性差を超えて、さかなクンになりきれた。現場マジックとは
「すごく面白そう! と思いました。最初はびっくりしましたけど、冷静に考えたら自分でも腑に落ちました(笑)。さかなクンの、“好き”を追い求めるパワーやほかが見えなくなる猪突猛進さ、みんなを驚かせるのが好きないたずらっ子なところにシンパシーを感じています」
「作品を観ていて“この役やりたいな”と思うのが、男の人のことが多いんです。『アイアンマン』とか『ピンポン』とか(笑)。どこか子供っぽい面のある役を見るとやりたくなる。だから、今回のさかなクンがモデルのミー坊役はめちゃくちゃ嬉しかったです」
天才肌の感覚派のように見えるのんさんだが、監督と対話を重ね、演出意図を理解してからでないと演技できないタイプ。『さかなのこ』では、本読みの時に目にした沖田監督直筆の貼り紙でその意図を一瞬で理解した。
「“男か女かはどっちでもいい”と書かれていたんです。ただお魚好きのミー坊(役名)を演じればいいとわかって、心強かったです」
1ミリの迷いもなく存在しているせいだろうか、劇中ののんさんの学ラン姿は、驚くほど違和感がなかった。
「現場での沖田監督は、私がのんということを忘れて、ミー坊としか見てない(笑)。すごい没入感と集中力でした。“映画の子がここにいる!”と思いました」
シンプルに好きなことに没頭する多幸感
今回はフィルムで撮影。モニターではなく実際の演技を見たいと、監督はカメラ横で笑いをこらえながら見ていたらしい。
「監督の笑い声が音声に入ってしまうというのが沖田組の名物らしいです(笑)。腕で口を押さえて肩を震わせながら見ているんです。自分の思い描いたことが実現していると思うと笑いが止まらなくなるらしくて。監督のそんなリアクションを見ながらお芝居するのは、キャストとして最高の気分でした!」
のんさんは俳優のほかに創作あーちすととして、映画や音楽、アート制作など幅広く活躍。表現の源は怒りのことが多いという。
「怒りは、笑ったり泣いたりするのと同じ、フランクなものと捉えていて、私のお気に入りの感情なんです。長いものを作る時は、楽しい気持ちがあった方がアイデアは湧きますが、怒りや悔しさをガソリンに、ポジティブに変換してものを作ることが多いですね」
自身は何の子だと思うかと問うと「演技の子です!」と元気いっぱいに即答した。