なにより友情を重んじる現代のゴッドファーザー
現代ハリウッドコメディ界を牽引するプロデューサーにして監督のジャド・アパトーほど、家族への愛に溢れる映画作りの実践者も珍しい。実際、プライベートにおいて、パパラッチに遭遇するたび、家族ともどもカメラに向かってお茶目なポーズをとることでお馴染みだった彼は、仕事中も片時も離れたくないと言うかのごとく、妻で女優のレスリー・マンばかりか、2人の娘も物心つく前から自作に起用し続けている。
長女モードは、最近ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』に出演し、女優として頭角を現しつつあるが、ジャドが一人前に育て上げたのは実子だけではない。『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で抜擢した無名時代のエマ・ストーンに髪を赤く染めるよう助言し、その後の彼女の大躍進を後押ししたのは有名な話。
また、ドラマ『フリークス学園』で見出したセス・ローゲンやジェイソン・シーゲルなどは「アパトー・ギャング」と呼ばれ、現在に至るまで共同作業を続けている(ジェームズ・フランコやジョナ・ヒルのようにその後に問題を起こして一線から退いた者も多いが)。家族はもちろん、フックアップした若手も手厚く庇護する彼は、“現代ハリウッドのゴッドファーザー”と言っても過言ではない。

にもかかわらず、ジャド作品における男たちが、彼自身のように典型的な“幸せな家族像”を体現してないのが面白い。『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』やそのスピンオフ作『40歳からの家族ケーカク』、あるいは『素敵な人生の終り方』において、男たちはレスリーと実娘たちが演じる家族との生活に、息苦しさやプレッシャーを覚えていて、それが問題を引き起こす。見逃してはならないのは、男友達との交流を通して、彼らが自身の問題と向き合えるようになることだろう。
この視点から彼の作品を観ていくと興味深いのは、血のつながらない、これもまた典型的とは言えない家族がしばしばテーマになること。『40歳の童貞男』において、主人公は恋に落ちたシングルマザーとのセックスには臆病な一方、その子供たちを愛することには躊躇(ちゅうちょ)がなく、『伝説のロックスター再生計画!』の主人公も、息子が実は妻と浮気相手の子供だと知っても戸惑う様子はない。
『俺たちステップ・ブラザース 義兄弟』では親の再婚で義兄弟となった中年男たち、『キング・オブ・スタテンアイランド』では不良青年と母の恋人の関係を通して、血のつながらない家族関係が問題化されるが、彼らは家族愛というより友情によって強い絆を育み、間に聳(そび)える壁を乗り越える。
もしかするとジャドは、男同士か否かを問わず、恋愛や家族を含むあらゆる良好な人間関係において、友情こそが基盤をなしていると考えているのかもしれない。つまり、愛とは友情の別名である、と。映画はもちろん、前述のパパラッチ写真のジャドたちが、家族というより友達に見えるのも、そうした彼の考えの表れなのではないか。
ラブコメも家族劇も友情が鍵となる3作品