宮里祐人、松田青子らの“その後”のマイロングバケーション

移動が制限された数年間も終わり、海外が再び身近になった現在。旅好きたちはここぞとばかりにロングバケーションに出かけています。著名人・文化人に、自由になった“その後”に行った旅先を聞いてみました。

初出:BRUTUS No.989「A Long Vacation 一世一代のバカンスへ。」(2023年7月18日発売)

text: Emi Fukushima, Yuriko Kobayashi, Katsumi Watanabe, BRUTUS

憧れの家を見に、デンマークへ。目と体で学んだ建築の真髄

大内久美子/建築家

数年前から訪れたいと思っていたデンマーク。最大の目的は北欧モダニズムを支えた家具デザイナー、建築家のフィン・ユールの自邸を見ることでした。コペンハーゲン郊外の緑豊かな土地に立つその家は、実際に訪れると想像していたよりもずっとコンパクト。でも全く狭く感じさせないのは、彼が家具を作る人だったからでしょう。

「これだけの寸法があれば快適に暮らせる」。そんな彼独自のスケール感を体感できたのが一番の収穫でした。主に車で郊外の町を回った2週間、デンマーク最古の町、リーベでは安野光雅さんの絵本に描かれたような美しく、愛らしい街並みに感激し、世界遺産ワッデン海に面した場所にある海洋センター〈Vadehavscentret〉では近代的な木造建築の可能性に驚き、発見の連続でした。

建築とはその土地の環境や風土、文化と切り離せないもの。だからこそ旅をして、自分の目で見て、体で感じるのが一番だし、何より楽しい!そう改めて思ったのでした。

デンマーク〈フィン・ユール邸〉外観
家具や雑貨なども残されたフィン・ユール邸。

レコードとライブでメルボルンの音楽シーンに触れる

マーティ・ホロベック/ベーシスト

元日から3週間ほど、真夏のオーストラリアのアデレードへ里帰りしたんです。その後、僕と妻はメルボルンへ出発。アデレードからはグレート・オーシャンロードを通るルートがあって、奇岩群の〈12人の使徒〉など名所もあって、2日かかるんですが飽きずにドライブできます。

メルボルンはミュージシャンのレベルが高いので、レコード屋やライブハウス巡りが楽しいです。〈ノースサイド・レコーズ〉は、地元の音楽家はじめ、ソウルやジャズバンドの音源が中心。〈ソーンベリー・レコーズ〉では、ロックや現代音楽などメルボルンで人気の高いアナログ盤のセレクトが面白い。

あと、オーストラリアのライブハウスには、例えばメルボルンなら〈ザ・ジャズ・コーナー・ホテル〉みたいに、ステージとパブの一体型の店を“ホテル”と名づけているところが多いんです。西部劇に出てくるバーみたい(笑)。地元の人とビールを飲みながら観るライブは最高ですよ。

オーストラリアのアデレードにあるブライトン・ビーチ
アデレードにあるブライトン・ビーチ。

興味が湧く方へ進み、出会ったレゲエの生演奏や山岳民族

宮里祐人/〈バックパックブックス〉店主

事前に計画を立てず、自分の趣味と現地で興味を持ったことの間で、「面白そう」と思った方に転がっていく旅が好きです。2023年2月にタイを訪れた際も確保していたのは行きの航空券だけ。約2週間の滞在で特に満喫したのは、後半1週間を過ごしたチェンマイです。

寺院が立ち並ぶ古き良き風景の中に、古着屋や本屋、ギャラリーなどのこぢんまりとした個性的な店が点在しているのが面白くて、自転車で街中を巡りました。ルーツレゲエの生演奏が楽しめるバーを見つけて毎晩通ったり、学校名が書いてある日本の中学校のジャージが古着として盛んに流通しているさまを見かけたり(笑)意外な発見が多かったです。

ほかにも山好きが高じて訪れた山岳民族博物館をきっかけに、ドイ・プイ村という山岳民族の集落を訪れたのも有意義でした。気になった場所を訪れ、そこで知り合った人にオススメしてもらった場所にまた足を運ぶ……。東京での過ごし方とあまり変わりませんね(笑)。

タイのドイ・プイ村
市街地からは車で1時間程度のドイ・プイ村。

歴史とモダンアート、イギリスで触れた本物の手触り

松田青子/作家、翻訳家

2023年の3月末には、国際ブックフェアでタイに行き、6月にはイギリスに行ってきました。コロナ禍と出産があったので、海外は5年ぶり。今回はオックスフォード大学の翻訳エクスチェンジというプログラムに招聘(しょうへい)されたのがきっかけです。

オックスフォードへ10日間、その後、ロンドンへ4日間行った長めの滞在でした。実は、イギリスは3回目だったんですが、久しぶりの海外ということもあり、日常の景色が変わることがこんなにも刺激的なことだったのかと、久しぶりに思い出しました。オックスフォードの街並みは歴史の深さを感じられて、毎日散歩しても飽きないほど感銘を受けましたね。

そして、今回の中で一番印象的だったのは、ロンドンのテート・モダンで見たヒルマ・アフ・クリントの展示です。彼女のドキュメンタリー『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』を以前見ていたので、実物の絵を目の前で見ることができて本当に感動しました。

ロンドン〈オックスフォード大学〉外観
中庭から見えたオックスフォード大学の建物。

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