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語る音楽家、語られる音楽家:石若 駿が語る、日野皓正

音楽家・石若 駿さんが語る、トランペッター・日野皓正。

illustration: Yoshihumi Takeda / text&edit: Katsumi Watanabe

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石若 駿が語る、日野皓正

日野皓正さんと初めてお会いしたのは、僕が札幌ジュニアジャズスクールに所属していた、小学校5年生の時のこと。定期演奏会で、僕らは昼の部、日野皓正クインテットが夜の部という、ダブル・ビル(2本立て)があったんです。

リハーサル前に、日野さん直々のバンドクリニックがあり、「ひとまず演奏を聴かせて!」と言われたので演奏したところ、上機嫌に「君たちに教えることなんてないよ」と言われて。一緒に演奏することになり、実弟である日野元彦さん「It's There」を題材にセッションしたんです。

日野さんはユニゾンで演奏するセクションを即興的に組み上げ、僕らにもわかりやすいよう口伝し、たくさんのフレーズを輪唱させた結果、とても大きな曲に仕上がりました。日野さんもソロを取ったり、ダンスをしたり、とにかくハッピーな空間で、「ジャズって、こんなに楽しいのか!」と感激しましたね。

正式なステージでの共演は2004年、六本木アルフィーで行われた日野皓正クインテットのライブへ、ゲスト出演。日野さんの音色は鋭くて、温かい。バンドをディレクションして変化させていく佇まいがとにかくかっこよく、ステージでは超能力者的な雰囲気がある。演奏中にミラクルが起こるたびに感動しました。

その後も日野さんのライブへ飛び入りさせていただくたびに「大地を感じさせるドラムを!」と言われて。僕の成長を見届けてくれている気がします。演奏以外にもルーツや、アイデンティティを考えること。社会に対し音楽家として何ができるか考え、実行することを学びました。僕にとって日野さんはメンター的な存在です。

今年の10月で82歳になられますが、一緒に演奏していると、音色やハイノートなど、すごみを増している印象がある。きっと90歳を超えても、このまますごいんだろうと思っています。

石若 駿が選ぶ3枚

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