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これ、知ってる?DJ・NOTOYAが選ぶ、歌謡曲の隠れた名盤9枚

ヒット曲だけが歌謡曲ではない!DJ・NOTOYAが選ぶ、ハズレなしの隠れた名盤9枚。気に入る曲があったら、ぜひ誰かに「これ、知ってる?」。

photo: Natsumi Kakuto / text: Masae Wako

こんな曲も歌ってました
あの人の隠れ名曲

「フュージョンを歌う森進一さんや、ニューウェーブで攻めてる武田鉄矢さん。演歌やフォークの大御所が大ヒットを飛ばした後に作った“プライベートな趣味全開の企画アルバム”には、隠れ名曲が多いんです。普段とのギャップが新鮮で誰かに聴かせたくなる」

このファンキーなシャウトが石川さゆり⁉聴かせた相手のそんな反応も楽しいと語るのは、和製ブギーブームの火つけ役でもあるDJ、NOTOYAさん。

「例えば『長崎は今日も雨だった』(1969年)の内山田洋とクール・ファイブ。彼らの企画盤には、アース・ウィンド&ファイアーばりにグルーヴィなディスコソウルが収録されています。“本当はこういう曲も好きなんだろうな”と、表には出てない音楽性を垣間見られる。売れるかどうかより音楽家としてやりたいことに熱中している感じがたまりません」

特に今回の9組は歌も演奏もずば抜けてうまいうえ、制作陣やバックミュージシャンもみな一流。「歌い手を知らずに聴いても純粋にカッコいいし、知ればなおさら感動する。大御所たちのクオリティと懐の深さを、改めて感じます」

「ホワット ドゥ アイ ドゥ」森山良子、「BOY(ボーイ)」欧陽菲菲、「武門拳精」海援隊、「函館のマリー」森 進一、「ブラッド、スウェット 
& ティアーズ」かまやつひろし、「バイブレーションTYO」石川さゆり、「私は行ってしまう」由紀さおり、「明日への招待」内山田洋とクール・ファイブ、「Very cold day(氷の世界)」坂本 九

「ホワット ドゥ アイ ドゥ」森山良子

「歌い出しからガッと持っていかれる、キラキラの王道シティポップ。フォークの印象が強い森山さんですが、どこまでも澄んだ高音で歌い上げるポップスには痺れます。DJでも盛り上がる曲」。ブラジリアンボッサやソウルにも挑んだ『輪舞』収録。

作詞:山上路夫/作曲:鈴木キサブロー/編曲:萩田光雄。1979年。

「BOY(ボーイ)」欧陽菲菲

ミラーボールと“フゥーフゥー”が似合うブギーな一曲は、「ラヴ・イズ・オーヴァー」(1979年)のヒット中に出たアルバム『星影のバラード』より。「林哲司さん作曲の王道ディスコ歌謡。洋楽ヒットチューンに元ネタがありそうですが、シティポップ感もあって無条件にカッコいい」。

作詞:山川啓介/作曲:林哲司/編曲:山下正。1981年。

「武門拳精」海援隊

「80年代風ニューウェーブに武田鉄矢さんの好きなカンフー要素も入ったイントロがクール。映画のテーマミュージックみたいにその先の展開を期待させます。DJでかけたい一枚」。「贈る言葉」(1979年)など人間くささも人気だった海援隊が、ポップな音に挑んだ『ようやく解りかけてきた』より。

作詞:武田鉄矢/作曲:千葉和臣/1982年。

「函館のマリー」森 進一

サンバでお馴染みのアゴゴベルで始まるフュージョン風のイントロが白眉。「小気味いいベースと洒落たストリングスに浸っていると、あの溜めに溜めた森さん節がなだれ込んでくる。最高です。ジャケットも都会的」。阿久悠が企画構成した『一番短い小説・男と女がいた』より。

作詞:阿久悠/作曲:荒木とよひさ/編曲:矢野立美。1980年。

「ブラッド、スウェット & ティアーズ」かまやつひろし

「1音目から衝撃を食らうカッコよさ。シティボーイらしい粋で優しい感じが、声にもシャウトにも表れています」。〈トリオ・レコード〉というインディーレーベル時代の『スタジオ・ムッシュ』に収録。「DJ界隈ではお宝的な存在。ムッシュの最高傑作です」。

作詞・作曲:かまやつひろし/編曲:森村献。1979年。

「バイブレーションTYO」石川さゆり

石川さゆり主演ミュージカル『今竹取物語~ヒカル翔んで行く~』の劇伴2枚組。全曲を「津軽海峡・冬景色」(19
77年)の作家陣が手がけた。「めちゃくちゃファンキーなソウル歌謡。しかもキャンディーズのようなアイドルポップス系の歌い方です。ほかにサイケな曲も」。

作詞:阿久悠/作曲:三木たかし。1978年。

「私は行ってしまう」由紀さおり

「スティーヴィー・ワンダー風のエモーショナルな曲を歌う声が、女神そのもの。神々しくてクラブでかかったら泣いてしまう」。フュージョン界のレジェンド・深町純など豪華作家陣が参加する『ルーム・ライト―オリジナル・ア・ラ・カルト』より。オフコースがバックコーラスを務める曲も。

作詞:白石ありす/作曲・編曲:深町純。1973年。

「明日への招待」内山田洋とクール・ファイブ

収録の『12色の水彩画』は実力派コーラスグループのデビュー10周年企画盤。「1曲目が最強。前川清さんが歌い上げるソロで始まり、派手なホーンセクションが入って一気に壮大なファンクへ。超絶うまいコーラスが、演歌とは違う形で発揮されまくってます」。

作詞:千家和也、内山田洋/作曲:内山田洋/編曲:宮本悦朗、あかのたちお。1978年。

「Very cold day(氷の世界)」坂本 九

「SUKIYAKI」で海外でも人気の坂本九が渡米。現地のカントリーミュージシャンと作った意欲作。井上陽水やチューリップなど当時の若手の曲をカバー。「出色は『氷の世界』。荘厳なストリングスと、“庶民派・九ちゃん”の色を消した歌い方がすごい」。『ターニング・ポイント』収録。

作詞・作曲:井上陽水。1975年。