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軽い、頑丈、美しい。“アルミ”の日用品

アルミの日用品が作られ始めたのは19世紀。鉄や銅に比べて圧倒的に新しく、ゆえに今の生活に合うデザインや合理性を備えたモノも多いのだ。例えば海外のタフなアルミコンテナや、地金を鎚で叩いて強く引き締める鍛金の器。アルミのマッシブな魅力を生かす若手作家も登場して、もうアルミの魅力に抗えない!

Photo: Keisuke Fukamizu, Makoto Ito(WESTSIDE33) / Text: Masae Wako

永瀬二郎

シャープな量感が新鮮
無垢のアルミで作る日用品

アルミのカタマリ感が好き。鉄や銅のずっしり重厚なそれとは違う、無機質な様子や金属らしからぬ質量に惹かれている。美大で学び、アートユニット〈明和電機〉で働いた後、作家活動に専念して約2年。中古機械店とネットで昔の金属旋盤や工具を買い集め、無垢のアルミの器や道具を中心に制作する。

フォルムはプロダクトのようにシュッとしているが、例えばブックエンドの、電動工具の鋸刃によるギザギザの断面のような、工業製品には出せない不揃いな表情にこそ目が留まる。
「テープカッターなど塊のアルミを使うシリーズでは、地金を曲げたり切断したりする時に生じる“肉感”に魅力を感じます。道具である前に素材であってほしいのだと思います」

永瀬二郎のテープカッター
デザイン好きの間で話題の若手作家。分厚い無垢板をU字に曲げたテープカッターは個展でも即完。手前/H9.5×W17.5×D5㎝ ¥15,000、奥/約H10×W14.5×D5㎝ ¥18,000。取り扱いは東京・浅草橋の〈白日〉。
永瀬二郎 無垢のアルミで作る日用品
左/金属用の旋盤(ろくろ)で器の下地を削り出した後、ヤスリなどを使って手仕上げで柔らかなエッジを作る。中/アルミの塊を切断したブックエンドは総量20㎏!断面を見せて山脈のように置きたい。右/折り畳み椅子は受注品。

鎌田奈穂

茶道具の技で作る普段の器は
軽やかで、凜としている

「砂のような雰囲気を持つもの」が理想だと話す鎌田奈穂の器は、驚くほど軽く、厚みは1㎜あるかないか。それでいて硬く引き締まり凜として、何より手触りが抜群に心地いい。

茶道具の名家を継ぐ長谷川竹次郎に師事し、槌目の凹凸を出さない叩き方を教わった。アルミの制作を始めたのは独立後。槌で叩いたアルミは強いけれど表情も硬質で、だから表面をあぶって硬さを和らげる。

「器はエッジが大事。叩いて薄く整えればいいわけではなく、これ以上手を加えてはならないという境界が必ずあるんです。縁がピシッと決まると全体のフォルムも締まります」
修業時代、茶道具の名品や古陶磁を浴びるように見た。その真っすぐで芯のある形に今も恋焦がれている。

鎌田奈穂のボウルとサーバー
木槌で叩いて強度を高めつつも槌目の凹凸は残さない。茶道具特有の鍛金で日常的なアルミの器を作る金工作家。ボウルφ18×H6㎝ ¥13,000、サーバー L22.5㎝ ¥3,800
左/自宅の一角の2畳ほどの空間が仕事場。まだ小さい息子が入れないようソファで間仕切り。中/アルミの板を木槌で細かく叩いて成形する。右/普段使いしている銀のヤカンと純銀の歯磨き用コップ。共に鎌田作。

鍛金工房 WESTSIDE33

京都の食道楽たちも太鼓判
使うほどに美しく育つアルミ鍋

京都七条の古刹〈三十三間堂〉の西側にあるから〈WESTSIDE33〉。道具に厳しい京の料理人にも愛されるこの店の鍋や調理道具は、郊外にある自社工房の職人が作っている。

一番人気は両手段付き鍋。純度の高いピュアアルミ板を溶接して成形し、金鎚で均一に叩いて強くする。底板は内側の中心から螺旋状に叩き締め、張りを出すのがお約束。繰り返し火にかけても形がひずまず凹まず長持ちし、使うほどに美しくなる。

サイズや形の種類が個人商店とは思えぬほど多いのも特徴で、3代目の寺地伸行いわく「300種以上。鍋の直径を1㎝小さくしてくれというような注文にも対応する。ウチは溶接も成形も一点ずつ手で行うから、いつでもそれができるんです」。

WESTSIDE33の鍋
軽くて扱いやすく、熱伝導もいいアルミの鍋。左/吹きこぼれを防ぐ段付き。ご飯なら1~2合。15分ほどで炊き上がる。アルミ両手段付き鍋・厚型 φ16×H11㎝ ¥14,300、右/アルミ行平鍋 φ16.5×H7㎝ ¥5,900。
鍛金工房 WESTSIDE33 使うほどに美しく育つアルミ鍋
左/鍋底は中心から外側へ、一息に叩く。鎚目の大きさは金属の厚さや鍋のフォルムによって決まり、鍋の質や耐久性はアルミの純度と鍛金の技術に左右される。中/鍋なら1日に数十個は叩くという3代目。右/鍋の取っ手などの溶接もすべて手作業で。

P.F.S. PARTS CENTER

タフで骨太で頼りになる
アルミのプロダクトが欲しい

「ヨーロッパの航空貨物輸送にも使われるスロベニア〈アルポス〉社のアルミコンテナをはじめ、今、アルミがすごく充実しています」と話すのは、照明から海外のアウトドア製品まで、機能的な日用品が並ぶ店〈P.F.S.〉のスタッフだ。

特に人気があるのが、アメリカのガレージ用品メーカー〈ピットパル〉。軽量アルミの壁付け棚やキャビネットは、職人による溶接跡などのディテールもすこぶる美しい。

「アルミ、特に表面加工してないものの魅力は、日々使うことで表面に傷がついていい味に育つことと、色は渋く、光沢は鈍く変わること。それに強くて軽くて比較的安価で、余計な装飾がないものが多くって……」
スタッフのアルミ愛が止まらない。

P.F.S. PARTS CENTERのアルミコンテナ
アルミコンテナ。左/ALPOS ALUMI CONTAINER WITH LID XS H27.3×W43.2×D33.5㎝。¥11,500、
右/ALPOS EURO ALUMI CONTAINER OPEN TOP XS H26×W38.5×D28.8㎝。耐荷重20㎏。¥8,800。
P.F.S. PARTS CENTER タフで骨太で頼りになる
左/触り心地のいいアルミのドアノブ(¥4,000~)やフックも充実。中/〈ピットパル〉のアルミ製収納。幅28㎝の壁付けシェルフ¥6,000、キッチンに便利なキャビネット2段¥19,000。右/デスク収納にも。〈ピットパル〉ヘルメットキャビネット¥16,000。