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インテリアデザイナー夫婦の一軒家。白い色で視覚をリセットし、 休暇小屋のような安らぎを



次から次へとモノを見続けているデザイナーだからこそ、安心できる我が家は白いキャンバスのような住空間に。必要なものは自分たちで制作するというフィッツュー・キャロルさん、リンゼイ・カレオさんに、NYにつくった居心地のよい住処について聞いた。

photo: Yoko Takahashi / text: Mika Yoshida / coordination: David G.Imper / edit: Kazumi Yamamoto

欲しいものがあれば、自分で作る。
それを家訓に育ちました

購入の決め手は、裏庭に生えていた桜の木だったという。2007年に美大を卒業し、NYにやってきたフィッツューとリンゼイが出会った一軒の家。住宅街パークスロープに多い、昔ながらのブラウンストーン建築だ。色も素材も重々しくて閉塞感を覚えたが、建物の裏で伸びている木を見てひらめいた。「この木を主軸に据えた家を造りたい!と思ったんです」とフィッツュー。

裏庭に面した壁はすべて取り払い、ガラス窓を大きく取った白い壁を設置する。住む人の視線が木へと伸びる家。建物全体もリノベして、明るく軽やかな空間に造り替えた。壁や床、天井が真っ白なのはなぜ?「デザイナーの私たちは、仕事で毎日次から次へとモノを見続けていて、視覚的に飽和状態。家に戻った時にはすべて白紙に戻したくて」とリンゼイが説明する。

白いキャンバスのような住空間に、ウッドの家具やオブジェたち。これらは木工作家フィッツューが自作したものだ。リンゼイが愉快そうに続ける。「私はNY州北部ロチェスターの出身。父親の口癖は“必要なものは自分で作り出しなさい”。ニューハンプシャー州で育ったフィッツューも同じことを言われてきたそうです」

ちなみに影響を受けた人物は?と訊くと、建築家でデザイナーのアルネ・ヤコブセン、現代彫刻の旗手デヴィッド・スミスや、米国現代陶芸の先駆者トシコ・タカエズ、そして建築家スティーヴン・ホールの名を挙げた。そういえばこの家の窓。ホールがカンザス・シティで設計したネルソン・アトキンス美術館の、半透明に輝く巨大なガラスの壁をどこか彷彿とさせる。

白くモダンなこのブルックリンの家で、インテリアのポイントに使ったのが、ニューイングランド地方の納屋から運んだ「引き戸」。開拓の国アメリカのDIY精神と、これまで培ったデザイン素養、そして2人の原点とが楽しく融合する家だ。