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小説入門。『群像』編集長・戸井武史さんが小説に求めることは

自分らしい 表現・発信をはじめる。言うまでもなく、文章や写真や動画などの制作物を世の中に発表することのハードルは、近年ますます下がっている。しかし、何をどう作ればいいか、迷うのは変わらない。時代に即した、表現活動のはじめ方を聞いた。

photo: Kaori Oouchi / text: Yoko Hasada / edit: Emi Fukushima

教えてくれた人:戸井武史(『群像』編集長)

小説執筆をはじめるには?

長くエンタメ小説を担当し、現在は純文学と評論の硬軟織り交ぜた誌面で様々な作品を届ける、文芸誌『群像』編集長の戸井武史さん。「書きはじめるきっかけは“自分”にしかないのでは」と戸井さんは口を開いた。

「新人作家にいつも尋ねるのは、何を書きたいのか。書きはじめるには、自分のことを突き詰めて考え続けるしかないと思います。同時に、すでに書かれている可能性も考えなければいけない。

他者を知り、書くヒントを得るために文学の最前線である文芸誌を読むことはおすすめです。特に今、多くの文芸誌が変化してきていて面白い。

私たちも異業種の書き手をミックスして視点が広がりました。まずは目次を読むだけでもいいんです。
リードやタイトルから思考が膨らみますし、気になる作品があれば読んだり書き出しをメモしたり、そういう積み重ねは自分を知ることに繋がるはずです」

新人賞も公募する雑誌編集者として、戸井さんが小説に求めることは。

「作家自身も“わからないこと”を書いてほしい。模索する過程は広がりのある面白い作品に着地する気がします。グリコ・森永事件をモチーフとした『罪の声』は、塩田武士さんが10年以上温めた題材。

過去の担当編集全員がゲラを読み、全く違う指摘をしたのに、指摘を起点にして想像を超える作品に書き上げました。考え続けた成果です。

また伝えることも意識してほしい。自分に向けた問いでも、不特定な他者を想像する。伊藤潤一郎さんが弊誌で書いた、海に放たれた手紙の宛先“誰でもよいあなた”という感覚は、小説にも必要だと思います」

文芸誌『群像』
全作品さらえるようにした蛇腹の目次。

併せて読みたい!
この一冊。