坂東祐大が語る、竹本織太夫
マイブームといってはなんですが、近頃は文楽の公演によく足を運んでいます。高校時代に文楽鑑賞教室で観て以来、久しく機会はありませんでした。昨年、大阪に滞在した時、国立文楽劇場が気になり、当日券でフラッと入ってみたところ、大正解。とてつもない表現の豊かさ、情報量の多さに衝撃を受けました。
文楽は太夫、三味線、人形遣いが一つになって作り上げる人形芝居。初心者なので、知識を得たいと思い、竹本織太夫さんの著書『文楽のすゝめ』を購入したところ、翌日伺った夏木マリさんの公演『印象派』のバックステージで、なんと織太夫さんを紹介していただく機会に恵まれました。今回の『印象派』には、文楽オマージュのパートがあり、織太夫さんが監修を担当されたそう。
文楽の中でも直接的に「音楽」と関連のあるパートは三味線ですが、僕は太夫も音楽的な観点から鑑賞してしまいます。昨年末のシアター1010(千住)公演『源平布引滝』を鑑賞した際にも、それを強く感じました。
源氏と平家のお話で、全4段からなる物語。そのうちの2時間以上ある「九郎助住家の段」を4交代で語り継ぐのですが、3パート目となる一番の難しい段を織太夫さんが務められていました。クラシックでえると、4楽章からなる交響曲のフィナーレの手前のような部分。フィナーレはある種の勢いとパワーで形になるかもしれません。
しかし、実はその手前が音楽的な聴かせどころであり、繊細かつ、ストイックで難しい。そんなパートでの織太夫さんの節回しが本当に豊かで、まるで自由自在な即興をされているかのように聞こえました。
終演後、後ほどご本人とお話しして驚愕。即興の要素は1ミリもなく、代々伝わった風(ふう)に忠実に演奏されていらっしゃったそうです。この奥深さをより堪能できるように長く鑑賞していけたらと思っています。
竹本織太夫さんの文楽に触れる2公演
本号の発売日以降に開催予定の竹本織太夫が出演する2公演。まずは2月14日に三越劇場(東京)の『浄瑠璃を聴く会』。そして『文楽協会創立60周年記念二〇二四年三月地方公演』は、3月1日の京都府立文化芸術会館を皮切りに、17日の久居アルスプラザ(三重)まで、全8公演を予定。