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夏子の部屋 ゲスト:ゆりやんレトリィバァ 世界で活躍するために何してる?

夜な夜な世界中から様々な分野の著名人が訪れる、1日1組の完全紹介制フレンチレストラン〈été〉。オーナーシェフの庄司夏子さんは、女性がマイノリティと言われる料理業界において24歳で独立開業し、2022年にはアジアの最優秀女性シェフ賞にも選ばれた。彼女がシンパシーを感じ、会いたいと思う人に会いに行くこの連載。記念すべき第1回のゲストにゆりやんレトリィバァさんを迎え、世界を舞台に活躍することと二人が考える“成功”について語った。

photo: Yu Inohara / text: Rio Hirai

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海外で、自分の強みを生かすために

庄司夏子とゆりやんレトリィバァ

庄司夏子

来ていただき、ありがとうございます!

ゆりやんレトリィバァ

庄司さんは24歳で独立してるんですね、すごい!お店には海外からたくさんのゲストが来ているそうですが、いつから海外を意識するようになったんですか。

庄司

お店を始めたときは本当にいっぱいいっぱいだったのですが、だんだん海外の方からケーキや料理を評価していただいて、そこから自然と……ですね。ゆりやんさんもアメリカへの引っ越しを控えていらっしゃいますが、いつから海外を目指していたんですか?

ゆりやん

私は8歳のときから芸人になりたいという夢があったんですが、同時に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などの映画も好きで、ハリウッドで映画関係の仕事もしてみたいと思っていたんですよ。結局芸人になる道を選んだけれど、なってみたら「芸人って、コントをやるだけが仕事じゃないんだ」とわかって、好きなことを諦めなくていいんだなって思ったんです。

海外進出のために自分ができることを探していて、『America's Got Talent』を見つけて自分で応募しました。ただ『America's Got Talent』に出たはいいものの、そこからアメリカでの仕事をもらえていないんですよ。

庄司

海外でも受け入れられているように映っていたけれど……、ゆりやんさんは日本と海外でパフォーマンスに変化はつけています?

ゆりやん

アメリカのお笑いと日本のお笑いって、そこまで比べて考えていないんですけれど、対人であるのは変わらないから、自分が面白いと思うことをちゃんと伝えてちょっとずつわかってもらえたらいいなと思っています。庄司さんは、海外と日本のゲストで、料理は変えたりしますか?

庄司

変えていますね。やっぱり日本の食材は素晴らしいんですよ。日本で暮らしていれば、日頃からいろいろなものを食べることができますよね。海外の人もおいしいと思うものの基本は同じなんですけれど、そこから少し外れたものを出してしまうと受け入れてもらえないことも多いです。

例えば、春の山菜の苦味や、蛤も「グニュグニュしていて気持ち悪い」と言われてしまったり……。「日本の四季の味はこれだー!」って提案することもできるけれど、せっかく一晩の食事の機会を委ねてもらったのだから、自己満足にはしたくなくって。

ゆりやん

私は『America's Got Talent』では、ほぼ裸のような水着で走り回ったりしていました(笑)。それを見て笑ってくれる人がいたり、おもしろがりながら怒ってくれる人がいたりしたんですけれど、言葉の方でも笑わせたいなと思うようになりました。

今はスタンダップコメディの小屋に行って練習しているんですけれど、難しいですね。例えば英語を喋れたとしても、背景の文化やノリがわからないと受けない。これからまだまだ勉強です。

人の欲望は底知らず!?成功への道

庄司

これはお会いした方によく質問しているんですけれど、ゆりやんさんにとって「成功」ってなんですか?

ゆりやん

お笑いの大会で優勝したら「成功した」と思うかと思ったら、なんだか物足りなくて。どこまでいっても「成功した」とは思わないのかもしれません。例えば、ハリウッドでハリウッドスターになって「アカデミー賞取りました!イエーイ」ってなっても、次は宇宙に行きたくなりそうな気が……。人間の欲望は、底がないですよねぇ。庄司さんは?

ゆりやんレトリィバァ

庄司

私もずっと考えているんですけれど、難しいですよね。飲食業界は今どこも人手不足で、仕事は過酷だしお給料も低いし、「料理人になる人なんていない」というムードも感じるんです。でも私は食のおかげでこうして会いたい人にも会えたりしているので、それはちょっとさみしいなと思っていて……。

業界自体が繁栄したときに、やっと「成功した」と思えるのかな。自分が生きているうちに、そう思えるところまでやれるかわからないけれど。ゆりやんさんは今や、女芸人を牽引する存在ですよね。

ゆりやん

私たちが入ったときは先輩の女芸人さんは少なかったのに、今は女芸人がすごく増えているみたいです。その後輩たちに何ができるかはわからないですけれど、「挨拶と、楽屋を綺麗にすることは大事やで」って話はするようにしています。

パワハラとかモラハラとかはもちろんダメだけれど、そういうことは言ってあげた方が素敵やなって思うんで、あえてうるさく言ってますね。めっちゃめんどくさがられてますけどね!(笑)

庄司

大事なことですよね。私も含め常にスタッフにも徹底しています。それが世界いに通じる一つの道かもしれないですね。ありがとうございました。

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