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セネガルの乾いた熱い風を感じるシンガー。『Né La Thiass』シェイク・ロー。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.5

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Né La Thiass』Cheikh Lô(1996年)

セネガルの乾いた
熱い風を感じるシンガー。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』と同じ時期に、同じワールド・サーキット・レーベルから出たアルバムです。僕はこのアルバムで初めてシェイク・ローのことを知ったのですが、これがデビュー・アルバムだったようです。
プロデューサーはユッスー・ンドゥールです。ダカールの小さなクラブで歌っていた彼に注目したユッスーが、「僕のレーベルでレコードを出さないか」とスカウトしたという話です。

ただ当時のセネガルの音楽市場はまだカセット・テープが中心で、セネガルではカセットでのデビュー。ですからイギリスで発売するときにはカセット・マスターから音を録ったらしく、音に敏感な知人は若干首をかしげていましたが、僕はこういうものだと思って聴いていたので、気づきませんでした。

とにかく内容的には文句なく気持ちのいいアルバムなんですね。セネガルの音にラテンとファンクの要素を加えて、さらにユッスーが当時得意としていたダンス・ビートも取り込んで、とても魅力的なアルバムです。もともと僕はこのようにいろいろな要素を取り込んだ音楽が好きなので、一発ではまりました。

このアルバムはイギリスではかなり話題になったのですが、日本ではアフリカの音楽が好きな人たちの間でもどういうわけか、あまり注目されなかったようです。文化の違いなのか、遺伝子的なものなのか、ちょっと不思議に感じました。日本では数年前に、『スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド』に出演しています。そのライヴを観たのですが、アルバムを聴くと細身で長身の体をゆったりしたファッションに包んで、メチャメチャかっこよかった姿が甦ります。

Cheikh Lô

CD-2:「Né La Thiass」

「ネ・ラ・チャス」と発音します。英訳すると「Gone in a flash」、あっという間に消えてしまうというような意味です。ラテン風のアクースティック・ギターがリズムを刻み、素朴さもあって大好きな曲です。シェイク・ローは渋めだけれどとても粋な声質をしていて、僕は彼の声がとても好きなんです。