ノルウェーに建設された最も高価なスパ施設
本誌でさらりとご紹介したノルウェーのスパリゾート施設〈ザ ウェル スパ&ホテル〉(本誌:P64)について、まだまだ語り尽くせなかったところがあるので、ここでじっくり解説しよう。
ノルウェーの首都オスロのダウンタウンから南へ13km、アーケシュフース郡オッペゴールド自治体のコルボトンに位置し、ノルウェーに建設された最も高価なスパ施設である〈ザ ウェル スパ&ホテル〉。当初の計画予算は1億5000万ノルウェークローネ(約29億円)だっが、最終的には2億7500万ノルウェークローネ以上(約53億円〜)を投じて完成した。
建築家は1974年にノルウェーのドランメンで設立され、北欧、南米、南米を含む世界各地に拠点を持つ、世界的なアーキテクトの集団「Halvorsen & Reine Arkitekter AS」が担当。実際にとても美しい建築で、建築マニアならずとも一度は訪れるべき施設だ。
内装と外装の照明は、ノルウェーの「ÅF Lighting」がデザイン。2016年11月、ÅF Lightingは〈ザ ウェル スパ&ホテル〉のインテリア照明デザインで、ノルウェーの照明賞「ベスト・インテリア照明賞」を受賞している。
3階建てのホテル付きの建物には、洞窟シャワー、日本庭園、トルコ式ハマム、ジャングルサウナなど、多種多彩な風呂文化を一つ屋根の下にミックスしている。この施設をつくるにあたってオーナーは日本の温泉文化に強い影響を受けたそうで、温泉や日本庭園を見られるサウナと一緒に、テレビを見ることができるサウナもあった。日本がフィンランドを真似てどんどんサウナからテレビを追い出しているのとは逆に、テレビ付きのサウナをつくっているのが面白いところ。
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そもそもこの施設を知ったキッカケは普通のネット検索。ノルウェー最大のサウナを探していたら、まさかのスカンジナビア半島一大きなサウナ施設を見つけてしまったという流れがあります。それでも日本ではまだ一度も紹介されたことがないそうで、まだまだ世界は広く、サウナも奥が深いことを思い知らされる。
これまで相当な数のサウナを回ってきた自負があるが「いままで回った施設で一番豪華な施設はどこですか?」という質問に答えるとしたら、真っ先に〈ザ ウェル スパ&ホテル〉と答えるほど。それくらい印象に残る、素晴らしい施設なのだ。
今回〈ザ ウェル スパ&ホテル〉について、私たちの素朴な疑問を、広報のリネ・ホイネス・オルセンがメールインタビューに答えてくれた。
〈ザ ウェル スパ&ホテル〉の全貌を知るためのQ&A
1. 施設はいつからあるのですか?
ザ ウェル スパ&ホテル
2015年12月5日に初めてスパの扉を開けました。それから約6年後の2021年には、スパと直通のホテルをオープンし、お客様にウェルネス体験を広げる機会を提供しています。
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2.どのようなお客様が来店され、地域社会でどのような役割を担っているのでしょうか?
ザ ウェル スパ&ホテル
〈ザ ウェル スパ&ホテル〉では毎日、あらゆる年齢層のお客様をお迎えしています。私たちの施設では、日常生活から抜け出していただき、世界中の素晴らしいスパ体験ができる社交的な出会いの場となっています。

3.オーナーはどなたで、どのような理念でこの施設を建設されたのでしょうか?
ザ ウェル スパ&ホテル
オーナーの名前はスタイン・エリック・ハーゲンと言い、スパと健康を促進するウェルビーイングへの情熱によって〈ザ ウェル スパ&ホテル〉は設立されました。オーナー自身が世界中のお気に入りのスパから魅力を厳選し、ここノルウェーに集結させました。
フィンランドのサウナや日本の温泉、トルコのハマム、モロッコのラスールクレイなどです。〈ザ ウェル スパ&ホテル〉は一味違った田舎の隠れ家です。
オスロから約13キロメートル離れた森の中にあるこのスパは、ノルウェーで最も印象的なスパの一つで、11のプール、サウナ、シャワー、スチームバスがあり、ホテルとレストランも併設されています。
ノルウェーの大富豪スタイン・エリック・ハーゲンは、スパ文化を祖国にもたらすというビジョンを持って、6年前に〈ザ ウェル スパ&ホテル〉を設立しました。
「私は若い頃、薪で焚く原始的なノルウェーのサウナを楽しんだ後、渓流や凍てつくフィヨルドで冷たい水につかるのが好きでした」
そうスタインは話しています。それ以来、世界各地でサウナや蒸し風呂を体験し、「熱さと冷たさの組み合わせは、体に活力を与えてくれる」と確信しています。
〈ザ ウェル スパ&ホテル〉は、エリート主義ではなく、平等主義を目指しています。
携帯電話の使用は禁止されており、ヌードも推奨されていますが、強制ではありません。ジェットバスでくつろいだり、プールからプールへ飛び移ったり、あらゆる年齢層のゲストがいます。
爽快なアウフグースの儀式に参加することができます。サウナマスターは、エッセンシャルオイルを含んだ氷の塊(キューゲル)でロウリュし、タオルを使いながら、優雅に熱い蒸気をアウフグースします。

4. この施設の特徴やこだわり、つくる上で大切にしたことは何ですか?
この施設は、特にローマ時代の水と熱と冷気を使った入浴の伝統と、社交場としてのスパをベースにしています。お客様には、コミュニティーの感覚を強めながら、同時に集団で新しいことを経験するような、さまざまなウェルネス体験をしていただきたいと考えています。
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5. あなたの国のサウナ文化についてどう思われますか?
ザ ウェル スパ&ホテル
ノルウェーのサウナ文化は古くからあり、フィンランドのサウナ文化と混同されることがよくあります。共通のルーツがあるため、似通った点も当然あるのです。
近年、サウナブームの波が押し寄せ、健康増進の面でも注目されているのですが、新しいサウナ施設も国内に次々と誕生しています。私たちにとってこのブームは追い風です。というのも〈ザ ウェル スパ&ホテル〉はノルウェーで最大のサウナ施設だからです。
6. お気に入りのサウナ施設や思い出のサウナ施設があれば教えてください。
ザ ウェル スパ&ホテル
イタリアにある〈QC Termemilano〉の見学に行ったことがあります。そこには、伝統的なサウナに似た、高い壁のあるクラシックなサウナがありました。古代ローマ人がどのようにサウナを利用していたかを体験することは、エキサイティングな経験でした。
私は、どの国のサウナ文化も大好きです。ドイツのアウフグースなど、飽きることがありません。私の永遠のお気に入りは、やはり私が育ったのと同じ、フィンランドの伝統的なサウナでしょう。
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7. 施設の規模、1日の来場者数について教えてください。
〈ザ ウェル スパ&ホテル〉は10,500平方メートルの広さがあり、北欧では最大のスパです。平日は約300人/日、週末はその2倍ほどのお客様がいらっしゃいます。
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8. あなたにとってサウナとは何ですか?
ザ ウェル スパ&ホテル
私にとってのサウナは、我々の日頃の生活の一部であると同時に、人間関係のしがらみなど、あらゆるものから逃れることのできる自由な場所です。ストレス解消の場であり、慌ただしい日常生活の中でバランスと落ち着きを見つける機会でもあります。すべてのものを捨て、少しの間、自分の内側に集中できるところが気に入っています。
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