名古屋〈ON READING〉。自分たちのための本屋から、 街のための本屋へ

名古屋には、個性的なオーナーの脳内がそのままショップになったような、一つのジャンルにとらわれない店が多い。+αの要素があるからこそ、人が集い文化の担い手に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Takatoshi Takebe

「住んでいる街に、欲しい本が置いていなかったから」。そんなシンプルな動機で自ら書店を開いたオーナーの黒田義隆・杏子夫妻。

2006年に伏見・長者町の雑居ビルでスタートし、2011年に現在の東山動植物園前へ移転オープン。単に本を販売するだけの書店にとどまらず、自ら出版レーベル〈ELVIS PRESS〉を立ち上げてこれまでに20冊以上の書籍をリリースした。2017年からはギャラリースペースも別室に拡張し、オカタオカ、濱田晋、塩川いづみなど、県外作家を中心に展示企画も多数行ってきた。

「本屋としてそのまちの文化のインフラになるということを意識し始めた」と語る黒田夫妻。

街と本をつなげるイベント『ブックマークナゴヤ』や、ローカルカルチャーを伝えるメディア「LIVERARY」の立ち上げ・運営にも携わったりしながら、自分たちが欲しかった書店を作るという当時の軸は保ちつつ、街にコミットしながら作り上げていく書店の在り方を現在進行形で体現している。

名古屋〈ON READING〉オーナーの黒田義隆・杏子夫妻
店内には書籍や雑誌、ZINEのほか雑貨やグッズも。

東京、台北、ソウル、上海など国内外のブックフェアにも多数出店し、名古屋にありながらにしてブックシーンの注目の的となっている。