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ラムダン・トゥアミの波乱の人生が結実した、最高傑作〈BULY〉とは?

実業家ラムダン・トゥアミが成功に導いた〈OFFICINE UNIVERSELLE BULY〉の名品を、改めて振り返りたい。

本記事は、BRUTUS「センスがいい仕事って?」(2025年2月15日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

text: Shoko Yoshida / edit: Tamio Ogasawara

2012年、ある仕事でフランスの生産復興大臣と会ったラムダン氏は、“あなたはバルザックの小説に登場するセザール・ビロトーみたいだ”と告げられた。ビロトーは出世後に転落し、悲劇的な死を遂げる香料商。

「全然嬉しくない譬(たと)えでしたが、モデルとされる〈ビュリー〉の創始者、ジャン=ヴァンサン・ビュリーを知ったことが、私にフランスの伝統的な美容製品を蘇らせる運命を開いたのです」。

幼少期に眺めていた両親が仕えたお屋敷、母親が塗ってくれた自然由来のオイル、貴族出身の妻の可憐な仕草……。人生で見てきた美しい記憶を、プロダクトやブティック、販売員すべてに落とし込み〈オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー〉を作った。

「これまでで最もうまくいった誇れる仕事です。ただ、今の私は食事も睡眠も運動も規則正しい生活をしているので、使うのは石鹸だけで十分。でも、それができていない人には〈ビュリー〉の美容製品をお薦めしますよ(笑)」

EAU TRIPLE TUBÉREUSE DU MEXIQUE

フランス人が大好きな白い花の水性香水

EAU TRIPLE TUBÉREUSE DU MEXIQUE

アルコールベースではなく、水と香料を使った珍しい水性香水「オー・トリプル」。調和のとれた新鮮な香りで、肌にも優しい。世界を旅した記憶を基に、自然由来の原料で全16種類をラムダン氏自ら調香。人気は「チュベローズ・デュ・メキシク」。白い花の女王、チュベローズの香りだ。23,210円(オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー TEL:0120-09-1803、以下同)

PINCEAU FLEUR

伝統と職人技が織り成すフェイスブラシ

PINCEAU FLEUR

世界各国の美容アイテムもセンスよくセレクトしている〈ビュリー〉。東京・神楽坂に暮らしたこともあるくらい日本贔屓(びいき)のラムダン氏らしく、日本の職人が作ったフェイスパウダー&チーク用のブラシも販売。ソフトなヤギ毛を使用し、触り心地は極上。咲きたての花のようなデザインは、日本の伝統芸能“歌舞伎”から着想を得たもので、かわいらしく色とりどり。各5,016円。

ALLUMETTES ODORIFÉRANTES RETOUR D’EGYPTE

火を灯せば、香りも漂うフレグランスマッチ

ALLUMETTES ODORIFÉRANTES 
RETOUR D’EGYPTE

素早い消臭効果があり、かつては化粧室の香りづけに使用されてきたマッチ。ならば、マッチ自体をフレグランスにと、心棒を香液に浸して作った「アリュメット・パルフュメ」。しばらく灯した火を消せば、煙がほんのりと香ってくる。こちらの香りは、ジャスミン、アンバー、ムスク、ローズを基調にした「ルトゥール・デジプト」。ありふれたものでも普通には作らない。2,860円。

BOUTIQUES

一つとして同じデザインのないブティック

BOUTIQUES

フランスや日本をはじめ、世界10ヵ国以上に約60店舗を展開。それぞれのブティックは、フランスの伝統を生かしつつ、「一貫性のない統一感」をもって全く別のデザインに。ヴェルサイユ宮殿の修復を手がけた装飾画家によるサインペインティングや、装飾史の専門家によって作られた木製什器(じゅうき)など、職人の技が光る。写真は、2014年にパリ左岸のボナパルト通りにオープンした1号店。

SAVON SUPERFIN HÉLIOTROPE DU PÉROU

パリの宮殿ホテルでも使われる中性石鹸

SAVON SUPERFIN 
HÉLIOTROPE DU PÉROU

ラムダン氏が毎日、頭から爪先まで全身を洗っている石鹸「サヴォン・スゥペールファン」。洗浄後のツッパリ感はなく、バスルームもよき香りに包まれる。ヘリオトロープという花の香り「ヘリオトロープ・デュ・ペルー」は、パリの最高級ホテル〈オテル・ド・クリヨン〉のアメニティでも使われているとか。石鹸中央にモノグラムやイニシャルの刻印も可(別途660円)。5,170円。

POMMADE CONCRÈTE

自立するハンドクリーム

POMMADE CONCRÈTE

東京・青山の路面店に掲げられたサインにも使われ、〈ビュリー〉きっての人気商品でもあるハンド&フットクリーム「ポマード・コンクレット」。無香料なので誰でも使いやすく、シアバターとミツロウがリッチに配合されているので、肌はたちまち乾燥知らずに。蛇口のハンドルのようなキャップ「ロビネ・キャップ」(1,100円)を付ければ、もう倒れない。5,830円。

COMMIS DE BOUTIQUE

レジ係にとどまらない、高スキルな販売員

COMMIS DE BOUTIQUE

店を構えることを大切にするラムダン氏は、「お客さんと対面する販売員こそが最も重要であり、尊敬に値する存在でなければならない」と説く。多様な知識と専門的スキルを再考し、すべての販売員はラッピングに施されるカリグラフィや日本の折り紙技法での包装術を身につける。ユニフォームは、見るからに品のいい白ブラウスにハイゲージニットとプリーツスカートで。

LE CONCILIANT

例えば、座右の銘を刻印できるヘアコーム

LE CONCILIANT

ウィッグ下の寂しそうな髪や、もりもりとしたアフロヘアまで、髪質やヘアスタイルに合わせて、形違いで約50種類展開されるコーム。髭用やアイブロウ用といったベビーサイズもご用意。植物由来のアセテート素材で作られており、ヨーロッパに唯一残るスイスの工房等で一つ一つハンドメイド。黒、白、濃緑、マルチカラーの4色があり、最大15字まで刻印可(770円均一)。3,000円〜。

HUILE ANTIQUE LICHEN D’ÉCOSSE

香水のようなボディオイル

HUILE ANTIQUE 
LICHEN D’ÉCOSSE

1834年に、ジャン=ヴァンサン・ビュリーが古代ギリシャの美容法や様々な温泉療法からインスパイアされて作ったオイルを、現代的な製品に生まれ変わらせた「ユイル・アンティーク」。3種類の天然オイルで肌にハリとツヤがもたらされ、香りも楽しめる。こちらは、苔、ガルバナム、パチュリを合わせたグリーンな香り「リケン・デコス」。お出かけ前の香水代わりにも。7,260円。

L’HERBIER ODORIFÉRANT DE L’OFFICINE UNIVERSELLE BULY

菜園の香りが本当にする植物図鑑

L’HERBIER ODORIFÉRANT DE 
L’OFFICINE UNIVERSELLE BULY

野菜やハーブの香りを施したフレグランスコレクション「レ・ジャルダン・フランセ」に合わせて作られた『オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの香りの植物図鑑』。単なる標本ではなく、植物研究家の繊細な心遣いや仕草、ノスタルジックな旅の記憶などを記している。驚くべきは野菜やハーブの挿絵を指でこすると、それぞれの香りが現れること。嗅覚で感じる図鑑だ。7,920円。

SAC SHOPPING

喜ばれ、驚かれるオリジナルショッパー

SAC SHOPPING

パリ郊外のサン・ドニにある活版印刷工場)で一枚ずつ印刷され、世界各国の店舗に送られてくるオリジナルショッパー。贈り物のパッケージにも気を配る日本文化に影響された豪華なデザインで、店舗で購入した商品はサイズに合わせて、必ずこのショッパーで手渡される。自分用はもちろん、ギフトにはこれ以上ないほどの美しさ。オンラインでは330円(全4サイズ)で販売も。

BAUME DES MUSES

持っているだけで心も潤うリップバーム

BAUME DES MUSES

昔ながらの化粧箱を模した、手のひらサイズのアンティーク調リップバーム「ボーム・デ・ミューズ」。植物由来の原料で唇を優しくケアしてくれて、すべて無色・無香料。ケースは9色から選べ、イニシャルやハートを無料で刻印できる表面のレザー調ペーパーは、20色ほどからカスタマイズ。ケースの内側には鏡が張り込まれ、カラフルなポーチも付く。贈り物にも最適。各6,490円。

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