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music & talk『mood』第1回:映画音楽を語ろう

ベルリン発祥のスピーカーブランド〈ADAM Audio〉と〈代官山 蔦屋書店〉がスタートした音楽イベントシリーズ『mood』。様々なゲストとともに音楽との新しい付き合い方を考えるイベントの模様を誌面でもお届けします。第1回のテーマは「映画音楽」。映画をよく知る4人が語るサントラの魅力とは。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: BRUTUS

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語る人:小川紗良 × Soundtrack Brothers

山崎真央(Soundtrack Brothers)

サントラは昔からDJの中でも人気アイテムの一つでした。例えば『ベティ・ブルー』は、映画もヒットしたし音楽もお洒落で、昔から人気のある一枚です。僕らが結成したのは、2016年に80年代のサントラだけをかけるイベントを開催して、すごく盛り上がったことがきっかけでした。

『ベティ・ブルー』
1986年製作のフランス映画。作曲家のガブリエル・ヤレドはゴダール監督作品『勝手に逃げろ/人生』で劇伴デビューし、以降数々の作品を手がける。

小川紗良

私は(エリック・)ロメールの映画を劇場で観たときに、意外と音楽が軽いなと思ったんです。映画音楽というと『ニュー・シネマ・パラダイス』のような重厚なイメージだったんですが、こんなに愉快でもいいんだと。中でも『美しき結婚』は、スクリーンで流れてきてめちゃめちゃかっこよかったです。

『美しき結婚』
1982年製作、フランスの恋愛映画。「ロメールの作品の中では、『レネットとミラベル/四つの冒険』もサントラが印象的でした」(小川)

山崎

この頃のフランス映画は、エレクトロニックやダンスミュージックが使われている作品も多いですね。

小川

私は家では〈落日飛車〉や〈DSPS〉などの台湾のポップスをよく聴いています。言葉が入ってこなくて心地いいのが、作業中には良くて。そういうサントラはありますか。

鶴谷聡平(Soundtrack Brothers)

『時々、私は考える』という映画のサントラは、環境音楽的に聴ける心地いい作品です。今、かけてみます。~♪

『時々、私は考える』
2023年製作のアメリカ映画。「ミュージシャン本人のBandcampだけでレコードを扱っていて、購入したら本人のサイン入りが届きました」(鶴谷)

小川

めちゃくちゃいい曲ですね。でも、ちょっと眠くなるかも(笑)。

山﨑

お題と違いますよね(笑)。自分からは絶対やる気が出る曲をかけます。〜♪

小川

『トップガン』ですね!明るい気持ちにはなりますね(笑)。

『トップガン』
1986年製作のアメリカ映画。「我々は世代的にドンズバ。みんなこの映画の登場人物のような格好をしていたし、聴くだけで気合が入ります」(山崎)

山﨑

小川さん、厳しいですね。

小川

でも、音楽から映画に出会うことってないので、新鮮で面白いです。

渡辺克己(Soundtrack Brothers)

自分からはこの一枚を。ギャスパー・ノエ監督の『CLIMAX クライマックス』。映画自体はあまりおすすめできない内容なんですが……(笑)。~♪

『CLIMAX クライマックス』
2018年製作、フランス=ベルギーの合作映画。「LSDでバレエダンサーたちがめちゃくちゃに……。内容的にはあまりおすすめできない(笑)」(渡辺)

小川

作業中ではないかもしれませんが……(笑)、映画館で流れてきたら絶対アガります。私がナビゲーターを務めるラジオ番組では、映画好きのディレクターさんが『恋する惑星』などのサントラをたびたびかけてくれます。

それから先日、『私たちが光と想うすべて』という映画を観たあとに入ったお店で、映画とそっくりの音楽がかかったんです。そのときに一瞬で映画のシーンが蘇ってきて。人間の記憶って、五感と強く結びついていて、例えば嗅覚とか。映画には匂いはないけど、音楽がある。映画と記憶を強く結びつけてくれているのが音楽なのかもしれないと思います。

『恋する惑星』
1994年製作の香港映画。フェイ・ウォンやデニス・ブラウン、ママス&パパスの楽曲が使用された。「アジアの映画の色彩が好きなんです」(小川)

山崎

今は配信やDVDがあるけど、昔は映画を家に持って帰るにはサントラのレコードしかなかった。映画そのものを観返すのもいいけど、音楽を聴いて自分の中で映画を反復していく行為はいいですよね。

鶴谷

洋画だったら日本公開の前にサントラを先に聴けることもあります。好きなレーベルのSNSや時にはメーリングリストなどをマメにチェックしていくことも、音楽がいい映画に出会うコツかもしれません。

小川紗良
Soundtrack Brothers
鶴谷聡平(長男/左)、渡辺克己(三男/中央)、山崎真央(次男/右)

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