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韓国の観客動員数1000万人超で社会現象に。映画『犯罪都市 NO WAY OUT』出演のマ・ドンソクと青木崇高に聞く

ジャパンプレミア上映会では、あちこちから「マブリー」と黄色い声が飛ぶ。韓国でも日本でも大人気のマ・ドンソク演じる怪物刑事のマ・ソクトが、拳ひとつで悪を制圧。韓国で興行収入100億円を突破した大ヒットアクション映画シリーズの最新作『犯罪都市 NO WAY OUT』、日本での公開がついにスタート。主演のマ・ドンソクと、シリーズ初の外国人ヴィラン(悪役)として今作に出演した青木崇高に話を聞いた。

text: Hanae Koike / cooperation: Eri Masuda

2017年、一作目の『犯罪都市』が韓国で公開され大ヒット。「真実の部屋へ」「まだシングルだ」など数々の流行語を生み出す。2022年公開の『犯罪都市  THE ROUNDUP』、2023年公開の『犯罪都市  NO WAY OUT』は共に韓国で観客数1000万人を突破。シリーズ全体での累計観客動員数は3000万人を突破した。

今作のプロデューサーであり、主演も務めるマ・ドンソクはハリウッドからのラブコールも絶えないというが、なぜ今回、日本人俳優の青木崇高をアサインしたのか気になるところ。

韓国映画といえば、魅力的なヴィラン(悪役)のキャスティングにも毎回注目が集まる。今作では、シリーズ初の2人のヴィランが登場。映画『神と共に 第一章:罪と罰』『神と共に 第二章:因と縁』でマ・ドンソクと共演したイ・ジュニョクが、新種の麻薬事件の背後にいる汚職刑事チュ・ソンチョルを演じた。そして二人目のヴィランとして、日本のヤクザ「一条組」の解決屋リキ役では、韓国映画初出演となる青木崇高が抜擢されたのだ。

韓国版の『犯罪都市』ポスター。マ・ドンソク、青木崇高、イ・ジュニョク
韓国版のポスター。主役のマ・ドンソクに対して、2人の悪役の一人として、青木もメインビジュアルに。

マ・ドンソク

日本のキャラクターが登場すると決まった時に、まず日本の俳優さんに演じて欲しいと思いました。青木さんの映画は「るろうに剣心」だけでなく、何本も見たんですが。「るろうに剣心」以外の作品を見てみると、それぞれ違った顔、違った演技を見せてくれている。

『犯罪都市』はアクションの難易度がとても高く、怪我をすることもたくさんあります。だからこそ、特出してアクションのうまい俳優さんをと思っていた矢先に、青木さんが頭に浮かびました。第一印象から人柄が素晴らしく、共演をしている間もとても楽しかった。

長い日本刀を持って行うリキの凶暴なアクションシーンはもちろん、全てのシーンを200%の力でやりきってくれました。リキが映画の中に登場するたびに嬉しかったです。

マ・ドンソクのアクションシーン
マ・ソクトの登場シーンからパンチが炸裂。シリーズ3作目の今回は、ボクシングアクションのスピードが更に強化された。

一方、『犯罪都市』シリーズの大ファンで、出演が決まった際には、マネージャーとハイタッチをして喜んだという青木崇高は、撮影までの期間、日本で周到な準備をして現場に臨んだという。

青木崇高

最初は喜びむき出しの状態だったんですが、次の瞬間、アクションをしっかり見せなければと思いました。すぐ『るろうに剣心』のアクションチームと連絡を取り、できうる限りのアクションを準備しました。韓国のチームとも話し合い、提案し、アイディアをすり合わせていき、その中で見えてくる日本人の刀の使い方、この作品における刀のアクションのあり方を模索していきました

青木崇高のアクションシーン
撮影前に『るろうに剣心』のアクション監督・谷垣健治とも連絡を取り入念な準備を行った。その上で、撮影現場において微調整を行い、迫力あるシーンは完成した。185cmの長身から振り下ろされるリキの日本刀に、コ・ギュピル演じるチョロンも慄く。

撮影現場では、慣れない環境でも青木が最高のパフォーマンスが発揮できるよう、マ・ドンソクがさまざまな気遣いをしてくれたんだとか。

居心地よく演技ができる雰囲気を作ることが、プロデューサーとしての大事な役割だと思っています。そうすれば、危険なアクションシーンを撮る際に怪我もなくなります。私の現場は、いつもみんなが気分良く仕事ができる場所になっていて、変な人もいないし、変なことをする人もいないです。私がけんかが得意だからかもしれませんが。

僕は青木さんが大好きなのでプロデューサー以外の立場でも、全てのことをしてあげたいと、常に思っていました。慣れない環境での撮影では、食べ物も大事です。青木さんは牛肉が大好きなので、焼肉をたくさん御馳走しようと努力しました。

青木

現場にはいつも理学療法士の先生がいらっしゃって、オフの時にはマッサージもしていただきました。食事の面では、ソコギ(牛肉)の焼肉はもちろん、辛さ控えめの「リキメニュー」も特別に用意して下さいました。韓国で1000万人を超える観客を動員する作品の生まれる場所で、2022年の夏をスタッフ・キャストの皆さんと共に過ごせたことは、本当に感慨深いものでした。

ヤキニク。オイシ〜!

青木

チャル モゴッスムニダ(ごちそうさまでした)!

マ・ドンソクと青木崇高
マ・ドンソク(左)と青木崇高(右)は、信頼関係にあるプロデューサーとキャストであり、役者仲間でもある。

すでに八作目まで構想が進み、韓国では2024年の上半期『犯罪都市4』の公開も決定している。MCU「マ・ドンソク・シネマ・ユニバーシティ」という言葉が生まれ、マ・ドンソクが映画のひとつのジャンルとして確立しつつある現在。自身が製作を手掛ける『犯罪都市』シリーズは、今後どのように展開していくのだろうか。

映画『ロッキー』が好きでボクシングを始め、人生の大半をボクシングと共に過ごしました。そんな私が映画界に入り、描いた夢のひとつがアクション映画のシリーズものを作るということでした。今、取材をしているこの場所ぐらいの広さの部屋(8畳くらい)に住みながら企画書を書き、その紙を壁に貼って、毎日眺めていました。刑事物のシリーズが興行的に当たるのかと、反対の声も多かったです。

おかげさまで『犯罪都市』が当たったので、今ではここより少し大きな部屋に住んでいます。オカネ、モラッテ(笑)。この先には、グローバルバージョンや番外編なども考えています。今まで出てきたヴィランが、もう一度登場することもあるかもしれません。

『犯罪都市4』には、以前マ・ドンソクと『悪人伝』で共演をしたキム・ムヨルがヴィランとして登場する。マ・ドンソクと青木崇高の共演を、また見られる機会もあるのだろうか。

青木

それはプロデューサーが決めることかもしれないですが。味方同志で悪者を退治していくアクション物もやりたいですね。マさんの今までの作品にあるような、コメディ作品などもやれたら面白いかもしれないです。

僕もそう。そう、思う!コメディ作品も一緒にやりたいですよね。スリラーなんかも面白いかもしれない。私が作る作品で、またオファーをしたいとも思います。そんな機会が、今後必ずあるようにと願っています。

映画の良いところは、国境も言葉も関係ないところです。映画を通してひとつになれて、互いに共感をしながら作品を作れるということは素晴らしいことで。本当に、映画はいいものだなぁと思います。