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地クラブの工房、兵庫〈三浦技研〉へ。プロアマ誰しもに寄り添う、世界の軟鉄鍛造アイアン

ゴルフの世界にも日本各地でもの作りに励むクラフツマンがいる。ものは「地クラブ」と呼ばれ、少数精鋭で大手には成し得ないこまやかな作業を誇り、海外からの呼び声も高い。ここでは、アイアンを得意とした指折りの工房〈三浦技研〉を訪ねた。


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photo: Makoto Ito / text: Mako Yamato

国産ゴルフクラブ発祥の地、兵庫県市川町。刀鍛冶の鍛造技術を応用してアイアンヘッドが量産されるようになったのは昭和初期のこと。〈三浦技研〉はその地にあって、プロもアマチュアも問わず世界から注目を集めるブランドだ。

1977年、理想のゴルフクラブを作るべく会社を立ち上げたのが、現在は会長の三浦勝弘さん。15歳からこの道一筋にゴルフクラブに向き合ってきた経歴の持ち主である。開業からの二十数年は国内メーカーのOEMを手がけ、その中で自社ブランドの鍛造にも乗り出す。

中央が三浦勝弘さん。右が長男の由貴さん、左が現社長の信栄さん。
中央が三浦勝弘さん。右が長男の由貴さん、左が現社長の信栄さん。2010年に社長の座を譲ってからも勝弘さんは現場で活躍する。

精度の高さを求めて行き着いたのは3段階に分けて行う鍛造。最初の2回で形を作り、仕上げの鍛造は900℃の低温に熱したヘッドを300トンの力で型に押し込むことで、材料の内側を均一で安定したものにし、きめ細かな地肌を作り上げる。別に仕立てたホーゼルを高温圧着して鍛造ヘッドボディが完成する。

この精密鍛造こそ〈三浦技研〉のヘッドを支える軸であり、愛される所以(ゆえん)だ。

もう一つ〈三浦技研〉を語るうえで欠かせないのがカスタム。アイアンには重さや仕様など細かな規定が存在する。が、〈三浦技研〉では1つのモデルに対して、4種類の原型を用意して注文に備えているという。つまりソールの丸みを大きくつける、トップラインを厚めにするなど、異なるカスタムに対応することを前提に体制が整えられている。

「僕が2代目を継いだ時、外に出て改めて気づかされたのがうちの強み。一人一人に対応したヘッドボディを作ることが当たり前だと思っていましたから」と勝弘さんの息子で現社長の信栄(しんえい)さんは振り返る。

現在、製造部門は兄の由貴さんと勝弘さんが率いる。そうして作られるプレーヤーに寄り添うヘッドパーツは全米女子オープンを制した笹生優花(さそうゆうか)をはじめ、遡ればビッグネームのトッププロたちも愛用してきた。メーカーのOEM製品であっても〈三浦技研〉の名を掲げれば、売れ行きは伸びるというブランド力も備わってきた。近年は信栄さん自らがフィッティングを担当している。

「カスタムすることで単に所有欲を満たすのではなく、道具冥利に尽きるものを作りたい。誰よりもうちの製品が好きなので」と情熱をたぎらせる信栄さん。ブランドとしての進化から目が離せそうにない。

三浦技研の新作アイアンヘッド《CB−302》
《CB−302》。美しく磨き上げられたアイアンヘッドは、フィードバックを受けた約4年ぶりの新作。鍛造製法の限界に挑んだ、中上級者向けのぽってりとしたキャビティ形状。ライ角61.5度。価格要問い合わせ。