坂東祐大が語る、岩崎 琢
学生の頃、アニメ『ソウルイーター』をたまたま観ていたのですが、岩崎琢さんによる音楽が素晴らしく、お話そっちのけで聴き入ってしまっていたんです。
ハーモニーと対位法、これは楽譜を主とする作曲において基礎となる大切な技術で、エクリチュールといいます。クラシックの世界では当たり前ですが、劇伴の作曲をされている作曲家の方で高いエクリチュールの技術を持っている方は今の時代となっては非常に稀で、すぐにファンになってしまいました。
また『ソウルイーター』の劇中、メンタルに不調を来した登場人物が、山下洋輔さんのような超絶なピアノの即興をするという、夕方6時に放送されていたアニメーションとしては非常に攻めた演出のシーンがありました。
そのピアノにあっけに取られ、すぐさまサントラを購入したところ、なんとその曲は未収録。後にご本人へその件を伺ったところ、サラッと「あれ即興演奏だったから入れなかったよ」と返答されて(笑)。書く技術はもちろん、場面に合わせた演奏と音楽演出のセンスにも驚かされました。
その後も岩崎さんが担当されたアニメーション作品の多くを拝見させていただいたのですが、どの作品であっても、音楽の劇伴としての機能に加え、音楽それ自体が非常に魅力的で、いつも尊敬しております。
もちろん緻密なオーケストラを使ったスタイルもさることながら、シンセサウンド、またそれらのハイブリッドなものも奥深く研究されており、スタジオにお邪魔させていただいたときにはそのシンセの量とマニアックなセレクションにびっくりしました。
そんな岩崎さんが、庵野秀明監督の映画『シン・仮面ライダー』の音楽を担当されています。音楽制作も大変に長期間にわたって行われ難航されたそうですが、本当に見事でお疲れ様でした!と労りたい気持ちでいっぱいです。