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語る音楽家、語られる音楽家:石若 駿→Will Graefe

ジャズドラマー・石若 駿さんが語る、Will Graefe。

illustration: Yoshihumi Takeda / coverage,text: Katsumi Watanabe

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石若 駿が語る、Will Graefe

米・バーモント州を拠点に活動するクリス・ワイズマンというシンガーソングライターの楽曲が大好きで、コロナ禍の暇な時に、関連する音楽を探し漁っていたところ、ギタリストのウィル・グレーフェに出会いました。彼自身もソロ作品を発表しているので、聴いてみたところ、音像の美しさ、まるで手触りがわかるようなギターの質感に感動したんです。

まず、2017年にリリースしたファーストアルバム『North America』冒頭のタイトル曲。アコースティックギターのソロ曲ですが、聴いているだけで、楽器を掻き鳴らしている姿が想像できるような、シンプルかつ、ライブ感のある演奏。どのように録音しているのか、興味をそそる音響で、一生懸命な音を、あえてそのまま表現している楽曲。僕はそんな演奏や録音が大好きなんですよね。

Will Graefeのイラスト

ちょっと時間を置き、2021年に発表された『Marine Life』も、前作同様にリラックスした音質ながら、じっくり作られた感じもあって、本当に素晴らしい作品でした。シンガーソングライターとしての側面が押し出されていて、優しい歌声やメロディはもちろん好きですが、とにかくギターのボイシングに耳を奪われました。クラシカルかつ、複雑になっていて、6本の弦以上のハーモニーが聞こえる。「ものすごい倍音のレベルまで聞こえちゃってるギタリストだな」という印象です。マヤ・ホークの楽曲など、数多くの客演もあり、また、すべての楽器の音像の作り方も美しく、プロデューサーとしても素晴らしいと思います。

ちなみに最近、僕は移動中には必ず『Marine Life』をフルで聴いているくらい、お気に入りのアルバムになっています。このように近年出会った音楽家は、まだまだたくさんいますが、その話はまた今度!

石若 駿が選ぶ3枚

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