永瀬二郎
シャープな量感が新鮮
無垢のアルミで作る日用品
アルミのカタマリ感が好き。鉄や銅のずっしり重厚なそれとは違う、無機質な様子や金属らしからぬ質量に惹かれている。美大で学び、アートユニット〈明和電機〉で働いた後、作家活動に専念して約2年。中古機械店とネットで昔の金属旋盤や工具を買い集め、無垢のアルミの器や道具を中心に制作する。
フォルムはプロダクトのようにシュッとしているが、例えばブックエンドの、電動工具の鋸刃によるギザギザの断面のような、工業製品には出せない不揃いな表情にこそ目が留まる。
「テープカッターなど塊のアルミを使うシリーズでは、地金を曲げたり切断したりする時に生じる“肉感”に魅力を感じます。道具である前に素材であってほしいのだと思います」
鎌田奈穂
茶道具の技で作る普段の器は
軽やかで、凜としている
「砂のような雰囲気を持つもの」が理想だと話す鎌田奈穂の器は、驚くほど軽く、厚みは1㎜あるかないか。それでいて硬く引き締まり凜として、何より手触りが抜群に心地いい。
茶道具の名家を継ぐ長谷川竹次郎に師事し、槌目の凹凸を出さない叩き方を教わった。アルミの制作を始めたのは独立後。槌で叩いたアルミは強いけれど表情も硬質で、だから表面をあぶって硬さを和らげる。
「器はエッジが大事。叩いて薄く整えればいいわけではなく、これ以上手を加えてはならないという境界が必ずあるんです。縁がピシッと決まると全体のフォルムも締まります」
修業時代、茶道具の名品や古陶磁を浴びるように見た。その真っすぐで芯のある形に今も恋焦がれている。
鍛金工房 WESTSIDE33
京都の食道楽たちも太鼓判
使うほどに美しく育つアルミ鍋
京都七条の古刹〈三十三間堂〉の西側にあるから〈WESTSIDE33〉。道具に厳しい京の料理人にも愛されるこの店の鍋や調理道具は、郊外にある自社工房の職人が作っている。
一番人気は両手段付き鍋。純度の高いピュアアルミ板を溶接して成形し、金鎚で均一に叩いて強くする。底板は内側の中心から螺旋状に叩き締め、張りを出すのがお約束。繰り返し火にかけても形がひずまず凹まず長持ちし、使うほどに美しくなる。
サイズや形の種類が個人商店とは思えぬほど多いのも特徴で、3代目の寺地伸行いわく「300種以上。鍋の直径を1㎝小さくしてくれというような注文にも対応する。ウチは溶接も成形も一点ずつ手で行うから、いつでもそれができるんです」。
P.F.S. PARTS CENTER
タフで骨太で頼りになる
アルミのプロダクトが欲しい
「ヨーロッパの航空貨物輸送にも使われるスロベニア〈アルポス〉社のアルミコンテナをはじめ、今、アルミがすごく充実しています」と話すのは、照明から海外のアウトドア製品まで、機能的な日用品が並ぶ店〈P.F.S.〉のスタッフだ。
特に人気があるのが、アメリカのガレージ用品メーカー〈ピットパル〉。軽量アルミの壁付け棚やキャビネットは、職人による溶接跡などのディテールもすこぶる美しい。
「アルミ、特に表面加工してないものの魅力は、日々使うことで表面に傷がついていい味に育つことと、色は渋く、光沢は鈍く変わること。それに強くて軽くて比較的安価で、余計な装飾がないものが多くって……」
スタッフのアルミ愛が止まらない。