text: BRUTUS

京都における夏の風物詩とも言える川床。例年GW前から設営が始まるが、奥座敷・貴船エリアのそれは、その素晴らしいロケーションに加え、川の真上に席を作るため、多くの人がり涼を取りに訪れる。

今回、貴船エリアの中でも上流部に位置する料理旅館「奥貴船 兵衛」にてイベントを仕掛けたのが、本誌ファッション特集でもお馴染み〈SANTASSÉ〉の大貫達正だ。

そのコンセプトが面白い。TRADING POST(トレーディング・ポスト)という言葉を聞いたことはあるだろうか。19世紀後半からアメリカ南西部に存在した、ネイティブアメリカンが製作するジュエリーやラグと日用品などを物々交換し、それらを販売する交易所のこと。

そこはただ物のやり取りを行うだけじゃなく、本当に良いものや文化を後世に残していく役割も担っていた。この考えにインスパイアされた大貫が、日本の特別な場所で現代的解釈のトレーディング・ポストを開催しようというわけだ。

貴船神社の境内

そもそも何故今回、貴船での開催に至ったのだろうか。今回の開催に際して、貴船神社から以下のコメントが寄せられた。

「社寺仏閣には、歴史に名を馳せた多くの職人、アーティストたちの作品が現存しており、現代でもその作品を見に日本人をはじめ世界中の人々が足を運んでいる。この受け継がれてきた形を絶やすことなく、社寺仏閣の場において、今活躍する職人やアーティストたちの作品を、後世へ残していくことが我々の任務の一つ。彼らの後押しに力を注いでいきたい」

今回のポップアップには「伝統を後世に残す」という信念に共感した出展者が揃っている。

〈SANTASSÉ〉に加えて、日本の伝統技術を落とし込んだインテリアなどを展開するプロダクトブランド〈AMUAMI〉の立川裕大や、〈ALDEN〉で知られる〈LAKOTA〉による、 革製品のスペシャリティストア〈THE LAKOTA HOUSE〉、京丹後を生産背景に持ち、伝統的な職人の手仕事で丁寧に織り上げる最高品質のオーダーラグコレクション〈RÈI / sophisticated order made tapis〉なども出展予定だ。

そして出展者として名を連ね、場を盛り上げるのは、ファッションやインテリアにとどまらず「食」という伝統を引き継ぐべく、京都・四条会館の奥でディープ酒場を営む「日常」。当日は名物店主がスペシャルメニューを振る舞ってくれるそうだ。

そんな〈SANTASSÉ〉のポップアップは、貴船神社協力のもと、京都・貴船の料理旅館〈兵衛〉で5月15日から4日間開催される。汗ばむ日も増えた今の時期にぴったりな、川床を訪れ、涼を感じてみてはいかがだろうか。