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長井短「優しさ告げ口委員会」:気づきの人

演劇モデル、長井短さんが日常で出会った優しい人について綴る連載エッセイ、第26回。前回の「沼落ちさせる人」も読む。

text & illustration: Mijika Nagai

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気づきの人

ドラマを見ている時、誰かが持ったスマホ画面の寄りを見たことはないだろうか。例えば恋人からのラインとか、物語を動かす様々な情報はスマホに表示される。あの撮影が……私は無茶苦茶苦手なのである。

元々カメラの前にスマホを掲げたところから撮影スタートの場合は、とにかくできるだけ、手が動かないよう必死に筋肉を固める。フレーム外からスマホが入ってくる場合はもうほんと難しくて、あらかじめ決めた位置にスマホをぴったり持ってこなければならない。そして静止。

しかもその「あらかじめ決めた位置」は大抵の場合空中である。いやいや……空中にどう目印をつけろと?令和現在、まだ空中に絵を描く技術はない。となるともう肉体を信じるしかないわけで、必死に「この辺」に狙いをつける。

長井短「優しさ告げ口委員会」:気づきの人

その日も私はいつも通り、スマホをフレームインさせる仕事に取り組もうとしていた。ドキドキしながら位置を確認していると、空気階段のTシャツを着た照明さんが動く。

なんと、レフ板なんかを固定させるためのスタンドを、指定された地点の横に置くではないか……「なんとなくですけど、目印に」そう言って彼はもう一度アングルを確認し、フレームギリギリの位置までスタンドを攻め込ませる。

あぁ……こんなに助かることはない。それに何より嬉しいのは、別セクションのあなたが、私の苦悩に気づいてくれたことだ。しかも歩み寄ってくれたことだ。

誰がどこで、どんな風に苦労しているかはわからない。それでも、相手を見つめていれば、見つけることはできる。すると手を差し伸べられる。私もまずは、誰かの苦労に気づける人間になりたい。

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