ドキッ!尖った大きな歯に体長3m近いシロワニと目が合う。水槽内を悠然と泳ぐ巨大なシロワニはシンボル的存在だ。サメの飼育日本一を誇る〈アクアワールド茨城県大洗水族館〉は近海の身近なサメから珍しい種まで、56種類を飼育し、49種類を展示する。ここまでサメに特化した水族館はほかにない。始まりは22年前、前身の大洗水族館から総合水族館へとリニューアルした際だったという。
「水族館が面する茨城県沖の太平洋は親潮と黒潮が出合う潮目で、様々な種類のサメが集まってくるのです」と魚類展示課でサメを担当する徳永幸太郎さん。
その中でも世界から注目されているのが、やはりシロワニ。2021年に国内初、飼育下で仔ザメが誕生したのだ。サメは卵生、胎生(仔ザメで生まれるもの)と、その生まれ方が細かく分かれ、驚くほど違いがある。「シロワニの仔はお腹の中で1年以上を過ごし、1mほどに育って出産されます。母親の子宮内で複数の仔が育ち、先に成長した仔がほかの胎仔を食べる共食い型。とても珍しい繁殖様式です」
繁殖も出産もまだまだ解明されておらず、苦労しかなかったそう。しかし小笠原諸島に生息する野生のシロワニの調査で発見があった。「水の澱んだ洞穴や水温が激しく変わる、ダイナミックな環境に暮らしていました。水温の変化をできるだけ自然に近づけたのです」
最近ではトラフザメが産んだ仔がメスだけで卵を産む単為生殖であったと判明し、国内初展示するなど水族館でしかできないニュースも多い。繁殖は稀少な生物を野生から採集せずに飼育、研究でき、保全につながるのだ。
ここは来場者数が年間100万人を超える大型の水族館である。館内60の水槽のうち、サメと名前のついた水槽は一部で、サメの多さに気づかない人もいるだろう。しかしサメはいろいろな場所に。
「サメを探しながらじっくり館内を巡ってみてください。エントランスからすぐ、茨城の海を表現する〈海藻の海〉水槽に半分砂に埋まったカスザメが、茨城の海を再現した〈出会いの海の大水槽〉には地元で見られるホシザメ、ドチザメ、ネコザメたち、深海の水槽の中にもサメがいます」
またエパウレットシャークのユニークな形をした卵やその中で動く胎仔、生まれた仔ザメを展示するコーナー、タッチプールにカフェのフードメニュー、出口近くの超巨大なウバザメの標本も見逃せない。最初から最後まで、サメ欲が存分に満たされる水族館なのだ。