると人気なのは、南城市にある〈こだま土〉のやちむんだ。陶工の荏原麻理は〈北窯〉の宮城工房で修業した後に独立。沖縄の赤土を使い、アフリカの民族的な柄やカルチャーからインスピレーションを得たうつわを作っている。素朴で力強い皿やフリーカップは、色鮮やかな野菜料理やエスニック料理とも相性がいい。
ほかにも、2021年に自分たちの手で登り窯を完成させた〈田村窯〉や、大宜味村に登り窯を構える〈陶藝玉城〉、人間国宝の故・金城次郎が開いた窯で宮城須美子に師事した〈江口窯〉の江口聡らが2月16日~18日に在店予定だ。
さらに〈fennica〉では初のお披露目となる作り手も楽しみのひとつ。2023年に開窯したばかりの〈いずみ窯 島袋工房〉と、2022年に薪窯を築窯した〈神谷窯〉は、今回のイベントのために多くのうつわを制作した。
金細工、紅型、琉球玩具。沖縄の手仕事は奥深い!
『OKINAWAN MARKET 2024』では、やちむん以外の手仕事も数多く並ぶ。まず注目すべきは金細工。沖縄の言葉で金属工芸を意味する“カンゼーク”と発音する。かつては首里王城の周辺を中心に栄えたが、職人が減ってしまったものや、途絶えてしまった技術もある。
今回参加する〈金細工まつ〉は、金細工の中でもきわめて貴重な「琉球錫工芸」の研究・復元制作も続ける工房だ。作り手の上原俊展は18日と19日に在店予定。貴重な話が聞けるかも!
一方、銀の板を丹念に打ちのばして装身具を作るのは、〈金細工またよし〉の又吉健次郎と弟子の宮城奈津子。500年以上前の職人技を受け継ぎながら、琉球王朝の貴族たちに愛された結び指輪やジーファー(かんざし)などを手がけている。
また、庶民のおもちゃとして愛され続けてきた琉球玩具も登場。琉球玩具とは、張り子の動物や粘土人形など昔からある沖縄の手作り玩具のこと。〈琉球玩具製作所 こくら〉の中村真理子は、琉球玩具の第一人者である祖父・古倉保文の跡を継ぎ、昔ながらの手仕事で多くのファンを楽しませている。
続々登場する新たな作り手によって進化し続けるやちむんから、伝統技術を次世代へとつなぐ金細工まで、沖縄の手仕事と作り手に出会えるまたとない機会。価格が手ごろなものも多く、人気職人のアイテムは売り切れ必至。お早めに!