街の隅々まで満喫せよ!名古屋で時間が余った時の過ごし方22選
photo: Masahiro Ota, Kazuhiro Tsushima / text&edit: Mikiyasu Kato
初出:BRUTUS No.895「名古屋の正解」(2019年6月15日発売)
10分余った時の過ごし方
オアシス21 水の宇宙船(栄)
名古屋のシンボルタワー、名古屋テレビ塔に隣接する〈オアシス21〉は、水をたたえるガラスの大屋根と芝生広場、地下のイベント広場、ショップが一体となった「自然の風と光を取り入れる」がコンセプトの都市公園だ。
なかでも、ガラス屋根の上面に薄いベールのように水が流れ、無数の光の波紋を描き出す〈オアシス21 水の宇宙船〉にはぜひ上ってみてほしい。広い青空の下、噴水の水の動きを目で追いながらのんびりと空中散歩してみよう。
秋葉山 圓通寺(熱田)
名古屋を拠点に昭和初期より生涯800体を超すコンクリート仏像を残した故・浅野祥雲。その多くはカラフルでユニークな表情の仏像だ。だがここ〈秋葉山 圓通寺〉では、邪鬼を踏みつける4m超えの堂々たる勇ましい表情の毘沙門天像が聳(そび)え立つ。胸を張り、同じポーズで旅の思い出に写真を撮ってみては?
ほかの作品をもっと見たい人は名古屋から少し足を延ばして、犬山市の〈桃太郎神社〉や日進市の〈五色園〉にも立ち寄ってもらいたい。
四間道と屋根神様(四間道)
名古屋城築城時に資材や荷物を運搬するために造られた堀川沿いにある〈四間道〉は、その頃に商人たちが店を開いた場所。名古屋大空襲での火災を免れたため、蔵や町家が残っている貴重な古き良き町並みだ。
迷路のような路地を歩き、目線を少し上げると民家の屋根の上に「屋根神様」と呼ばれる小さな祠(ほこら)がある。明治から昭和初期にかけて、火災や病気から身を守るために庶民が祈りを込めて作った名古屋独特の文化がこの地に潜んでいる。
30分余った時の過ごし方
文化のみち 二葉館(高岳)
オレンジ色の瓦葺き屋根がモダンで印象的な〈二葉館〉は、「日本の女優第1号」として名を馳せた川上貞奴の邸宅として大正時代に建てられた館だ。大きなステンドグラスから柔らかい光が差し込む大広間は名古屋の財界、文化人たちの社交場として使用され、ダンスや演劇も行われたそう。
円形に張り出したソファや、ランプなど気品あふれる装飾も目にも楽しい。着物などの愛用品も魅力。赤い絨毯の敷かれた螺旋階段も、ゆったりと優雅に上りたい。
たつや(新道)
円頓寺商店街から近い、明道町(現・新道)の菓子問屋街。カラフルなお菓子が大量に雑然と並ぶ。実は名古屋は有数の駄菓子生産地。ウサギとリスの絵がトレードマークのクッピーラムネや、昭和時代は10円だったマルカワのオレンジフーセンガムだって名古屋生まれ。
当時食べたきな粉餅ももちろんあって、幼少期の思い出が蘇る。あの頃の“遠足のお菓子は500円まで”ルールは度外視して、大人の箱買いがおすすめだ。駄菓子の詰め合わせ袋もお買い得。
紙の温度(熱田)
店に入ると見渡す限り、紙一色の店内に心を奪われる。世界にはどんな紙があるんだろうという好奇心を満たしてくれる、手漉き和紙と世界の紙の専門店〈紙の温度〉。面白い紙があれば、店主が世界を駆け巡り、気づけば世界30ヵ国から2万種類もの紙が揃った。
樹皮紙やレースの編み物のような紙、日本の職人が作った様々な手漉き和紙など、見て触って楽しい紙の楽園がここにはある。紙に触れるだけでも気分が高揚する、そんな初めての体験ができる。
ノリタケスクエア名古屋(則武新町)
名古屋駅から徒歩圏内に、1904年創業の世界に誇る洋食器ブランド〈ノリタケ〉の本社がある。地元の人たちの憩いの場としても愛される豊かな緑に囲まれた「ノリタケの森」敷地内にある〈ノリタケスクエア名古屋〉は3,000点以上の食器に特化したショップだ。
華やかなデザインが多い中、目に留まったのは、「窯変(ようへん)」をイメージしたモダンなクリフシリーズのディーププレート。普段の食卓を彩ってくれるお気に入りの一枚を見つけよう。
sahan(本山)
“良いものを長く使ってもらいたい”と作家の器をメインに、厳選した暮らしの道具を揃える〈sahan〉。
猫洞通(ねこがほらとおり)沿いにある小さな店には、店主自らが選んだ日本各地の作家20〜30名によるシンプルなデザインの器がゆったりと展示されている。
なかでも、日本六古窯である愛知県の瀬戸、常滑で修業した作家の作品が多いのだとか。そのほかにもたわしやフライパンなどの日用品も多く、長く愛用しようと思ったり、自分の生活スタイルを見直すきっかけにもなる。
suzusan(有松)
“Shibori”と世界中で共通して呼ばれ、400年の歴史を持つ有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)。テキスタイルとして面白いと世界的な高級メゾンをも惚れさせる〈suzusan〉。5代目の村瀬弘行さんは、今の時代に合った有松絞を目指し、“かっこいいもの”として手に取ってもらいたいと語る。
伝統工芸のイメージから逸脱したオーガニックコットンストールを首に巻いてみよう。色鮮やかで上質なハンドメイドシャツにも袖を通したい。
両口屋是清 東山店(東山)
大きな三角屋根でひときわ目につく建物は、隈研吾が手がけた名古屋の老舗和菓子屋〈両口屋是清 東山店〉。甘いものが苦手だけど、建築は見たい、という人でも楽しめる。
1階の販売エリアを抜けて階段を上がると2階にはカフェスペースがあり、抹茶と生菓子の王道セットもあるが、せっかくならここでしか味わえない喜蝸(きっか)プリン(抹茶)を。卵を使わず寒天で作る滑らかな口当たりの濃厚な一品は、プリン好きも納得の味だ。
60分余った時の過ごし方
大須観音骨董市(大須)
日本一元気な商店街といわれる大須商店街のシンボルでもある観音さんの境内で毎月18日・28日に開催される〈大須観音骨董市〉。器や刀剣などの骨董品から、レトロなおもちゃやがらくたまで、常時70店舗ほど出店する骨董市は42年間も愛され続けている。骨董とは目利きの世界!
1,000円で買ったものが100万円のお宝だったなんてことはざらというから驚きだ。宝探しの気分で、買いやすい値段の豆皿や花器など、自分の直感を信じて買ってみよう。
シマウマ書房(今池)
本山で十数年、古本好きの行きつけの店となっていた〈シマウマ書房〉がこの春、今池に移転した。「本の力を信じている」と話す店主の鈴木創さんが作り上げた新店は、天井も高く開放感があり、ゆったりと本を探せる気持ちの良い空間だ。
本一冊一冊と向き合い直感で出会ってほしいと、内容を紹介するポップは少なめ。文学、美術、詩や絵本まで自分の好きなジャンルの棚の前に立ち、ゆっくり選び、古本屋ならではの本との出会いを満喫しよう。
holk(東別院)
繁華街から少し離れた愛知県製綿センターという渋いビルの2階に週末だけ開店する〈holk〉。世界でも有数の織物産地“尾州”で、紡績、機織、縫製、デザインまでこだわった服を中心に、名古屋の作家の器や座布団など、セレクトしたものはすべてこの店にしかないものばかりだ。
とはいえ、「売ることだけが目的ではない」と語るディレクターの山本洋一郎さん。地元だからできるもの作りやイベントをお客さんと一緒に実現していく面白い場でもある。
名古屋市科学館 プラネタリウム(伏見)
銀色に輝く巨大な球体。『スター・ウォーズ』のデス・スターを思わせるそれは、世界最大級のプラネタリウムを持つ〈名古屋市科学館〉だ。限りなく本物に近い星空を再現するために、内径35mのプラネタリウムドームに様々な最新技術を使い、肉眼で見える約9,100個の星々を瞬きまでリアルに再現。
また、プラネタリウム専門の学芸員7名が月替わりで今夜の星の探し方や宇宙の様子などを生解説してくれるので、何度も訪れたくなる場所だ。
徳川美術館(徳川町)
三つ葉葵の陣幕と甲冑(かっちゅう)に迎えられ、刀剣、お茶道具、着物など「大名道具」1万件余りが一堂に会する〈徳川美術館〉。「源氏物語絵巻」をはじめとする9件の国宝を保有と聞くだけでも、背筋が伸びる。
明治維新・大戦を通じて全国の各大名の道具が散逸してしまった中、尾張徳川家だけが唯一これだけの数を約400年も守ってきたと知ると、展示を見る目にも力が入る。かつて武家の天下だった日本の暮らしを学ぶ時間もまた大人の旅の目的として良し。
名古屋スポーツセンター 大須スケートリンク(大須観音)
〈大須スケートリンク〉の名で地元で愛されて六十余年。1年365日いつでもスケートを楽しめるこの場所は、浅田真央さんをはじめ宇野昌磨さんなど世界で活躍するスケート選手たちのホームリンクとしても知られている。
ギャラリーコーナーには選手のスケート靴が展示されていて、練習でついたであろう靴の傷まで間近で見られるのはファンならきっと嬉しいはず。場内温度は10℃。夏には避暑がてら、一滑りするなんて時間のつぶし方もおすすめだ。
ウェルビー今池店(今池)
こちらは、頑張る男たちを24時間365日迎えてくれる男性専用の老舗サウナ店。全国的に流行している「ロウリュ」を日本で先駆けて行った店としても広く知られている。ロウリュとは熱された石にアロマ水をかけて蒸気を発生させるフィンランド発祥のサウナスタイル。
ロウリュマイスターがタオルで体感温度100℃の熱波を送る。常連さんと一緒に“お代わり”まで楽しもう。さらに露店風呂やお一人様専用サウナ「からふろ」で極楽の世界へ。
熱田神宮(熱田)
年間約700万人の参拝者が訪れる〈熱田神宮〉は、三種の神器の一つ、草薙神剣をお祀りする、伊勢神宮に次ぐ創祀1900年余の大宮だ。参拝は駅から近い「東門」ではなく「正門(南門)」から入るのがおすすめ。
大きな鳥居を抜け、緑深い参道の砂利を踏む音を聞きながらゆっくりと歩く。樹齢1,000年を超える大楠をはじめ、緑豊かな境内は夏でも涼しく気持ちが良い。本宮ではお願い事の前に、“感謝”を伝えるために手を合わせてもらいたい。
荒子観音寺(荒子)
一目見るだけで心が洗われる慈愛に満ちた微笑で、何かを優しく語りかけてくれているような“円空仏”は約300年も昔のものだが今でも人々の心を打つ。
尾張四観音の一つである〈荒子観音寺〉は、1,256体もの円空仏を保存し、3mを超える仁王像から2.7cmの小さな仏まで、すべて1本の巨木から彫られたというのだから驚きだ。拝観できるのは第2土曜のみだが、手作り円空体験教室も開催されていているので自分で彫った円空仏を旅の土産にしよう。
名古屋城 本丸御殿(市役所駅)
「尾張名古屋は城でもつ」といわれる名古屋のシンボル、名古屋城に立ち寄ったら近代城郭御殿の最高傑作と呼ばれる〈本丸御殿〉へ。
初代藩主・徳川義直の住居として使われた絢爛豪華な建物は「書院造」といわれ部屋の格式によって天井や欄間、装飾、障壁画などの作りやデザインが大きく変わり、その華麗さに思わず息が漏れる。中でも天才画家集団「狩野派」によって描かれた走獣や花鳥などの障壁画は美術館を楽しむようにじっくり鑑賞すべし。
180分余った時の過ごし方
大須演芸場(大須)
江戸時代より「芸どころ名古屋」と呼ばれた中心地の大須界隈で約50年、昔ながらの寄席で多くの人を楽しませてきた〈大須演芸場〉。200名弱の小さな箱で芸人と距離が近く臨場感たっぷり!土地柄、上方落語と江戸落語の両方を楽しめるのも名古屋の良いところ。
当日券も買えるので、大須商店街に遊びに来たついでに、フラッと行き、フラッと帰るってのが粋な遊び方だ。1つの噺は20分ほどなので、気軽に立ち寄り好きな噺家を見つけてみてほしい。
シネマスコーレ(名駅)
故・若松孝二監督が作ったミニシアター〈シネマスコーレ〉。日本のインディーズとアジア映画に特化した小さな映画館には「燃えよ!インディーズ」と熱い看板が掲げられている。
支配人の木全純治さんは「映画のためであれば何でもありですよ」と映像に合わせて席を揺らす人力4Dや、舞台挨拶でポールダンスを行ったこともあるという。映画の製作者と観客が密接に関係できる場を作りたいという支配人の映画愛に触れ、好きな映画に心躍らせたい。